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【TOLOPANの真髄に迫る vol.34】「パン職人だからこそ、お菓子を作る。」

日本語でいうと、お菓子。
外国でいうと、スイーツ、ガトー。

お菓子は豊かさの象徴だ。

そしてその言葉には、甘味という
ヒトを病みつきにする魔力を持っている。



お菓子というと甘いものを連想するが、
「サレ(塩)味」のお菓子も存在する。

日本のサレ味の代表は、せんべいやおかき。
お菓子というよりおつまみのイメージが強いかもしれないが、主な材料はお米。お米の糖分と塩気の塩梅がうまいから、サレ味のお菓子だといえるだろう。

外国のサレ味の代表は、ケークサレ。
砂糖を使わないことが多いが、それでも甘味もあり、香りも良く食感や酸敗臭も考慮されている。そのおかげで、甘味によるものではない、豊かな状態が生まれる。


この豊かな気持ちになるスイーツを、
何故パン屋であるトロパンが作るのか。

これはパン職人である僕のエゴだ。
製パン基礎知識に加え、別のアプローチでパン作りをやりたい。つまりは、パンに繋げるためのお菓子作りや料理をしている。

これはスポーツ選手の練習方法と似ている。選手が主な競技に繋げるために、別のスポーツを練習に取り入れているのと同じ考え方だ。


「製菓製パン」と言う言葉があるように、スイーツとパンは近いように思われるが、実際は全くの別物。全然違う畑なのだ。

これは僕の主観だが、
スイーツは「加工」で魅了するものであり、
パンは「育て方」で魅力するものだと思う。

パンは加工硬化と構造緩和で生き物を育て、最終の焼成段階でそれが味と香りになり、育て方の良し悪しが顕著にでるものだ。

畑違いのものをやる時に、一番気をつけなくてはならないこと。それは、自分の真の目的を定めること。真の目的を失わずに真剣に取り組み、気づき、核心のところで達成させる。これは絶対に忘れてはいけないことだと考える。



トロパンでは、現在週に14種から15種ほどのお菓子を作っている。このお菓子作りからたくさんの発見と学びがあるものだ。

お菓子屋さんでは当たり前にやっているだろう、マドレーヌの仕込みの1つ。砂糖にオレンジの皮を擦り合わせる作業。これも実際にやってみて初めて気づくことがあった。
一見どうってことない作業にも思えるが、この作業があるからこそ、香りと浸透圧により香りが染み出ることがわかり、一つ一つ味見をしながら香りの出方の上品さに感動し理解することができた。


現在トロパンでは、塩釜玉ねぎでオニオン塩を作っている。オーブンで一時間半常温で半日置いて作る、こだわりのある塩だ。この塩のおかげで、砂糖が入らない生地に対して旨味を作り出すことができる。玉ねぎ由来の果糖を含む塩が作ることで、果糖透過酵素により酵母の細胞内に取り込みエネルギーや生成物にする速度をあげることができる。

カステラやギモーヴを作ると、卵黄や卵白の凝固点を意識的に見ることができる。卵白を少しパンに入れることで、パサつかない量の気泡の安定性などを知ることができた。卵黄や卵白に関する理解が深まったことは、さらにカスタードクリームにも活きた。

マフィンやキャロットケーキでは乳化、FMIのマジミックスで乳化の様子を見ながら出来るのがよく、更にFMIのブリクサーはかき下ろし機能も付き仕込める優れもの。それをパンではボワロン社の良いピュレを乳化させ、ピュレの量が上げられ味と香りがハッキリと出るようになった。



「職人」である限り、テレビでも音楽でも全てのものから職に結びつけたいと思う。

職人とは自由の世界だ。
世界の中を自由に飛び回れるスリルがある一方、
どんなときでも1人の職人としての責任が伴うものだと僕は思う。

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