くろとぴんく③

2024年3月10日

ろくに眠れず朝が来た。
娘は早朝から友達と遊びに行ったので1人になれたが、家にいても何にも手につかない。

これではダメだ、そうだ、今月の課題図書を読もう、とPCを開いてみる。
今月の課題図書は『怒りをコントロールできない子どもの理解』だ。
怒り、怒りについて読み進める。。

(なぜ今、私が、癌になるんだろう。)自分の怒りがふつふつ湧いてきて、怒りのコントロールどころではない。本の内容なんて全く入ってこない。

ぱたん、と本を閉じる。
はぁ。


2024年3月11日

週明け。
紹介された病院への電話予約は、何度かけても繋がらなく、やっと繋がったと思ったら、最短で診察の予約が取れたのは3週間後だった。

そんなに後で大丈夫なのか。不安で仕方ない。

電話対応の方に

「そこが最短ですよね。。。」とつい聞いてしまう。。
「うちは全国から沢山患者さんが来るから、これが最短なんです。ご心配もわかるので、もし他で早く精密検査ができるなら、それで紹介状書いてもらっても良いです。」と言ってくれたので、精検だけでも、と他の病院にも相談してみることにした。

いくつか探して、
口コミも電話の感じも良い印象だったクリニックで、1時間後に診察の予約が取れた。急いで向かう。

待合室でも怖いことばかりが頭に浮かび、不安と恐怖でいっぱいで、勝手に目から水が出てくる。頭痛くらくらするし今にも吐きそう。


名前が呼ばれた。

穏やかそうな印象の先生に、今までの事、ここに辿り着いた経緯を伝える。

体をこちらに向けて、目を見てうんうんと聞いてくれた。
いくつかの病院をあたったことで、紹介状の扱いについても決められずにいたけれど、一緒に考えてくれた。

「聞きたいことはありますか?」と言ってくれたので、「まだ子育て中なのに、生活が変わってしまうのかな、これからどうなっちゃうのかな。。」と私の不安な気持ちを伝えた。
「乳癌かまだ分からないし、乳癌だとしても、そんなに進行が早い癌でないし、殆どの人が治るから、そんなに心配しなくて大丈夫です。」と言ってくれた。

精密検査もこのまま午後にしてくれるとのこと。


血液検査の時はいつも看護師さんに「できれば細い針が。。。あるとよいのですけれど。。」と伝えてから臨むのだけれど。
今回の検査、3つあるうちの1番太い針の検査が、結果の精密度が上がるのでおすすめとのことで、そうした。日帰り手術扱いとのことで、書類にサインをする。

どのくらい痛いんだろうと緊張するが、麻酔はするし、もう、先生に身を預けるのみ。目を瞑って挑む。

私が怖がっているので、
先生は、都合都度
「痛みどうですか。」と聞いてくれて、「うぅ、痛いような気がします。」と答えると、「少し麻酔足しますね。」(麻酔を追加してるかどうかは知らないが。)と対応してくれた。

多分先生が上手(この時点で信頼している)なので痛みはあまり感じなかったが、ボールの空気入れのようなサイズの大きな注射器?と、ドリルのような音がなんとも不快で恐怖を感じるのである。

苦痛な5分が過ぎると、

「痛かったですね、すみません。」と言う先生。「いえ、痛みはそれほどではなかったです、ありがとうございました。」と答えた。

眠剤を出して欲しい旨を伝えると、応じてくれた。

「先生、私、先生とお話できて、やっと少し眠れそう。」とお礼を伝えてクリニックを出た。

本物の医療従事者って、
知識や技術だけではなく、患者の不安や痛みに寄り添える優しさやセンスをもつ人をいうんだなと思った。

麻酔のせいなのか、緊張感が続いたせいなのか、ものすごい疲労感を感じる。

早く家でゆっくりしたいのに、電車に乗り間違えて逆の駅に来ていることに気付き、修正して乗り直した。
なのにまたもや違う電車に乗ってしまうというダブルミス。

いつ帰宅できるのか。

(事故に遭わないように気をつけよう。)と思いながらなんとかバスに乗り、塾帰りの娘と合流して、帰宅した。

家族の顔を見るとホッとするものである。


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