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【TOLOPANの真髄に迫るvol.44】ルセットの基準となる五味の「酸味」について

甘味やうま味が好きなのは、
子供から老人まで皆そうだと思う。

この料理、このドリンクに少し酸味が欲しいと
思うようになった時、大人になったのだと思う。

これはある程度食経験を積むことで徐々に好ましく感じる学習された舌で感じる味覚である。まずタンパク質が腐敗した時まだ未熟な果実を食べた時に脳に伝えるシグナルが「酸味」となっているためだ。

子供の舌は敏感で素直な意見を言うから.味見を子供にしてもらうとよくわかるという理屈も「甘味」「うま味」の話である。「酸味」と「苦味」をアクセントに加えたものは子供では判断ができかねるだろう。

酸味が引き起こす物質とは酸に含まれる水素イオン。酸の種類によって酸味の強さ、風味、香りは異なるが「すっぱさ」は共通である。

他の味との相互作用としては「塩味」以外は抑制され「塩味」に対して増強する効果を持っている。


ではよく耳にする「乳酸」や「酢酸」や「炭酸」はパンではどのように生まれていくのか。

まずはどの酸も発酵中におけるPH(ペーハー)の低下=酸化から生まれている。

PHの低下は脂質の酸化、アルコールの酸化によってできる「酢酸」、酵母の生成する炭酸ガスの溶解による「炭酸」、でんぷんの酸化による「乳酸」の生成その他の発酵により生成される酸類とされている。

パン生地における「酸味」を出したい時にはまず酵母菌の増殖を好気的にしっかり終え、アルコール発酵、乳酸発酵というモードに切り替え嫌気発酵にしていく事が大切になる。「乳酸」や「酢酸」をバランスよく入れたい場合にはサワー種のように温かいところで好気的に増殖を行い、低い温度で嫌気に行い酢酸を生成し、また温かい所で嫌気的に乳酸を生成する手順を踏む。温度の上げ下げによってパン生地にも複雑さや酸化の調整が上手くいく。「甘味」や「うま味」を中心味とした奥行きや深さに「酸味1〜2」というのが有効的だと僕は考える。

また、「酸味」は夏場は特に有効だと考えている。酸味が脳で記憶され、唾液の分泌が促される「レモン」や「梅」や「柑橘類」に含まれるクエン酸、こういった果実系の酸は温度に左右されづらく、焼いた後にも残りやすい。しかしヴィネガーのような酸味は揮発しやすくなっているため、味と香りの出方が変わってしまう。

こうした酸味の特徴を理解した上で、五味を調整するのが大切だ。例えば、アメ色玉ねぎにラズベリービネガーを火を止めてから注ぐと絶妙な味わいになり、揮発させることでよりラズベリー感が上がり記憶での唾液分泌が行われ、甘味5、酸味2、塩味1で成り立つ。キャラメルを作る時なら、水やクリームではなくレモンジュースで作ると糖度は上がっているのにさっぱりした味わいに感じる抑制効果を利用したクイニーアマンが作れたりする。

「酸味」に関して、パン生地としては発酵でのPH低下を上手に利用し、温度と酸化の関係性を理解することが大切だ。副素材や味のバランスを考える時は、酸の効果を上手に利用し、「甘味」「うま味」を中心に、どの酸の種類のどの強度で感じさせるのかを考え全体をイメージすることが大切だ。

「酸味」は、間違いなく大切な味の一角になっているといえるだろう。

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