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ホバークラフト作ってみたよ!【第12話】

このお話は、物語でなく実話です

モノづくりが好きな人は楽しめると思います。何を作ったかというと、パーソナルホバークラフト…しかもキャビン付き…???そんなの見たことないんだけど…それもそのはず、このパーソナルホバークラフトは、80年代のお話しなんです。今回はその12回目です^^


INDEX

  1. 自動車屋が創ったホバークラフト

  2. “ほな、やりまひょか”

  3. “なかなかイイじゃないか” 

  4. 強制操舵 ・ 非常ブレーキ、‟何やそれ ?”

  5. 自動車エンジニアが設計したら、エアクッションヴィークルはこうなる

  6. スタイリングだけじゃなく、センスが良いカラリングで行こう

  7. 1年がかりの 「設計承認」

  8. 放映日ギリギリのきわどい撮影

  9. 久米島 ・ イーフビーチが呼んでいる

  10. 撮影日がシェイクダウン航行 “トホホ‥‥(汗)”

  11. マーケティングもイノベイティブに

  12. ものすごいパブリシティに、業界も騒然

  13. 初めて見るエアクッションヴィークルに大興奮

  14. “カタログもハイセンスね”

  15. 世界に144個しかないジッポー SENSOR ACV 300 S ライター

  16. 販売会社設定に全国へ旅ガラス

  17. 海を汚さないエンジンオイル

  18. これぞ逆転の発想 ・ エンジン倒立搭載

  19. ‟ブルネイ王室ご用達~ !”

  20. トランポだってお洒落に

  21. レースに初出場、ノーマル艇でトップ

  22. “フロリダで生産して、アメリカとカナダで売らせてくれ”

  23. アメリカへ旅立った SENSOR ACV 300

  24. フロリダ州の新天地で

19.”ブルネイ王室ご用達~!”

 SENSOR ACV 300 の正規ディーラーを募集したとき、日本を代表する大手百貨店のマレーシア法人と契約した。日本から東南アジアへの輸出と販売を独占する契約で、期待が膨らんだ。
 直ちに、輸出1号艇になる SENSOR ACV 300 U をオーダーいただき、マレーシアの首都クアラルンプールの店で展示会を開催した。


東南アジアへ!

  何と、これをご覧になったブルネイ国王から即決購入を頂いたと連絡が入り、“エッ! ”という嬉しさと緊張感あふれる衝撃が走った。マレーシアの新聞にもニュースが掲載されて、まさに、想定外も想定外、どのようにしたらよいか一瞬迷ったほどだが、大チャンスなので全力を挙げて対応した。

 Negara Brunei Darussalam (ブルネイ ・ ダルサラーム国) は、東南アジアのボルネオ島北部に位置する立憲君主制国家で、王室が絶対的な権限を持っている。石油と天然ガスの世界的な産出国で、経済は豊かだし、気候は良いし、平均給与は東南アジア一番、個人所得税は無く、教育費 ・ 医療費も無料 ・ 金利も安いという夢のような国だ。


当時の新聞記事

 購入する SENSOR ACV 300 U は、王子が王宮の庭で乗られるんだって。モーターサイクルもクルマもたくさん持っていて、乗り物好きらしい。ブルネイ国王が一目惚れして即決購入された訳だ。

 しかし、ACV (エアクッションヴィークル) は、細かい方向制御は出来ないしブレーキング距離も遥かに長い。王宮の庭は芝生張りという話で、普通の地上や水上よりもっとスピードが出る。芝生や圧雪上などは、標準スピード 38knot (約 70 km/h) を遥かに超えて、100 km/h 以上になってもおかしくない。 ‟そりゃ危ないだろ” とディーラーを通じて 問い合わせたら、“No Problem (問題無い)” だって。一体どんな広さの庭やネン ? 東京ドームが4つくらい入って周囲はエアバッグでガードしてんのかい ? 
 ともあれ、納品にタイミングを合わせてドライビング & メンテナンスコーチにファクトリードライバーを派遣することになった。彼は、ドライビングテクニックが秀逸なのに加えてメカニックもできるから、最適任者だ。ふだん撮影 ・ 試乗会 ・ レースなどで非常に良い仕事をしてくれているから、ご褒美も兼ねている。
 日本からは、シンガポール経由でブルネイ首都のバンダルスリブカワンに入る。シンガポールで1泊してからブルネイへ飛ぶが、ひとつ心配事が頭をよぎった。ブルネイでは飲酒が禁止されていると聞いたが、ドライバー君は大酒豪だ。シンガポールで酒を買ってコソッと持ち込み、空き瓶を持ち帰ったのかは、帰国報告のときに聞かなかったな (笑)。

