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「観光客」が帰る場所としての族

このnoteはPodcastから一部抜粋した書き起こしです、全編はPodcastからどうぞ。


自由意志と連帯

森口:SAIEN PROJECTはどちらかというとBLMに近い連帯の仕方っていうのを感じたのよね。一言で言えば自由意志で参加可能で、自由意志で脱退可能なものやねんな。
もっと言えばちょっと前からこの話をしているけど、マイルドヤンキー的なちょっと強制力のあるような入退室のし辛さがないと一過性のもので終わってしまうような気がしたな。

奥田:その話はわかるけど難しい問題やねんな。いわゆる村社会的なコミュニティにすればいいのかという話な気もして。ムラ的な価値観に戻すでも、BLM的でもない第三の道を見つけたいようには思ってて。

森口:家族でもなく、国家でもないような。。共産主義のような階級での所属でもなく新たな核を見つけたいという問題意識はわかる。

奥田:じゃないと俺らはマイルドヤンキーになるしか幸福になれないんじゃないかという笑、でもまあそれだけしかないのはちょっと悲しいじゃないですか笑

真部:まあ基本的な問題意識としては、今出たみたいなものではない新しい連帯の形はどこに重点を置くのかってことかな?

奥田:そう、でその先に考えないといけないことも何かあるんやけどそれが不明瞭なところもあって。ただ課題感というか焦燥感みたいなものは明確にあるんですよね。ただそれがどこから来ているかっていうと近代デザインの合理化最適化を突き詰めた反省があるかなと思ってて。それこそ、リレーショナルアートの話とかはきっとこういう問題意識を批判しているんじゃないかという気もしてて

リレーショナルアートと包摂され得ない領域

真部:ニコラ・ブリオがやっていたようなギャラリーの中で食べ物を振る舞うような話と、それに対してクレア・ビショップが言ってたような、なんだっけ、、、エルネスト・ラクラウとシャンタル・ムフが言っているような、他者をどんどん包摂していくようなプロセスの話をしていて。

森口:誰でもいうよなそういうこと笑

奥田:だいぶ批判的やな笑

真部:そんな話の上でサンティアゴ・シエラの作品を提示してミクロ・ユートピアではダメで、そこに対してのアートワールドから一番遠い存在として不法就労者を金銭で連れてくるという。


奥田:そこで露悪的に晒された関係性っていうのは、現実にあるマテリアルをとってきてるなじゃないですか。そのマテリアルは現実であるが故にすごく、どうにかしないとあかん感が出ちゃうんですよね個人的には。

村人、旅人、観光客と偶然性

奥田;包摂し得ない他者がいて、そこはもうムラ的に別れてもいいのか、シマ的に交易をするような関係性であったほうがいいのかってどう思います?

真部:そういう二項対立ではない連帯のメタファーとしてのシマって千葉雅也だよね。


奥田:あ、そうなんや、前の時に言ってよ笑

森口:まあそうなんやけど、、、それはそうやねんけど、、、うん。

森口:いやでも、千葉雅也の文脈に回収したらあかん気がしてん、その時には笑

森口:東浩紀の「観光客の哲学」と「動きすぎてはいけない」の接点やと思うわ。観光客の哲学にも、特定の共同体に属し続ける村人と、渡り歩き続ける旅人がいて、そのどちらでもない観光客っていうのを示してて。まあ今の話はそれでもあるわけやんな。


真部:確かにね。

奥田:その場合の戻る家っていうのはどんな場所なんだろうね。

森口:東さんの話では、、これは俺またあんまり言いたくないねんけど笑、観光客の戻ってくるところは家族だって言ってて。これは家族っていう概念を結構いじってて、一つは入退室の不自由さと後は人間の合理的な部分を超えた偶然的に拡張されたことを指してて。そもそも親にとって子どもは偶然性で現れるものやし、もう一つぐらい家族の特徴を挙げててんけど、それらの特徴を持つ場所を観光客が戻ってくる場所にしようと本の最後に付けててんな。やとしてもそれを家族っていうのかはどうなんやろ、千葉さんはTwitterで「家族より族の方がいい」って言ってた笑

真部:千葉雅也の「動きすぎてはいけない」で一番好きなのは、後書きの最後に「本書を友人たちに捧ぐって」って書いてあってこれがめちゃくちゃ熱いなと思ってて。この本って「私たち」っていうものを再生産する、産むということに対して結婚とか家族ではない別のあり方を模索している本で、それは筆者のパーソナリティに寄るところではあるんやけど、だから最後にこの文章を入れたのかなと思う。

真部:その友人という存在の偶然性みたいなものは重要やと思う。

奥田:なるほど、偶然性か、それはなんか面白そうだね。

(次回に続く)


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