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【Edge Rank 1138】アーバンアルピニストの登らない山登り【TOMAKI】

小野照崎神社に到着した時、社務所の前には御朱印が目当てと思われる人たちの行列ができていました。いったんその列をスルーして、私は境内の奥へと進みます。この日は7月1日。お山開きの日です。普段は入ることができない富士塚がこの日は一般公開されており、登ることができるのです。朝方に雨が降っていたので、滑らないように慎重に登ります。

私が都内近郊の富士塚に登るきっかけとなったのは、2018年に品川でご当地富士を見つけたとき。調べてみると、都内近郊に200を超える富士塚や、富士山を祀る神社、あるいはその遺跡などがあることを知り、以来コツコツと巡っています。中でも「江戸七富士」と呼ばれる7つの富士塚は毎年全部訪れていますが、すべてを登って参拝するのは意外と難しいです。

前述の小野照崎神社にある下谷坂本富士のように、年に数回しか開山しない富士塚があり、かつコロナ禍で山開きの祭礼が中止になっていたりもして、なかなか全てを登ることができませんでした。

登らない山登りとは

私の趣味のひとつが、アーバンアルピニストという肩書を名乗って「なるべく登らない山登り」をするというもの。都会の登山家です。エレベーターを使って日々青山一丁目のオフィスにのぼっている他、飛鳥山や愛宕山といった低山や、山のつく地名、都心の古墳などを巡っています。

今年も、1月1日の初詣は地元の神社と富士塚へ。そして1月2日には浅草の10歩で登れる小さな富士塚に登拝しています。

浅草富士:東京都台東区浅草5丁目3−2

浅草富士浅間神社の境内にある、高さ2メートルほどの小さな富士塚。どんなに小さな富士塚でも、登拝すると本物の富士山に登ったのと同じご利益があると言われています。江戸時代に富士山へ登ることができるのは、通行手形を手に入れた一部の成人男性のみ。富士山に登ることができない女性や子供、お年寄りなどは、地元にミニチュアの富士山をつくり、お参りしました。今でもたくさんの富士塚が都内近郊に残っています。

飛鳥山:東京都北区王子1丁目1

富士塚以外にも、山と名前がついているけれど国土地理院が定める地図上の山ではない、いわゆる「低山」に登るのが好きです。例えば、飛鳥山は高さが25.4メートルしかなく、山と名前がついていますが正式な地図上の山ではありません。徒歩であっという間に登れるほか、ふもとからモノレールで登ることもできます。これぞ、登らない山登り。さらに、飛鳥山公園内には古墳もあります。

他にも、エレベーターでのぼれる愛宕山や、都心部に残る古墳、山と名の付く公園など、アーバンアルピニストがおすすめする登らない山登りスポットは都内にいくつもあります。

都内に残る古墳

東京の都心部にも、意外と古墳が残っています。

芝丸山古墳:東京都港区芝公園4丁目8−25

都内最大級の古墳が、東京タワーのすぐ近くにある芝公園の芝丸山古墳。全長約106メートル、高さ約16メートルの前方後円墳です。

猿楽塚古墳:東京都渋谷区猿楽町29−9

代官山エリアの「猿楽町」という地名の由来となったのが、この猿楽塚古墳。古墳時代後期の6~7世紀に造られたとされる高塚古墳で、頂上には猿楽神社が鎮座しています。

摺鉢山古墳:東京都台東区上野公園5−20

上野のお山」と呼ばれて親しまれてきた上野恩賜公園のある台地のエリアに、「摺鉢山古墳」があります。石段を上るとすぐに頂上。ベンチ代わりの石柱に座って、しばし休憩することができます。

公園/庭園の築山

庭園や公園内にも、「山」と名付けられた人工の築山や、自然の地形を利用した塚などがあり、それも登らない山登りにぴったりのスポットです。いくつかご紹介します。

日比谷公園:東京都千代田区日比谷公園1−6

1903年に開園した日比谷公園には、三笠山つつじ山と呼ばれる二つの山があります。三笠山は、公園造成時に池などを掘った際の残土で形成されたと言われています。もともと、笠を伏せた形で3つの山がありましたが、現在残っているのはひとつだけ。つつじ山は、その名が示す通りツツジが植えられており、なんと30種類もあるそうです。

