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フィラリア予防薬とノミ・ダニ防除薬

犬を飼養していて気をつけなければならない三大寄生虫が「フィラリア」「ノミ」「ダニ」です。

特に蚊が媒介するフィラリア症は愛犬の生死にかかわる非常に恐ろしい感染症です。蚊に刺されることで体内に入ったフィラリア(犬糸状虫)は、感染幼虫を経て成虫となって犬の心臓や肺動脈に寄生し、血液循環や内臓機能に重篤な症状を引き起こすからです。

その「フィラリア予防薬」ですが、正確には「フィラリア感染幼虫駆除薬」と言います。一般的に利用されている経口薬としては、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学の大村智教授と米国メルク社が共同開発したイベルメクチンを主成分とする「カルドメック (ハートガードプラス、ストロングハートプラス、キウォフハート、イベルメック)」、ミルベマイシンオキシムを主成分とする「ミルベマイシン」「インターセプター」などがあります。

「カルドメック (ジェネリックを含む)」や「ミルベマイシン」などは、フィラリア症の感染を予防するのではなく、服用によって犬の体内に入ったフィラリアの感染幼虫が成虫になる前にすべて駆除して、犬がフィラリア症になるのを予防する薬です。月一回の経口投与が求められますが、薬の効果は1ヶ月間持続するわけではなく、服用したときに効くだけです (薬の成分は服用から数日で排泄されます)。

フィラリア感染幼虫が成虫になるまでは約2ヶ月ありますので、これらの薬を1ヶ月に1度、服用すれば、ほぼ完璧に感染幼虫を殺すことができます。また、万一、一回投与を忘れたとしても、次から投与を続ければ問題ないことがお分かり頂けると思います。

「ノミ・ダニ防除薬」も、正確には「ノミ・ダニ・シラミ駆除薬」です。この薬には滴下タイプと経口タイプがあります。

滴下タイプの「フロントライン (プロテクトプラス、マイフリーガード)」は首筋に投与すると成分は犬の皮膚表面の脂分を伝わり全身に広がります。その後、毛根の横にある皮脂腺に蓄えられ、そこから皮脂とともに徐々に放出されて再び体表や被毛上に広がるため、その効果が1~3か月間持続します。体に寄生したノミ・ダニが吸血を開始すると、有効成分が寄生虫の抑制性神経伝達物質を遮断し、神経を過剰に興奮させることにより死に至らしめます。メーカーによれば、「フロントライン」はノミを約24時間、マダニを約48時間以内に駆除することができます。

経口タイプの「ネクスガード」「ブラベクト」「シンパリカ」「クレデリオ」などは、経口投与後、速やかに血液を通じて体内に拡散され、ノミやダニが取り付いて血液を吸うと有効成分が取り込まれ死に至ります。(メーカーによれば、投与後、数時間で有効性が発揮されノミ・ダニが実際に駆除される)  また、その効果は1~3ヶ月間持続するということですから、有効成分がその間、十分な血中濃度を保って体内を循環し続けるということになります。

「フィラリア予防薬」と「ノミ・ダニ防除薬」をバラバラに投与するのは、煩雑であり飼い主の負担も大きいことから両者の合剤も発売されています。「ネクスガードスペクトラ」「パノラミス」「クレデリオプラス」などが、これに該当します。この合剤の投与にあたり注意するポイントとしては、一般的に「フィラリア予防薬」は服用したその時のみ効果があり、「ノミ・ダニ防除薬」は投与してから最低1ヶ月間は効果が持続するということです。別々に使用すれば最適なタイミングを計ることは比較的容易ですが、両者の成分を含む合剤となると、使い始めや終わりのタイミングを検討する必要があります。

注:
「フィラリア予防薬」のうちモキシデクチンを主成分とする「モキシハート」は、投薬時にのみ効果があるのではなく、投薬後約1ヶ月間、有効成分の血中濃度が維持され効果が持続します。よって、モキシデクチンと「ノミ・ダニ防除薬」の合剤である「シンパリカトリオ」は、効果が持続するため使用のタイミングを計る必要はありません。(投薬後、約1ヶ月間はフィラリアおよびノミ・ダニの駆除に効果があります)

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