日記2022/12/19

今日は量子コンピュータに関する特許公報を読んでみた。(正確には公開特許公報と特許公報は異なるが、内容は同じでどちらも出願人が出願した内容が公開される。)

特許公報はJ-PlatPatで閲覧できる。もちろん無料でユーザ登録等も必要ない。

早速、以下の公報を読んでみた。

特開2022-185116

(57)【要約】      (修正有)
【課題】測定ノイズの影響を低減する量子測定デバイスの校正方法、装置、電子デバイス、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体及びコンピュータプログラム製品を提供する。
【解決手段】方法は、量子コンピュータのクロストークノイズのオーダを決定し、クロストークノイズのオーダに基づいて校正回路集合を決定し、校正回路集合中のそれぞれの校正回路に基づいて標準的な基底量子状態をそれぞれ作成し、それに基づき、標準的な基底量子状態毎に、測定デバイスを所定の回数繰り返して作動させて標準的な基底量子状態を測定し、得られた標準的な基底量子状態のそれぞれに対応する所定の回数の測定結果を統計して校正データセットを取得し、量子コンピュータのハードウェアトポロジー及び校正データセットに基づいてグローバルジェネレータを決定し、グローバルジェネレータに基づいて校正行列を構築して、校正行列に基づいて量子コンピュータの測定結果を校正する。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0200

なになに、一見しては何のことやらさっぱりだ。「測定ノイズの影響を低減する」と書いてあるから、量子誤り訂正の話であることは何となく分かるが、「クロストークノイズのオーダ」が出てきた時点でわからない。(難しい文献を引き当ててしまった・・・)

段落[0001]~[0003]には課題が書いてある。ノイズを低減する必要がある、と書いてあり、特に目新しさはない。

段落[0004]~[0009]はここでは読み飛ばしてもいいだろう。請求項について改めて述べているにすぎない。

段落[0010]~[0013]は但し書きなのでこれも読み飛ばしていいだろう。

段落[0014]からが本題である。

段落[0016]に「変分量子固有値ソルバーアルゴリズム(VQE:Variational  Quantum  Eigensolver)」というアルゴリズムが出てくる。知らないので書いてある範囲でしか分からないが、化学シミュレーションを行う量子アルゴリズムであり、期待値Tr[Oρ]の推定するのだと読める。
期待値Tr[Oρ]が何かというのは段落[0018]の式(1)に書いてある。対角行列Oの各対角成分O(i)とρ(i)の積の和だとわかる。ρ(i)は出力結果がiだと測定される確率のようだ。つまりTr[Oρ]はOに基づいて計算される何かしらの期待値だ。
Oがいまいちわからないが先に進む。

段落[0022]には、測定ノイズが生じるためにρ(i)に偏差が生じて、結果としてTr[Oρ]を計算するときのエラーにつながる、と書かれている。課題が書かれている。

段落[0023]からしばらく一般的な校正方法が書いてある。数式やテンソルはアレルギーがあるので飛ばし飛ばし進む。

するとここで、段落[0032]にクロストークという言葉が出てくる。冒頭の「クロストークノイズ」の基だろう。グーグルで「クロストーク」を検索すると以下が出てきた。

日本語では「漏話」と呼ばれる現象らしい。「他の信号配線に影響を与える、他の信号配線からの影響を受けるという信号品質劣化」とのこと。
これで何となくだが「クロストークノイズ」は信号線同士の影響によるノイズのことだと分かった。

本文にもどる。

段落[0037]には「もちろん、繰り返す総回数Nshotsが多いほど、ノイズ行列Aの記述が正確になる。ただし、製造すべき校正回路が多く、計算コストが大きくなる。」と書いてある。行列A=ノイズ行列A=校正行列Aだと分かった。
ようするに、行列Aはノイズを表した行列であって、行列Aを用いて量子ビットの校正ができるが、行列Aの精度は試行回数Nshotsに依存するということだろう。

段落[0043]まで読むと話の本筋が見えてくる。行列Aを作る際の課題ともいえる内容である。

 テンソル積モデルと非構造化モデルを比較すると、量子測定デバイスの校正の場合に存在するトレードオフ関係が明らかになり、すなわち、量子測定クロストークを高精度で記述するには、より多くの校正回路を作成し、より多くの計算リソースを消費する必要がある。一方、テンソル積モデル及び非構造化モデルは、このトレードオフ関係の2つの極端を表しており、テンソル積モデルでは、測定クロストークが全く考慮されておらず、作成すべき校正回路の数が最も少なく、非構造化モデルでは、全ての可能な測定クロストークが考慮されており、作成すべき校正回路の数が最も多い。

つまりテンソル積モデルと非構造化モデルでは両極端なので、いいとこどりをしたいのだろう。

段落[0044]には冒頭にも書かれていた構成が書かれている。

したがって、本開示の実施例によれば、量子測定デバイスの校正方法が提供されている。図3に示すように、この量子測定デバイスの校正方法300は、量子コンピュータのクロストークノイズのオーダを決定すること(ステップ310)と、クロストークノイズのオーダに基づいて、校正回路集合を決定すること(ステップ320)と、校正回路集合中のそれぞれの校正回路に基づいて標準的な基底量子状態をそれぞれ作成し、これにより、標準的な基底量子状態ごとに、測定デバイスを所定の回数繰り返して作動させて標準的な基底量子状態を測定すること(ステップ330)と、得られた標準的な基底量子状態のそれぞれに対応する所定の回数の測定結果を統計して、校正データセットを得ること(ステップ340)と、量子コンピュータのハードウェアトポロジー及び校正データセットに基づいて、グローバルジェネレータを決定することであって、グローバルジェネレータはクロストークノイズのオーダに基づいて決定された量子コンピュータのクロストークノイズを表すこと(ステップ350)と、グローバルジェネレータに基づいて校正行列を構築し、校正行列に基づいて量子コンピュータの測定結果を校正すること(ステップ360)とを含む。

「クロストークノイズのオーダ」の意味は(私は)まだ分かっていないが、何となくやりたいことは分かってきた。
「クロストークノイズのオーダ」を決定して、それに基づいてうまいこと「校正データセット」を得て、ふむふむ、、、ぐ、「グローバルジェネレータ」とはなんぞや。また分からない単語が出てきた。そのまま読めば「クロストークノイズ」そのものを示すように読める。
では「グローバルジェネレータ」はどう計算されるのかというと、段落[0084]~[0086]あたりを見ると書いてある。①「クロストークノイズ重み係数」及び②「ローカルジェネレータ」を用いて反復して更新する値のようだ。
①「クロストークノイズ重み係数」は、段落[0048]~[0052]に定義がある。直観が分からないがここでは先に進む。
②「ローカルジェネレータ」は、段落[0052]~[0060]を見ると式(9)のことであり、「直観的には、giは、「標準的な基底量子状態|i>が入力されると、ビット文字列i、又は完全に反転されたビット文字列が出力される」というイベントを記述する。」とのこと。

また、段落[0046]をまるっと読むと、「クロストークノイズのオーダ」とは、関連付けられている(影響しあっている?)量子ビットの数のことだと読める。考慮すべき最大のオーダKを作業者が指定してもよいとのこと。
これでやっと全貌が見えた。

直観的な理解ができていない部分もあるが、一通りの流れは理解できたので、ここまでにしようと思う。

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