六義園:東京都文京区本駒込6丁目16−3

六義園は、「回遊式築山泉水庭園」のいわゆる大名庭園です。和歌山の地形を模した藤代峠があり、その頂上から庭園を一望することができます。この峠には何度か登ったことがあるのですが、この人工の築山の元となる、和歌山にある本物の熊野古道・藤白坂にのぼってみたいと思い、今年の1月に訪れてきました。この六義園がきっかけで、とうとう和歌山の本物の坂にのぼることができました。

清澄庭園:東京都江東区清澄3丁目3−9

清澄庭園にも、富士山があります。もちろん、富士山を模した人工の築山。今年の1月に初めて訪れてみましたが、私の地元の町と同じ名を関する「長瀞峡」というエリアもあったりして、日本庭園ならではの自然の景色を限られたスペースの庭に構築する技術に感心しました。

浜離宮恩賜庭園:東京都中央区浜離宮庭園1−1

浜離宮恩賜庭園には、富士見山八景山御亭山といった築山があります。富士見山からは、昔は富士山が見えていたのでしょうね。寛政10年(1798)に品川沖で巨大な鯨が捕獲された際に江戸中の評判となり、11代将軍徳川家斉がその鯨をこの庭園まで運んできて、御亭山から上覧したという記録が残っているそうです。

5年ぶりの江戸七富士全登拝

さてここからは、富士塚の中でも特に人気の高い、江戸七富士についてご紹介します。冒頭にもご紹介しましたが、この7つの富士塚すべてに登るのは、意外と難しいのです。登りやすい順にご紹介します。

千駄ヶ谷富士:東京都渋谷区千駄ケ谷1丁目1-23

千駄ヶ谷の鳩森八幡神社境内にある富士塚です。千駄ヶ谷富士とも呼ばれています。ここはコースがしっかりとしており、途中で案内板なども立っていることから、初心者におすすめの富士塚です。ここは、通年で登拝することができます。

品川富士:東京都品川区北品川3丁目7-15

こちらも、1年を通していつでも登ることができる富士塚。品川神社の境内にある浅間神社の品川富士です。明治2年(1869)から5年(1872)にかけての築造なので、「江戸七富士」というくくりの中にあるのはちょっと不思議な感じもしますが、江戸・東京を代表する富士塚であることは間違いないです。以前私が品川に勤務していたこともあり、さらに娘がこの近くの高校に通っていたこともあって、江戸七富士の中で個人的に一番多く登拝している富士塚です。6月にここを訪れたときはちょうど神輿渡御が行われていて、正面の急な階段を神輿が登っていく様子は圧巻でした。

音羽富士:東京都文京区大塚5丁目40-1

こちらは珍しい、お寺の中にある富士塚です。護国寺の境内にある浅間神社の音羽富士。高さは約6メートル。最初に造られたのは文化14年(1817年)ですが、明治18年(1885年)に現在地に移設され、さらに平成元年(1989年)に頂上の石祠も含めて修復されています。1合目、2合目など、頂上までの距離を示す10個の「合目石」もあるようなのですが、登山コースが少しわかりづらいので、いつもなんとなく「ここらへんがコースかな?」という行き方で登ります。夏は蚊が多いので注意。

江古田富士:東京都練馬区小竹町1丁目59-2

さて、ここからの富士塚は普段は閉鎖されており、一般公開される期間が限られているので登るのが難しくなってきます。茅原浅間神社の境内にある江古田富士は、正月三が日と、7月1日の山開きの日、そして9月の第二土曜・日曜のお祭りの日の、年に3回だけ登ることができます。今年は、7月1日のお山開きの日に登拝することができました。ここも夏場は蚊が多いのですが、山開きの日は地元の方が蚊よけスプレーを準備してくださってました。

下谷坂本富士:東京都台東区下谷2丁目13-14

小野照崎神社の境内にある、浅間神社の下谷坂本富士です。ここも普段は一般の人が入れないようになっていますが、6月30日と7月1日のお山開きの祭礼の期間のみ、登拝することができます。私は、知人に教えてもらって2019年に初めてここで御朱印帳を購入しました。今回も、その御朱印帳を持参して、お山開き限定の御朱印をいただきました。

