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私が息子に出逢うまで(7)

着信

産婦人科医院は、いつ行っても混んでいた。予約をしていても、毎回2時間くらい待たされた。
会社には、検査日程と検査前後は仕事が出来ないことは伝えてあった。

その日は朝から検査の予定で、待合室にいた。
何度も何度も会社から電話が鳴る。気になるが出てしまうと"検査の日も対応出来る"と思われると困るので、終わるまで出ないと決めていた。

検査を終え実家で携帯を確認すると、夥しい数の着信と一緒に、課長の携帯からショートメッセージも入っていた。

「電話に出ろ」「何処にいる?」「担当はお前だ」「自覚はあるのか」「自分の仕事は最後まで自分でやれ」

読んだ瞬間、私は疲労感と貧血で立てなくなり、その場で吐いてしまった。

炎上

しばらくして落ち着くと、会社へ電話をかけた。
幸い、課長は外出中でアシスタントが電話に出た。

「ごめんね〜私、お客様を怒らせてしまって…営業担当が対応するって言っちゃったから連絡頼める?」

言いたいことは山ほどあった。しかし話をする時間も気力も残されていない。
詳細を確認し、その後の指示だけ出して電話を切った。

すぐさまお客様へ電話をかける。プルルと鳴り始める前に「もしもし、遅いよ!」と声がした。
「あの事務の人なんなの?!対応する気ないし、貴女から連絡させるしか言わないし、貴女の居場所も教えてくれない!」
私はまずお詫びし、現在対応中であることを伝えた。加えて自分の状況と、すぐに会いにいけないことも話した。課長から休んでいることは話すなと言われていたが、お客様へ真実を告げる方が大切だと判断した。
「そうだったの。メールも遅いし、貴女らしくない対応だったから心配したよ。いつもすぐ連絡くれるし、何かあったら来るじゃない?てっきり嫌われたのかと思った。」

-暫くお邪魔できませんが、私がメールと電話で対応します。

そう答えて電話を切り、課長にはショートメールで"対応済みです"と送った。

この後、同じような状況が複数の顧客で起こり、私は毎日電話に追われるようになっていった。

つづく…

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