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【Edge Rank 1009】中銀カプセルタワービルの跡【TOMAKI】

今年の4月に50歳の誕生日を迎えた中銀カプセルタワービル。50周年のめでたい節目が、解体のはじまりとなるなんて。

2019年10月から11月にかけて、私はこの銀座八丁目にある、黒川紀章さんがつくったユニークなビルに住んでいました。1972年竣工。140個の「カプセル」が、2本のコアシャフトにくっついているという、不思議すぎるビル。

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新陳代謝を意味する「メタボリズム」というコンセプトをもとにしてつくられたこの建物は、細胞が入れ替わって成長するようにカプセルごと交換したり増殖したりするという予定だったのですが、結局最後まで一度もはずされることがないまま。セントラルヒーティングシステムの空調はとっくに壊れ、お湯も出なくなり、雨漏りがだんだんひどくなってあちこち傷んできていましたが、かえってそれも建物の魅力となって、住んでみたいという人が後を絶たないという。不便は不便なのですが、その不便さも楽しめる人たちが住人として集まっていて、そういった人たちとの交流がまるで縦に連なる長屋みたいな感じでした。

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1か月間の滞在中、ひたすら思いつくままになにか面白い遊びをそこでやろうと思って、友人たちも巻き込んでそこでドローンが飛び交う中で宇宙食を食べてみたり、昆虫食をつまみに日本酒を飲んだり、ハンコを使ったコマドリ映像をつくったり、チェコを語る会や、御朱印帳づくり、銀座の建築巡りツアーやnoteの勉強会などなど、いろんなことをやりました。中でも思い出に残っているのが、このカプセルの中でアイヌの口琴楽器「ムックリ」の演奏を聴いたこと。『ゴールデンカムイ』のアニメの中でこのムックリの演奏の監修をされている惠原 詩乃(UtaE)さんが遊びに来てくださり、みんなでこの不思議な音色に聴き入りました。

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退去した後も中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトの前田達之さんと交流が続き、さらに黒川紀章さんのご子息である黒川未来夫さんとも「カプセル飲み会」でお目にかかって、そこにカプセル住人のレジェンド住人コスプレ声さんや、当時朝日新聞のwithnewsで編集長を務めていらした奥山晶二郎も加わって、一緒に代官山 蔦屋書店のトークイベントに登壇させてもらいました。この不思議なビルを起点にして、いろんなご縁がつながっていき、とても素敵な体験が続いています。夢みたいな。

解体されていくビル

今年の4月に解体がスタートし、梅雨の最中や夏の暑い日も少しずつ、少しずつカプセルの部屋が外されていきました。

解体の様子は、SNSなどでカプセルが外されていく様子を見守りつつ、たびたび現場にも訪れました。来てみたところで、囲いに覆われていて何が見えるというわけでもないのですが、それでもついつい来てしまうんですよね。

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9月13日にはまだコアシャフトの一部とエレベーターの入り口だけが残っていましたが、9月末には全部なくなってしまいました。

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ちょうど一昨日の日曜日に、このなにもなくなった銀座八丁目の中銀カプセルタワー跡地を見に行きました。我々の居場所がなくなってしまい、とても寂しいです。けど、実は中銀カプセルタワービルは完全に無くなったわけではないのです!私が住んでいたB504号室も含め、約20個のカプセルが取り外されたあとに綺麗に修繕され、今後美術館などいろいろな場所に旅立っていくとのこと。これもまた、ちょっと変わった新陳代謝の形かもしれないですね。

まだ終わらない、中銀カプセルタワービル活動

前述の代官山 蔦屋書店でのトークイベントの他にも、前田達之さんと一緒に埼玉県立近代美術館で、中銀カプセルタワービルをテーマにしたトークイベントに登壇させてもらいました。プレゼンテーションで滞在中のエピソードを語った他、当時インスタグラムに投稿したたくさんの写真をプリントアウトして、中銀カプセルタワーデザインの紙箱に入れて持参しました。

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この箱が割と気にいったので、7月に開催されたおもちゃのかえっこ(交換会)イベント「かえっこバザール」で、お子さんたちと一緒にメタボリズムな箱をつくるという工作ワークショップを開催したりなども。

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今月に入っても、まだまだ中銀カプセルタワービル関連のニュースがあります。10月12日から、中銀カプセルタワービルとBEAMSのコラボもスタートしています。新宿のショップとオンラインで、BEAMSがデザインしたTシャツやトートバッグ、クッション、キャップ、ピンズなどを購入することができますよ。

さらにさらに、ユニクロ銀座店とTOKYO店では「銀座もの繋ぎプロジェクト チャリティTシャツ」が販売されていて、そこに新たに加わった中銀カプセルタワービルの50周年記念ロゴを使ってTシャツやトートバッグがつくれるという話。私はまだ行ってないのですが。ユニクロのお店に行ってその場でデザインを指定して、20分くらいでつくってプリントしてくれるそうですよ。ちなみに、この中銀カプセルタワービルの50周年記念ロゴは、実は私がデザインしました!ユニクロで、自分がデザインしたロゴのTシャツが買えるなんて、なんて素敵な。これもまた、夢のようです。

銀座八丁目のあの場所から中銀カプセルタワービルは無くなってしまったけど、まだまだそこで生まれたいろんな繋がりやきっかけは続いていて、そこで出会った人たちや仲間とは今でも一緒に遊んだり、展示を見に来てくださったり、あるいはこちらからイベントなどへ会いに行ったりもしています。ちょうど今週末は、カプセルの部屋でムックリを演奏してくださったUtaEさんに会いに行きます。楽しみだー。

これからも、この繋がりを大事にしつつ。中銀カプセルタワービルの新たな再生を見守っていきたいと思います。

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今月のEdge Rank共通テーマは 「不在」 です。10月は神無月と言われますよね。神様がみな出雲大社に行ってしまうため、出雲の地方だけは「神在月」それ以外は「神無月」というんだとか。となると僕の周囲からは神様が「不在」となってしまいます。何かがいないことの便利・不便、無くしてしまったもの、無くてよかったものなどなど、そこにないことについて教えてください。
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編集後記

この、更地になった中銀カプセルタワービル跡地を見に行ったその日の午後、上野の寛永寺で「東京ビエンナーレ はじまり展」のリレートークイベントに参加したら、そのプレゼンに中銀カプセルタワービルが出てきました!写真や3Dスキャンを使って、建物をデータでアーカイブ化するというプロジェクトだそうです。こんなところでも繋がっているんだなぁ。

そして次号は、「東京散歩ぽ」の中川マナブさん。中川さんがご夫婦でつくって出版した『東京の懐かしくて新しい暮らし365日』にも、中銀カプセルタワービルが紹介されていますよ。

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「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。