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「かえっこ」で工作ワークショップをしてきた10年の記録

「かえっこ」とは、秋田公立美術大学教授で現代美術家の藤浩志さんが2000年に最初はご家族ではじめたプロジェクト。家にある使わなくなったおもちゃを持ってきて、会場で交換するというもの。その際に、かえっこ共通のこども通貨「カエルポイント(スタンプ)」を使います。

この「かえっこ」のイベントは誰でも開催することができ、今では全国の学校や商店街、自治体や、地域活動の一環としてさまざまな場所で開催されています。

私がはじめてこの「かえっこ」のイベントに参加したのは、2012年の夏。2011年から2012年にかけて、3331 Arts Chiyodaの元中学校だった教室を共同アトリエとして使わせていただいたことがきっかけで、その後も3331のギャラリーショップで作品を販売したり、イベントに参加したりなどしていました。

そんな中、藤浩志さんの美術展『セントラルかえるステーション ~なぜこんなにおもちゃが集まるのか?~』が2012年7月15日から3331 Arts Chiyodaのメインギャラリーで開催されることを知り、子どもたちを対象にした工作ワークショップの企画を募集しているとのことで、申し込んでみました。

最初に提案したのは、みんなでおもちゃの写真を撮って、それを色ごとに並べて大きなカエルのフォトウォールをつくるというもの。壁に展示するイメージの設計図を添付して送ったのですが、藤さんからの回答は「あまり細部をカッチリ決めるのではなく、もっと自由な感じでよいよ」というもの。撮影する対象も、構図も、どんな風にどこに貼るかも子どもたちが自由に決めて良い、と。そんなわけで、改めてもっと自由な企画を提案したところ、OKをいただいたので、2012年の夏に初めて「かえるワークショップ」を行うことになりました。

かえるワークショップのコンセプトは、以下の藤さんの本がとても参考になります。

「おもちゃの写真コーナー ~みんなでフォトウォールをつくろう!~」(2012年7月15日、22日)

201年7月に行った、フォトウォールのワークショップは、3331 Arts Chiyodaで開催された藤浩志さんの個展の会場の一部を使って行われました。おもちゃを交換できる「かえっこ」の会場に、複数のワークショップが同時進行で開催され、子どもたちは自由に好きなワークショップを選ぶことができます。

私は、タブレット端末を持ち込んでWi-Fiネットワークを構築し、そこにエプソンのプリンターをつないでワイヤレスで会場にあるどのケータイやスマホからでも写真がプリントアウトできるようにしました。子どもたちが会場でおもちゃの写真を撮影し、それを指定のメールアドレスに送信すると、プリンターから印刷されて出てくるという仕組みです。貸し出し用に、何台かスマホも用意しました。

子どもたちが、自由な視点でどんどん写真を撮って送ってくれるので、それを壁に貼っていきました。会場の風景の一部を切り取って、お気に入りのおもちゃを写真に収める。そして、それがフォトウォールの作品となって会場の壁に展示されていく。

自由で、楽しめるワークショップになりました。

おもちゃにいろんな表情が!「このカオどんなカオ?」(2013年6月15日&8月24日)

2012年夏に初めてかえっこでワークショップを担当して以来、子どもたちと一緒になにかをつくるということがとても楽しくなりました。ということで、2013年も引き続きかえっこワークショップの企画して、当日の会場で「ワークショップの先生」をやりました。

2013年6月と8月の2回にわたって、「おもちゃに顔をつける」というワークショップを開催しました。会場にワークショップコーナーを設置し、子どもたちが自由にいつでも参加できるようにしました。

テーブルの上に、ペンやハサミなどの文房具と、目や口などのシールをたくさん用意。子どもたちは、好きなおもちゃをそのテーブルまで持ってきて、そのおもちゃに目や口を描いたりシールを貼ったりなどして、表情をつくるというもの。

ミニカーや、積み木、ポーチやハサミでさえ、目と口がつくことで途端にキャラクターっぽくなります。それまで無機質だったのものが、突然擬人化されて、感情が生まれてくるように見えてきます。

微妙な配置によって、表情も変わってきます。福笑いみたいで面白いです。

おもちゃに目をつけている子どもたちに向かって、「目のつけどころがいいねぇ」とか「よっ!お目が高い」みたいなダジャレを言おうと思ってたのですが、全然ウケないというか、通じないので止めました。

このワークショップでは、うちの娘もアシスタントとして参加しました。家にある使わなくなったおもちゃを持参して、かえるポイントに交換しつつ。今後もしばらくずっとかえっこが開催されるたびに一緒に参加しました。

「えにかいたぉもちゃ」で、おもちゃがもらえる!(2014年3月30日&7月19日)

2014年も、2回ほどかえっこでワークショップを開催しました。この時は、「絵に描いた餅」ならぬ、「絵に描いたおもちゃ」というタイトルで。会場にある「欲しい」と思うおもちゃ(高額のオークション用おもちゃを除く)をワークショップコーナーに持ってきて、それを丁寧に描くと、そのおもちゃをプレゼントしますよ、という内容。絵に描いたおもちゃが、本当にもらえてしまうという企画です。

