五月のはじまりは虫

朝顔の種を植える。アーリーヘブンリーブルー。家の周りを涼しげな青色の朝顔でいっぱいにしたいんだ。

スコップで土をほじっていると、虫が出てきそうで、肩のあたりがぞわぞわする。白っぽい謎の幼虫とか、見た目がとっても気持ち悪いムカデとか。そんなところで無駄に想像力を働かせてしまう私だけど、実際には何も出てこなかったからよかった。

水をあげようと、如雨露を持ち上げると、如雨露の中でブーンと音を立てて何かが動いていた。如雨露の中に作られたおぞましいハニカム構造。その周りを跳ぶ二匹の黒い蜂。如雨露を持っていた手に鳥肌が立った。中で飛んでいる黒い二匹の蜂を刺激しないようにそっと地面に如雨露を置いた。「おうちで過ごそう」なんて言われているけれど、蜂がおうちで過ごす必要なんてない。今すぐ如雨露から出て行ってほしい。

幸い家には蜂の殺虫剤があった。いつ蜂が襲ってきても逃げられる位置で殺虫剤を構える。蜂と十分なソーシャルディスタンスを保った上で、殺虫剤のトリガーを引く。ぷっしゅーーーーーー。怒ってこちらにやってくるかと思ったけど、襲ってこない。如雨露の中を見るのも恐怖。急に如雨露から蜂が飛び出して来たらどうしよう。でも勇気を出して覗いてみる。二匹の蜂が倒れている。良かった。駆除成功だ。

蜂の巣を作らせないように、家の周りにも殺虫剤を撒いておいた。

虫がポケモンみたいに人懐こくて可愛かったら、少しは好きになれたのかもしれない。