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【TOLOPANの真髄に迫る vol.33】トマト香る太陽のガーリックトースト

ガーリックといえば、
イタリア料理を思い浮かべてしまう。


そもそもガーリックはエジプトから始まり、
西アジアや地中海が原産なことが多い。

この食欲をそそる刺激臭は、
いまや世界中で使われている。

ここまでの「強さ」を持っているもので、
広く受け入れられているものは
他には中々ないように思える。

イタリアではペペロンチーノ、トマトソース、
スペインでもパンコントマテ、アヒージョ等
本当に数々の名作に使われている。

気付くのは上記のものだけでも、
食材が本当にシンプルであること。

そして強さを持っているのに、
実はメインではない。
優秀な脇役なのだ。

その料理にあわせた切り方や調理の仕方で香り、旨味の出方が変わってくる多重の性格。この性格のおかげで、出したい食材を上げることができる。



さて、今度はトーストの話。
トーストで1番大切なことは、クラム部分をさらに焼く事で生まれるメイラード反応とキャラメル化の甘味と複雑な香り。そして炭化とは少し違う焦げ臭で水分を含んでいたクラムの表面の水分を蒸発させ食感と香りのマリアージュ。

ではトロパンのガーリックトーストはというと
残ったバゲットをスライスするものではない。ガーリックバターにあわせた1人用100gのバゲット生地を作り9分焼成の時に出してナイフで切り込みを入れて中にも外にも塗るというやり方だ。ガーリックバターなしでの100gは1人でも目一杯だが、ここでこそ食欲のそそる香りとトーストの食感が肝心になり100gを1人用とすることができる。


ガーリックバターに関しては、イタリアというよりはアジアの酸っぱ旨いを意識した。というのも理由があり、まず1つはカゴメのトマトパウダーを軸にトマトと相性が良いということ。そしてもう1つは、働いている方もよく買いに来られるトロパンなので、働いている方でもガーリックトーストを食べられるものにしたいと思ったから。

材料はバター800g、ブラックオリーヴ200g、グラナパダーノ120g、トマトパウダー120g、アンチョビ40g、ニンニク(みじん)40g、レモンジュース64gで作る。これは酸と旨味を意識した配合だが、好みで旨味と甘味にしても塩味と旨味、苦味と旨味に変化させることは可能だ。酸味と塩味の関係性やバターの役割、食材の量、調理法などで
『個性のバランスをとる=出したいものだけ強調する』
になると考えている。


生地は佐賀県産小麦を100%で香りというよりは、歯切れの良い生地に仕上がる粉という理由で使用している。
サワー種、ルヴァンリキッドを使う目的は、少しの酸味を感じる生地にしてガーリックバターとの違和感が起こらないようにするため。オレガノを練り込む目的はトマトとの相性、旨味と香りの後の爽やかな抜けの香りのためだ。

トーストとしては、生地で焼いているのでクラムではなくクラストにトースト感を持たせたい。クラム部分が多く甘味を感じやすいからこそ先をとがらせる成形にして、甘味、酸味、苦味、旨味、塩味のバランスをとり、一番出したいトマトの個性に脇役のガーリックが寄り添うようにした。

バターがしみ出た中心のクラスト、底のクラスト部分は揚げ焼きを期待して始まりと終わりにトースト臭をあたえることにした。




トマトの旬は春から始まる。
新緑の力ある季節に人が躍動する、
赤色の太陽のガーリックトーストを
かじりながら歩くそんな季節は
自然と口笛が笑い出します。

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