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私が息子に出逢うまで(17)

応戦

私が妊婦だということは、会社の皆が知っていた。もちろん彼女もだ。
知っていて、私を立たせている。
少し迷ったが、席に座れないのも困るので売られたこの喧嘩を買ってみることにした。

喧嘩はキレた方が負ける。
私は感情を殺し、私の席に座って喋っている彼女の横に立った。それからずっと無表情で彼女を見つめ続けた。

何分か経っても彼女は話をやめなかったが、周りが気を遣い始めた。話し相手に目配せされた彼女は私の方を向き、叫んだ。

「他の席に座れば?ここ、今私が使ってんの。」

話し相手は「おいっ」と彼女にどくよう促したが、後に引けなくなったのか、私の席の椅子が余程気に入ったのか、どこうとしない。
私は何も言わず、表情も変えず、ただひたすら彼女を見つめていた。
関係ない人たちも、この異様な状況に気付き出し、人が集まり始めた。

「え?何?私のこと邪魔だって言うわけ?何様なの?」

そのセリフにざわつくギャラリー。彼女の表情に焦りが見られた。

(そろそろ潮時かな…)

私は膝を曲げ、彼女の鼻に自分の鼻がつきそうなくらいに顔を近づけた。そして笑った。

-座席、間違ってますよ?仕事をしたいので、自席に戻って頂けます?

私がそう言うと、彼女は黙った。どうしようか迷っているようだった。
私は笑顔で続けた。

-会社は仕事をする場ですよね?この席は私が営業の仕事をする場所ですけど、何かご用ですか?

彼女は耳を赤くして、俯いている。
私は笑顔のまま、膝を伸ばし元の体勢に戻った。
しばらくして彼女は私の方を向き、立ち上がった。

「じゃ、邪魔ですよね?すみません、どうぞどうぞ。」

(うん。本当に邪魔だったよ…)

そう思いながら、笑顔で"ありがとうございます"と言って、立ち去る彼女に手を振った。
ギャラリーはいつの間にかいなくなっていた。

それからも噂話は続いたが、その日を境に私の持ち物がなくなることはなくなった。

つづく…

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