 SENSOR ACV 300 U のドライビング & メンテナンスコーチも滞りなく済んだと報告が入った。今後の補修部品やメンテナンスはどうするか聞いたら、補修部品が必要なときは供給して欲しいが、メンテナンスは、王宮内に充分な工場と機械設備があり何人もメカニックがいるので “No Problem” だって。常識の水準が違う話で、またまた衝撃が走った。で、酒は ‟No Preblem” だったのカイナ ?

納品された2シータのACV300 U

20.トランポだって、お洒落に

 私はノリがいい性質 (たち) だと解かっているから、スタイリッシュな SENSOR ACV 300 を輸送するトランスポーターだってお洒落に行こうと画策した。当社の乗用車系特装車事業で協業した腕のいい特装車メーカーも、技術があるのに加えて、社長が ‟まず造っちゃえ” とノリがいい性質なので、気が合ったし行動が早かった。「類は友を呼ぶ」 ってやつだね。

トランポ全体像

 車のトランスポーターは、荷台に傾斜板を装着すれば自走で乗れるけど、SENSOR ACV 300 を初めどんなホバークラフトだって、自走してトラックの荷台に乗せるのは無理だ。
 “じゃ~荷台が地面へ降りてくれば良いじゃないか” と新機構を開発した。荷台が油圧で地面まで降りて水平になれば、SENSOR ACV 300 が自走して上に乗れるから、そのあと荷台が油圧で所定位置へ戻れば良い。今でこそこの機構のトランポがあるけど、造った当時は画期的な新機構だった。

後方にせり出してから…
水平になってホバークラフトを出し入れする機構、当時は画期的だった

 展示 ・ 納品 ・ レースなどで SENSOR ACV 300 を輸送するときは、 時間が掛かっても遠回りになっても構わないから、繁華街のメインストリートを通るように指示していた。今の広告トラックの元祖だね。東京では銀座メインストリートは、新橋から神田までゆっくり走るようにしていた (逆もあり)。 この作戦は非常に効くね、「シナジー効果 (相乗効果)」 ってやつだ。多くの歩行者や対向車が、“何アレ、かっこイイ” とばかり見つめ、外人観光客がカメラを向けてくると、ドライバー君から報告を受けた。

 そ~か、最近ドライバー君の髪型やファッションがお洒落になったのはこのせいだったか ! 真面目な話、人間は人に見られたりカメラを向けられていると、自然に顔付きや振舞いが良くなるという。いいモノを見たり接していても同じ効果があるのは真理だ。で、ドライバー君、GFは出来たの ?

 SENSOR ACV TRANSPOETER (SAT) と名付けたお洒落トランポは、ベース車が日本のトラックメーカー4社 (いすゞ ・ 日野 ・ 三菱 ・ 日産) の2ton標準車ならどれでも特装出来て、オール込みで 850万円ほどだった (ベース車の価格によって差異がある)。

 SENSOR ACV TRANSPOETER (SAT) は、ヨーロッパ製の高級サルーン並みの価格だし、積載する AENSOR ACV 300 S が3艇も買える価格だったので、あまり売れなかったけど、SENSOR ACV 300を世に知って貰うために、大きな 「シナジー効果」 を果たしたから存在価値があった。

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製品化してからの販路が国内にとどまらず、海外にもなっていきます、周辺に海がある国などでは、きっと海の上も陸も走れるホバークラフトは身近で未来的な乗り物だったのでしょうね、日本と異なり、海外の富豪は次元が異なるレベルでの富豪も多いので、このようなものはリーズナブルなお買い物だったのかもしれませんね…このお話、面白かったらぜひ”スキ”をいただけると幸いです。ではでは、次週もお楽しみに!

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