くろとぴんく②


2024年3月9日

検診を受けたお医者さんのところに話を聞きに行くと、「8割9割、乳癌だと思います。週明けに〇〇病院に予約の電話を入れてください。私が勤務しています。」と言われた。

いつも鉄仮面のような無表情で、余計なことは話さず、こちらからの質問に最低限のことのみ答える女医さん。
去年の画像を見せながら、「去年はこれです。写ってないのでわかりませんね。」と言った後、「ご自分でこのシコリに気付いてたら、もう少し早くみつけられたかもしれませんね。」と言った。

余計なことは言わない鉄仮面だと思っていたのに。
(早く見つけたらよかった。)なんて、今の状況で、これ以上余計な言葉があるだろうか。
「去年の画像では見つけられなかなかったんですか。」なんて意味のないことは、私は聞かないけれど。
この女医さんのの言葉は保身のように感じたし、余計なことを言う人だと思った。

絶望している私に
「他に何か質問はありますか?」とテンプレのように言ったので、私の気持ちを言う気になれず、「ありません。」と返して帰宅した。


妹に連絡すると、
「気持ちの準備はしておいた方が良いね。大丈夫。毎年受けてるんだから。初期に取れば治るよ、大丈夫、大丈夫。」

そ、そうか。胸を切るのか。。。

友達のナースに相談してみた。
「これから辛い事が沢山あると思います。話を聞くことはできるのでいつでも連絡下さい。」と返事をくれた。

(これから辛い事が沢山。。。)恐怖で真っ暗。。。

胸を切って、治療で髪が抜けて、と
イメージする。

私の体の中で、人から褒められる部位は髪の毛である。特に手入れせずほったらかしでも、いつもサラサラで寝癖もつかない、この髪質を気に入っている。子どもの頃からよく褒められるので、背中までのロングに伸ばしてはボブに切ってヘアドネーションするというのが、高校生の時からのルーティンだった。そぅ、髪の毛、無くなるの。。。

胸も切るのか。
愛着のある自分の身体の一部。女性の象徴、え、これ無くなるの。。

胸も髪もなくなったら、私はどうなってしまうんだろう。
女性らしく綺麗でいたいというアイデンティティがぐらつくような感じがする。
どこかが無くなったとしても、どこが残ったら、この気持ちはへっちゃらに保たれるのだろう。

アメジストの指輪が欲しいとか
ダイヤのネックレスが欲しいとか
上から吊るすゆらゆらのソファに寝そべりたいとか

そんなものよりも
健康な体と不安なく過ごせる時間が何より欲しいです神様。
ぼーーっと歩く。

赤信号で歩きそうになってプーっとされる。

は。娘に今まで、傷つけるような言葉を言ったことはなかっただろうか。喧嘩した時、あんなことを言ってしまった。そんなこと思ってないのに。
あなたに会えた事が私にとって1番ラッキーな事だったと、帰ったらすぐに伝えよう。

夜、ベッドの中で娘に、思ったことを伝えた。
「今までママの言葉で傷ついたことある?」と聞いたら、「喧嘩してもその日のうちに仲直りするから嫌なことなんてされてないけど。でも『もう大きいから少しずつ離れないと。』と言われた事が悲しかった。ママは本当に自分と離れたいの?って悲しかった。」と娘が言った。
「離れて生活したいとか、ストレスで嫌だとか、そういうことじゃなくて、違う人格だし、思春期もあるし、意見が食い違う時とかイライラする時もあるのに、そういう時にも狭い部屋でくっついてお風呂入ったり寝たりするより、少し距離をとって頭冷やした方がいいよね、っていう意味で言ったんだよ。あなたと会えてママになれたことは人生で1番ラッキーなことだと思っているよ。」と伝えた。
娘はそれを聞いて、嬉しそうだった。


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