みんな、おもちゃを真剣に見ながら、一生懸命絵を描いてくれました。それぞれ、個性のある絵で素晴らしかったです。絵が上手かどうかにかかわらず、一生懸命描いてくれた子どもたちには、みんなにそのおもちゃをプレゼントしました。

この時も、うちの娘が会場でワークショップのアシスタントをしてくれました。

おもちゃでしりとりゲーム「シリトリしようぜ!」(2015年2月15日)

2015年に開催したワークショップは、それまでとは少し趣向を変えて。言葉をテーマに、おもちゃで「シリトリ」をすることに。

シリトリ用のシートを用意して、まず誰かがそこにおもちゃの名前など自由に言葉を書き込みます。次の人は、そのシートの最後の一文字を見て、それと同じ文字を使ってシリトリの要領で次のシートに言葉を書き込みます。これをおもちゃを見ながらやるという形です。物の名前そのものでも良いですし、少し長い文章でも良くて、最初の一文字だけあっていれば自由です。

シリトリとして言葉を繋げたら、シートに紐を結んで連結していきます。一列に伸ばしていっても良いですし、途中で分岐していっても構わない。

とにかく、おもちゃを見ながら言葉を考えて、それをシリトリのように繋げていく、と。その会場で、子どもたちと話をしながら。「どんなおもちゃを持ってきたの?」とか「どの文字でシリトリする?」とか。前の子たちが書いていったシートやおもちゃを見ながら、会話をしながら進めていきます。

シートの準備をしてくれている娘。最初にかえっこに参加した時から比べて、だいぶ大きくなりました。会場に来てくれる常連の子どもたちや、かえるスタッフの子たちも、毎年少しずつ大きくなっていくのが感じられます。

UVレジンを使って「つくってみよう!工作ワークショップ」(2015年8月1日&8日)

UVレジンを使って、おもちゃをリメイクしてみようという企画。材料費がかかるので、この時ははじめて有料のワークショップにしました。1回、300円です。

UVレジンは、透明のどろどろとした液体で、紫外線を照射すると固まるという性質があります。シリコンの型を用意して、そこにおもちゃの欠片とUVレジンを流し込み、オリジナルのアクセサリーなどがつくれます。

カラフルなゴム製の吸盤を細かくカットして、UVレジンで固め、綺麗な指輪をつくりました。

トンボのハネに細かいパーツを載せ、それをUVレジンで固めて、デコレーション。ブローチです。

紫外線ランプを使って、固まるまでに6分程度かかるので、その間子どもたちは会場で自由に遊んだり、他のワークショップに参加したりなどしつつ、完成したら取りにくるという方式にしました。なかなか面白いワークショップになったと思います。

ただ、有料にすると、やりたくても参加できなくなってしまう子が出てきてしまうので、それは課題だなと思いました。

手づくりのオリジナル「エコ封筒をつくろう」(2016年8月11日&2017年2月26日)

2016年8月と2017年2月は、「エコ封筒をつくろう」というワークショップを開催しました。まず用意したのは、A4サイズの紙で封筒をつくるためのテンプレート。これは、Adobeイラストレーターでつくったものをレーザー加工機でカットしてつくりました。素材は、MDFです。

A4サイズの紙の上にこの型を置き、鉛筆でなぞります。そして、その通りにハサミでカットすると封筒の原型ができます。それを折って、貼れば、封筒の完成。

会場で封筒をつくるのは無料。つくったあと、自由にデコレーションもできます。この封筒を作るための型は、希望の方には有料で販売もしました。

このエコ封筒のワークショップはかなり人気で、3331でのかえっこで開催した他にも、吉祥寺の東急百貨店の催事コーナーでも開催。そこでも、たくさんの子供たちが参加してくれました。他にも、Makers' Baseのフリマイベントや、3331でのアートフリマなどでもこのテンプレートを販売しました。

娘が一緒に参加してくれたのは、ここらへんが最後でしたね。小学校を卒業したので。ちょっと寂しい気もします。

「かえっこ17歳の春」ミートアップイベント(2017年2月26日)

藤さんのこの「かえっこ」のプロジェクトが、17年を迎えるということで、「かえっこ17歳の春」と題したミートアップイベントが2017年2月に開催されました。私も「かえっこワークショップアーティスト」として参加させていただき、それまでの活動内容などを簡単なプレゼンテーションにまとめて紹介しました。

藤さんご夫妻も登壇して、かえっこについてみんなで話をしました。


会場から探して!「おもちゃ集めゲーム」(2017年8月6日)

2017年8月に私が担当したかえっこワークショップは、完全に「遊び」に振り切ってみました。借り物競争のような感じで、「お題」にそって会場のどこかにあるおもちゃを探して持ってくる、というもの。

