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待受け画像のクライアント

シャープ株式会社

2004年のある日、突然シャープ社の方からメールが届いた。あの、誰もが知ってる電気機器メーカーのシャープ。最初、スパムメールかと思ったけど、どうやら本物のようである。

とりあえず、詳細の話を伺うために、会ってみることにした。恵比寿駅で待ち合わせをして、近くのカフェに入る。この時点で、自分はまだ半信半疑である。

「男性の方だったんですね」と、シャープの担当者さんが言った。「てっきり、女性の方だと思ってました」

「あー、あの、代官山で撮った写真ですよね。あれは、私の妻なんです」

ピンク色の逆光の中、女性が手を伸ばしている写真。待ち受け画像に加工して、自分のサイトで公開しているものだ。

「あの写真と、他にも何点か、SH-MODEの方にご提供いただけませんでしょうか?」

ちょうどその頃、シャープ社はそれまでの50xシリーズの携帯電話に加え、新たにFOMAの900iシリーズの発売を開始した。シャープ製の携帯電話ユーザー向けにSH-MODEという公式サイトを運営しており、待ち受け画像などのモバイルコンテンツがダウンロードできるようになっていた。そのサイトに、趣味で待ち受け画像を作っている僕が、作品を載せてもらえる、と。

もちろん、「はい!やらせてください」と元気よく答えた。

5点の待ち受け画像作品を制作し、納品までスムーズに進行した。

そして、その公式サイトに掲載されている自分の作品を見るために、シャープ製の携帯電話SH901iCに機種編。2004年に購入したその携帯電話は、2010年の年末ごろまで6年以上ずっと使い続けた。

シャープさんに待ち受け画像を提供してから、いろんな企業さんからお声がけをいただき、依頼されるがままにたくさんの待ち受け画像作品や、デコメ作品などを提供し続けた。

楽天トラベル株式会社

私がモバイルコンテンツを提供した中で、一番長いお付き合いがあったのが、楽天トラベルさんである。

2005年4月から毎月10点の待ち受け画像を提供し続け、それは2010年9月まで続いた。毎月のカレンダーや、季節のデザインで待ち受け画像を制作し、楽天トラベルの公式サイトに掲載してもらっていた。金銭的な報酬はなかったが、ダウンロードのランキングが上位の場合、楽天ポイントをもらえた。そのおかげで、この企画をやっている間は、僕と妻の実家にお歳暮などを送る場合は、毎回ポイント支払いで楽天で商品を購入していた。今うちにある陶芸窯も、全額ではないけれど、待ち受け画像制作のポイント報酬を足しにして購入したものである。

楽天モバイルのイメージキャラクターであるスナフキンの画像を使って待ち受け画像を制作した時もあった。一番うれしかったのは、楽天イーグルスの待ち受け画像をつくって提供した際、その作品が宮城球場のバックスクリーンに投影されたこと。携帯電話の小さな画面に向けて待ち受け画像を作っていたら、プロ野球場の巨大なスクリーンに映し出されることになるなんて。

待受け画像を作り続けて良かったなと思えた瞬間です。

株式会社Blau

Blauさんも、待ち受け画像制作で長くお世話になっていた企業である。「壁紙サーチ!」と「おもしろ★画像缶」というサイトに、約3年ほど主に静止画の待ち受け画像作品を提供していた。2007年に最初の作品制作の依頼があり、それ以降、2010年1月まで、毎月だいたい15~30くらいの作品を提供し続けた。締め切り間際の週末は、一度にたくさんの作品をひたすらつくるので、ちょっとした売れっ子漫画家のような体験をした。

作品のアーカイブを収めたハードディスクを掘り起こしてみたところ、Blauさんに提供した作品は全部で724点あった。

2007年5月:30点
2007年6月:15点
2007年7月:24点
2007年8月:20点
2007年9月:25点
2007年10月:13点
2007年11月:15点
2007年12月:15点
2008年1月:20点
2008年2月:17点
2008年4月:43点
2008年5月:15点
2008年6月:25点
2008年7月:25点
2008年8月:20点
2008年9月:25点
2008年10月:21点
2008年11月:20点
2008年12月:25点
2009年1月:23点
2009年2月:21点
2009年3月:28点
2009年4月:25点
2009年5月:27点
2009年6月:25点
2009年7月:20点
2009年8月:25点
2009年9月:25点
2009年10月:25点
2009年11月:25点
2009年12月:25点
2010年1月:17点

このように、毎月新作をつくりつつ、作品がたまったら自分のサイトでも公開するというサイクルが生まれた。基本的に、僕が提供する作品は使用権のみをお渡しする形式にして、その代わり金額はとても安い設定にしていた。なので、著作権はあくまで私が保有しているので、自由に自分のサイトで公開することもできたのだ。