十条富士:東京都北区中十条2丁目14-1

十条冨士神社の十条富士は、もともとは通年で登ることができる富士塚でしたが、2019年に登拝したのを最後に道路拡張工事にともなう解体と移転が行われ、その後コロナ禍の影響もあってか工事が大幅に遅れ、ようやく昨年移転と復旧が完了したようです。工事中も私は毎年訪れており、富士塚には登れませんでしたが富士神社には参拝を続けていました。昨年も訪れてみたのですが、頂上へ続く石段の入り口がロープで閉鎖されていたので登れず。今回7月1日のお祭りの日に登ったのがなんと5年ぶり。新型コロナの影響で何年かお祭りが中止になっていたので、屋台が並んでいるのを見るとなんだかとても嬉しくなります。参拝し、線香のお焚き上げも行いました。

高松富士/豊島長崎の富士塚:東京都豊島区高松2丁目9-3

そして、最後は豊島区高松にある、豊島長崎の富士塚。高松富士とも呼ばれています。ここが、江戸七富士の中でも一番登るのが難しい富士塚です。そもそも、山開きが毎年7月初旬の土日の二日間しかなく、かつコロナ禍の期間中はしばらく山開きも中止に。昨年は天候不良のため山には登れなかったそうなので、私も今年は5年ぶりの登拝です。当日は、豊島区長さんもいらっしゃって、一緒に登りました。

2018年、2019年と毎年江戸七富士に登って参拝してきましたが、2020年から突然の流行り病の影響で山開きのお祭りもことごとく中止に。ようやく今年、5年ぶりに七つの富士塚にすべて登拝することができて、なんだか少しほっとしています。ようやく本当の日常が戻ってきたような。

富士山(五合目)

最後はちょっと番外編。今まで私はアーバンアルピニストを名乗って都内近郊で「登らない山登り」にチャレンジしてきましたが、今年50歳になったのを機に、本物の富士登山にもチャレンジしてみようかなと。毎年50か所くらいの富士塚や低山などを訪れているのですが、富士山に登ったことはまだ一回もないのです。まずは練習として、実家のある長瀞の宝登山に登り、週末を利用して高尾山にも登ってみました。東京タワーを外階段で登ったり、その足でレインボーブリッジを往復したり。都内でもできるトレーニングをしつつ。

そしてとうとう、7月13日に、初めての富士山へ! と言ってもまだ今回は、登山の下見として、バスツアーで富士山五合目までですが。この日はあいにくの天気で、富士山はすっぽり雲に隠れていて麓から全景を見ることはできませんでしたが、バスから降りたらいきなり富士山。あまり実感ないけど、確かに富士山へ来たんだなぁ。

富士山五合目

くしくも、今年から富士山への入山制限が厳しくなったらしく。山梨側からの入山料が値上がりし、かつ登山者数の制限も設けられたようです。事前にネット予約がおすすめとのこと。登山道の入り口には、取材らしきカメラが来ていました。今回はとりあえず、バスで行ける五合目まで。

もしかしたら頂上まではまだ無理かもしれないけど、とりあえず今年の登山シーズン中に、なんとか富士登山にチャレンジしてみようと思います。

冨士山小御嶽神社:山梨県富士吉田市上吉田 小御岳下5617

しっかり、五合目の冨士山小御嶽神社にもお参りしてきました。富士登山、実現できますように。

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編集後記

5年ぶりに江戸七富士には全て登拝することができ、これから本物の富士登山にチャレンジするわけなのですが、実はまだあとひとつ、まだ登ることが実現できていない富士塚があります。それが、地元の南千住にある素盞雄神社の富士塚です。7月1日のお山開きの日には何度も訪れているのですが、そのたびにいつも雨。祭礼の儀式は執り行われるのですが、残念ながら登ることができないでいます。不思議なのは、素盞雄神社では雨で登ることができないのですが、その日のうちに違う神社の山開きを訪れると雨がやんでいたり小降りになっていて、そっちは登れるんですよね。今年もまさにそんな感じでした。というわけで、地元の富士塚登拝はまた来年におあずけ。

今回もお読みいただきありがとうございました。
次号は、「東京散歩ぽ」の中川マナブさんです!

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「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。