【レビュー】月風魔伝:Undying Moon

2022年2月10日、知る人ぞ知るファミコンの作品・月風魔伝の最新作「月風魔伝 Undying Moon」(以下UM)が発売されたので、睡眠時間を削ってプレイしてみました。

相当人を選ぶ作品なのは否めませんが、個人的には結構良作の印象で、値段以上の体験は出来ました。願わくば、この記事が購入を検討されている方の参考になれば幸いです。

月風魔伝って何?

月風魔伝とは1987年に発売されたファミコンソフトで、仇敵である龍骨鬼を倒すため主人公の月風魔を操作し地獄を旅するアクション作品です。ちなみに月(げつ)が苗字で風魔(ふうま)が名前、月氏(げつうじ)の風魔が成す伝記だから、月風魔・伝。

和風テイストな独特の世界観と、RPG要素を含めたボリューミーな内容で好評を博し、カメオ出演が大好きだったコナミの他作品にもちょいちょい登場していたり、続編の計画もあったりと、月氏は公家、民草問わず皆から愛されていましたとさ。

同じく和風の世界観を推しているナムコの「源平討魔伝」にソックリである旨が有名ですが、一方でFC版源平が月風魔伝にソックリという、どっちが本家だか分かりづらい事態が起こっていました。時系列順に並べると…

●AC版源平(1986)→●月風(1987)→●FC版源平(1988)

なのでお互いパクr…相互リスペクトということなのでしょう。おおらかな時代でしたね。余談ですが源平はこの後PCエンジンで「巻ノ弐」という続編を出していますが、あんまり面白くなかったです。源氏の祟りかな?

最新作はハクスラ系アクションでした

実に34年振りの新作と相成った月風魔伝UMは、突入ごとに構造が変化する全6ステージ(分岐あり)を自己強化を繰り返しつつ探索する、いわゆるハクスラ系ローグライクアクションゲーム

なかなか容赦ない難易度の道中をやられながら覚えつつ、素材を集めてパワーアップし、難関を突破することにカタルシスを得られる設計となっています。

ローグライク要素にハマれれば良作

ローグライクとはいえ、不思議のダンジョンシリーズのように「剛剣マンジカブラ+99でどんな敵も一撃だぜ!」みたいな分かりやすい強化要素はなく、徐々に自己強化を繰り返していくという感じで、豪華なグラフィックに比べてプレイングは割と地道です。イメージとしては…

1.素材を集めながらステージを攻略する

2.ちょっと敵が強すぎんよ~

3.拠点に戻って自己強化!

4.カスが効かねえんだよ(無敵)

自己強化と言っても派手に強くなる訳ではないので、目に見えて強くなるには結構な周回が必要になります。よってローグライクにありがちな「同じダンジョンを繰り返し潜る作業」感は否めませんが、ステージ内で入手できる個性的な武器もランダムなので、都度変化を楽しめますし、「えっこのボスにこの武器めっちゃ相性いいやんけ!」みたいな新しい発見もあることでしょう。

ただし武器の性能もそれなりに格差があるので、いつまで経っても目当ての武器が出ず、大して強くない武器で延々と進まされる…なんてことも起き得ます。まあその辺も含めてローグライクの魅力ではありますが。

死に覚えゲーだった

とはいえ「コレがあれば誰でもクリアできるよ!」みたいな無双できる救済要素はない(凍結は強いけど)ので、結局のところ難所はプレイヤーの腕で乗り越えていく必要がある、いわゆる死に覚えゲーに該当します。

この辺は昔ながらのゲームをリスペクトしてる感がありますが、それ故にアクションゲームに慣れた人で、かつ繰り返しプレイして困難に立ち向かうのが好きな方向けのゲームに仕上がっています

人を選ぶ作品であるのは間違いありませんが、逆にココにハマることが出来れば、嬉々として地獄に堕ちて鬼を屠る毎日を過ごすことが出来るでしょう。僕はそうでした。

独特の世界観と描写が素晴らしい

本作の舞台は地獄なので、全編通しておどろおどろしい作風なのですが、浮世絵風のグラフィックが世界観を一層強調させており、非常に雰囲気が出ています。特に背景で鬼達による営みが描かれ、正しく地獄絵図が繰り広げられているステージ2は圧巻の一言。

敵キャラも不安を煽られる個性的な魑魅魍魎が多数在籍しており、とりわけ遊郭を舞台としたステージ4は「寄生獣みたいに顔が割れて突進してくる般若の面」「三味線の音と共に謎の光弾を飛ばしてくる芸者の姿をした妖怪」など、ちょっと病みを感じるデザインが目白押しでオススメです。

すごい見辛い

これは個人的にトレーラーの時点で懸念していた事なのですが、素晴らしいグラフィック描写と引き換えに、キャラクターなどのオブジェクトがかなり見づらくなっています。

背景がガッツリ明るいのが要因なんでしょうが、自キャラより敵のプライオリティ(オブジェクトの優先順位)が優先されているのが悪さをしてる感もあります。デカい敵と対峙してる時は特に酷く、土蜘蛛戦なんかはしょっちゅう自キャラを見失うので、知らない間に大ダメージを受けてたりします。

マブカプみたいに「▼1P」とか出れば良かったかもしれないですね。

初代「月風魔伝」要素は薄め

初代プレイ済みの身としては、たとえ老害と罵られようとも、「守り太鼓(※1)はどんな風になってるのかな」とか「龍骨鬼が出てくるってことは独眼独頭(※2)とかも立体化されるのかな」とか、初代リスペクトやオマージュに期待したものです。

※1→「力」という文字を飛ばして攻撃する奇妙奇天烈な武器。

※2→一つ目生首のボス敵。コナミワイワイワールドにも強めのザコ敵として登場していた。

しかしいざ蓋を開けてみるとそこにいたのは、鞭で妖怪を調教し、火縄銃で鬼のどてっ腹に風穴を開ける月氏の姿でした。戦場を回転(しかもずっと無敵)しながら跳ね回る初代月風魔の姿はどこにもなかったのです。

…とはいえ、初代はパっと見の印象よりずっとアバンギャルドな要素が多かったので、終始真面目で暗い最新鋭の月氏には似つかわしくないと判断されたのかもしれません。

こんな書き方をしていますが、月風魔の挙動はいちいちカッコイイので、見ていて飽きません。傘で「殺」決めた時なんか最高にクールですよ。

でも見たかったなあ、3D描写で「力」飛ばしてるところ。

まとめ

「アクションゲームに慣れている」「似たステージを繰り返し遊ぶのが苦痛じゃない」という適性が必要になりますが、ハマる人はどっぷりハマれる作品となっています。何よりswitch版はピーチ姫1枚買えばお釣りがくるリーズナブルさですからね。値段相応かそれ以上の価値は間違いなくあると思います。

さあ、あなたも共に月風魔となり地獄へ身を投じましょう!そして平家の恨みを晴らすため源頼朝を討つのです!

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