株式会社アイフリーク

アイフリーク社さんは、いくつものモバイルサイトを運営していて、随時「CREPOS(クリポス)」というオンラインのプラットフォームでクリエイターの作品を募集していた。僕も、たびたび待ち受け画像やデコメなどのモバイルコンテンツを提供させていただいた。主な掲載サイトは以下のとおり。

待受★取り放題
男のデコメ
デコメ★コレクション
アニメデコ
デコりたガール
手描き★取り放題
花のデコリ塾

ゲーム風、オモシロ、ホラー、LOVEカワというようなジャンルを選んで、お題に沿った作品をつくっていた。2008年から2009年にかけて制作した。

UHS株式会社

UHSさんは、確か元Blau社にいらっしゃった方がつくった会社だったと記憶している。最初は静止画の待ち受け画像の制作依頼を請け、その後Flashを使った作品を多く提供した。

2007年からスタートして、2012年の夏まで。2011年以降だんだん待ち受け画像のオーダーが減っていく中で、最後まで残ったのがUHSさんだったと記憶している。

納品した作品の数は正確には数えてないが、バックアップ用のハードディスクに保管されている「UHS」のフォルダのプロパティを確認してみたところ、フォルダー数が618あり、ファイル数が4千を超えていた。もちろん、作品以外の素材なども含まれてるが、約5年半にわたって毎月作品を提供し続けた履歴がそこに残っている。

UHS社さんに納品し、作品が掲載されたサイトは以下のとおり。

手描き★取り放題
花のデコリ塾
爆笑おもしろ待受の殿堂
待受・壁紙★パラダイス
爆笑おもしろ待受の殿堂
おもしろフラッシュ(笑)
待受フラッシュ★パラダイス

クリプトン・フューチャー・メディア株式会社

いろんな会社さんに待ち受け画像作品を提供させていただいたが、クリプトン・フューチャー・メディア社が運営する「ポケットFlash」の担当の方はすごく優秀な方だった。指示が的確で、希望する作品のイメージを分かりやすく伝えてくれる。出版社に例えるなら、優秀な編集者といった感じの方。漫画家や小説家などの作品をつくる人が活躍するには、プロジェクトや予算を管理する優秀な編集者が必要。モバイルコンテンツ制作も、それと同じである。

商業的な作品制作の現場を体験できる、良い機会であった。

他にもいろいろ

他にも、さまざまな会社さんのモバイルサイト向けに待ち受け画像作品を提供した。印象に残っている案件をピックアップして紹介する。

2009年から2010年にかけて、行動物數位娛樂股份有限公司という台湾のモバイルコンテンツプロバイダーが運営する「Mobioo」というサイトに、Flashの待ち受け画像作品を提供した。海外でも、Flash待受けの文化があるのだと知って嬉しかった。サイトのプロモーションの連絡や、ダウンロード数の報告などもあり、担当者が丁寧に対応してくれた。

シヤチハタ株式会社が美術出版社と一緒に立ち上げた、ハンコやスタンプをモチーフにしたデコメール素材配信サイト「デコぽん★シヤチハタ」にGIF形式のデコメ素材を提供した。ある程度つくるものが決まっている中で、複数のクリエイターが分業してテーマに沿った作品をつくって納品する形式。これはこれで、面白い制作スタイルだった。

「週刊SPA!」の連載で当時人気のあった「タイツくん」というキャラクターを使って、待ち受け画像やデコメをつくるというプロジェクトにも関わったことがある。版元のいるキャラクタービジネスの裏側がちょっと見えて、これもまた面白いプロジェクトだった。

2000年頃に、コツコツと自分の携帯電話で使うためにつくっていた待ち受け画像が、次第に雑誌などにも取り上げられるようになり、いろんな企業から制作の依頼が来るようになった。自分の作品がいろんなところに広がっていくのが楽しくて、ずっと作品をつくり続けていた。

そういった、コミュニケーションが楽しかったのだ。作品をきっかけにして、いろんな繋がりの輪が広がっていくような感じ。

時代はガラケーからスマートフォンへ移り変わり、待ち受け画像やデコメもすたれていったけど、改めて10年以上前の作品を見返しつつ、「よくつくったなぁ」としみじみ懐かしくなります。

せっかくなので、当時の作品を復刻させつつ、なにか新しい作品や見せ方にできないかなと試行錯誤中。この、noteの記事とマガジンも、その一環です。どんな形になるかまだ分からないですが、ちょっと進めてみます。


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アメリカで陶芸彫刻を中心にアートを学び、ロサンゼルスでホームレスになりかけつつもフォトグラファーとして仕事を得て、その後日本でウェブデザイナーからデジタルマーケケターへ。

日曜アーティストとして、今まで展示した作品や、開催したワークショップなどをまとめていきます。

「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。