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アートとの出会い

「あの教授のクラスだけは、厳しいから取らない方が良いよ」って、学生たちに噂されているアートのクラスがありました。H教授の「Visual Foundation(視覚基礎)」のクラス。課題が多くて、評価も厳しく、先生がとにかく意地悪だと言うのです。それを聞いた僕は、「へー、面白そう」と思い、H教授のクラスを取ることにしました。

授業を取るにあたって、「準備するものリスト」が渡されました。そこには、クレヨン、のり、鉛筆、カッター、定規など、およそアートのクラスとは思えないような、画材というより文房具ばかりで、まずそこに驚きました。

つまりは、優秀なアーティストであれば道具に頼らず、いかなる道具であってもそれを習得して使いこなせるようになるべきだ、という先生の教え。基本的な道具を使いこなせなければ、高級な画材など宝の持ち腐れであるということで、まずは子供が使うようなクレヨンやパステルを使いながら、絵を描いていきました。

基本的に、授業の時間はひたすら作品の発表と批評をします。自分が描いたものを壁に貼って、それに対してその作品の制作過程や、考えたこと、表現の意図などを発表します。そして、それに対して先生がコメントをするという形式。その、先生のコメントが辛辣というか、作者の心をエグルものが多くて。手を抜いたら一発で見抜くし、そして完膚なきまでこてんぱんに酷評する。そして、ほとんどの作品が酷評される。

そりゃそうです、その視覚基礎のクラスは一般教養課程のクラスなので、大学1年生や2年生が多く、アートに興味がない人もたくさん受講している。一方で、その教授はある意味大学の名物教授でもあるので、結構年配の方でリピートして受講している方もいたりして。作品の質にも差があるのです。H教授の歯に衣着せぬ作品批評で心がすり減っていく学生が多い中、けど良い作品は「これは良い!」ってはっきりおっしゃるんですね。それは、単純に絵がうまいとかだけでなく、その作品に対するコンセプトであったり、背景にあるものがしっかりしていれば、作品の出来栄えは多少悪くても褒めてくれる。きちんとていねいに、しっかりと時間をかけて考えながらつくった作品は、認めてくれるのです。見た目が不格好な作品でも、きちんと作品に対しての思いをプレゼンすると、その評価が変わったりすることも。そして、「ここをもっとこうした方が良い」というアドバイスをしてくれたりもします。

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アメリカで陶芸彫刻を中心にアートを学び、ロサンゼルスでホームレスになりかけつつもフォトグラファーとして仕事を得て、その後日本でウェブデザイナーからデジタルマーケケターへ。

日曜アーティストとして、今まで展示した作品や、開催したワークショップなどをまとめていきます。

「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。