お題は、色であったり、形であったり、素材の種類であったりなど、なんでもあり。特定のキャラクターのおもちゃ、なんていうお題も。お題自体も、子どもたちで考えながら、みんなでおもちゃ集めのゲームをしました。

空間をイメージしながら「小さなおもちゃ箱をつくろう」(2017年12月3日&2018年10月14日)

2017年12月と、2018年10月に行ったのが、小さなおもちゃ箱をつくるというワークショップ。封筒づくりの時と同じように、この時も材料はMDFで、レーザー加工機でカットしました。

パーツを組み合わせてボンドで接着すると、本棚に立てかけられるサイズの小さな箱をつくることができます。

このワークショップの趣旨としては、小さな箱を自分でつくり、その箱の中にどんなものが入るか、そのサイズなどを頭に思い浮かべるというもの。箱が完成したら、その中におもちゃを入れて持って帰って良いよ、という企画です。

デコレーションも自由に。

会場には、たくさんのおもちゃがあります。この箱に入りそうなおもちゃを探して、中に入れば持って帰ることができます。

「かえっこ18年だヨ!全員集合」(2018年3月3日)

2018年に、かえっこ18年を記念して、「かえっこ18年だヨ!全員集合」というラウンドテーブル形式のミートアップイベントが開催されました。全国各地から「かえっこ」に関わる人たちが集まり、こんなにもいろんな場所でかえっこのイベントが行われているのはすごいと実感しました。

2020年に、20周年のミートアップイベントも企画されていたのですが、コロナ禍の影響で中止になってしまったのは残念です。

『英語 de かえっこ ~Let’s Exchange Toys!~』のお手伝い(2018年8月11日)

こちらは、「夏の3331 こども芸術学校2018」の企画のひとつとして開催された『英語 de かえっこ』というイベント。子どもたちが、かえっこを通じて英語を学ぶという内容。この時は、ワークショップコーナーはなかったので、普通にボランティアスタッフとしてイベントのお手伝いをしました。

英語をまなびながらのかえっこも、なかなか新鮮で面白かったですよ。

かえっこ ワークショップ「入れ物をつくろう」(2020年1月25日)

この記事を執筆している時点で、一番最後に行ったのが、この「入れ物をつくろう」というワークショップです。紙を切ったり貼ったりして、封筒をつくったり、箱をつくったりというもの。この時も、つくった入れ物に入るおもちゃがあれば、持って帰って良いですよ、というもの。

思った以上に参加者が多く、途中で封筒の素材がなくなってしまい、急遽会場で材料の追加をしました。かえっこのワークショップは、かえるポイントがもらえるので、無料にするとかなりたくさんの人が参加します。ワークショップを楽しんでくれる人もいる一方、ポイントだけが欲しい子もいたりして。そういうのも含めて、かえっこって本当に面白いなと思います。

東京ビエンナーレ2020/2021「kaekko Expo.」の設営ボランティア(2021年8月)

東京ビエンナーレの出展プロジェクトのひとつに、藤さんの「kaekko Expo.」がありました。もともとは、2020年に開催されるはずだったのですが、コロナ禍の影響で2021年に延期に。

私は、ぜひこの会場設営を手伝いたくて、東京ビエンナーレのボランティアスタッフに申し込みました。その時すでに、東京ビエンナーレの企画のひとつである優美堂再生プロジェクトには参加していたのですが、かえっこの企画はそれとは別に、通常のボランティアとして申し込みました。

2021年8月の週末、3331の体育館に膨大な量のおもちゃを並べていきました。藤さんご夫妻と、息子さんもいらっしゃって、一緒に作業をしていきました。

2012年に初めて3331の藤さんの作品展でかえっこのワークショップを担当させていただき、それからもう10年になります。ワークショップを行った回数は13回。フォトウォールから始まって、おもちゃを描いたり、顔をつけたり、封筒や箱をつくったり。ひたすらおもちゃを並べる作業も、だいぶなれました。

かえっこが始まると、たくさんの子供たちが集まります。おもちゃに囲まれて、みんなとても楽しそうです。最初は小学生で一緒に参加していた娘も、今ではもう高校生に。かえっこに参加してくれていた子どもたちも、みんなどんどん成長して大きくなっていったことでしょう。

自分にとっても、こうしてワークショップのアイデアを考えて、材料をそろえて実行していくプロセスがとても楽しく、学びになりました。

こうして振り返ってみると、なんとなく10年一区切りみたいな感じになってますけど、できればまたおもちゃを並べたり、みんなで一緒に工作をしたり、かえっこに参加できれば良いなと思います。

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アメリカで陶芸彫刻を中心にアートを学び、ロサンゼルスでホームレスになりかけつつもフォトグラファーとして仕事を得て、その後日本でウェブデザイナーからデジタルマーケケターへ。

日曜アーティストとして、今まで展示した作品や、開催したワークショップなどをまとめていきます。

「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。