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ホバークラフト作ってみたよ!【第7話】

このお話は、物語でなく実話です。

私はこのシリーズで口をはさむつもりはありません、モノづくりが好きな人は楽しめると思います。何を作ったかというと、パーソナルホバークラフト…しかもキャビン付き…???そんなの見たことないんだけど…それもそのはず、このパーソナルホバークラフトは、80年代のお話しなんです。


INDEX

  1. 自動車屋が創ったホバークラフト

  2. “ほな、やりまひょか”

  3. “なかなかイイじゃないか” 

  4. 強制操舵 ・ 非常ブレーキ、‟何やそれ ?”

  5. 自動車エンジニアが設計したら、エアクッションヴィークルはこうなる

  6. スタイリングだけじゃなく、センスが良いカラリングで行こう

  7. 1年がかりの 「設計承認」

  8. 放映日ギリギリのきわどい撮影

  9. 久米島 ・ イーフビーチが呼んでいる

  10. 撮影日がシェイクダウン航行 “トホホ‥‥(汗)”

  11. マーケティングもイノベイティブに

  12. ものすごいパブリシティに、業界も騒然

  13. 初めて見るエアクッションヴィークルに大興奮

  14. “カタログもハイセンスね”

  15. 世界に144個しかないジッポー SENSOR ACV 300 S ライター

  16. 販売会社設定に全国へ旅ガラス

  17. 海を汚さないエンジンオイル

  18. これぞ逆転の発想 ・ エンジン倒立搭載

  19. ‟ブルネイ王室ご用達~ !”

  20. トランポだってお洒落に

  21. レースに初出場、ノーマル艇でトップ

  22. “フロリダで生産して、アメリカとカナダで売らせてくれ”

  23. アメリカへ旅立った SENSOR ACV 300

  24. フロリダ州の新天地で

9.久米島 ・ イーフビーチが呼んでいる

撮影風景

久米島は沖縄本島の約100km西に位置し、サトウキビ農業や漁業がおもな産業だが、スキューバダイビングを初めとしたマリンスポーツ観光でも魅力的なところだ。私自身も、息子や娘がダイビングライセンスを取ったときも、この久米島沖でダイビングを楽しんだ。

  のちにカリブ海のバハマへ娘とダイビングに行ったが、自然の景色の美しさ ・ 海中のサンゴ礁の美しさ ・ 海底の明るさ ・ 豊富な魚種と魚の数は、久米島のほうがはるかに素敵で、期待して行ったバハマはとうてい及ばない。沖縄の海は、透明度が高くて美しいダイビングスポットがたくさんある。

  ANAイーフビーチホテルからすぐ浜に出ることが出来て、干潮時は、綺麗な砂浜が 1km 以上あるんではないかと思うほど遠浅で海へ向かって広がっている。満潮時だって、そこらの砂浜の数倍の面積は優にある絶好のロケ―ションだ。

  砂浜から海へそのまま行ったり来たり自由に航行できるエアロクルーザーには、うってつけの場所だし、空撮しても、淡いブルーグリーンの海とサンドベージュの砂浜のコントラストが素晴らしい。


マリンスポーツキャビンでのメンテナンスの様子

  この浜に面したANAホテルの敷地に友人がスポーツクラブを経営していて、スキューバダイビングを初め各種マリンスポーツのインストラクションサービスをするキャビンがあった。撮影時には SENSOR ACV 300 をメンテナンスするパドックとして提供してくれた。

 ランチなども浜で海鮮バーベキューを提供してくれるなど、心がこもったありがたいもてなしでハードな仕事をする撮影クルーをサポートしてくれた。キャビンの2階はジャグジー付きの露天風呂になっていて、黄昏れ時に大海原を眺めながら入浴するのは、この上ない至福の一時だった。

 それだけじゃない、スポーツクラブのスタッフたちが、近くのマングローブ林にガザミというカニを獲るカゴを仕掛けていて、夕食前に行くと大きなガザミがたくさん掛かっていた。いろいろな種類のカニを食べたけど、ガザミが1番美味しかったな。みなさまのお陰で、楽しく内容の濃い撮影ロケができた、感謝 !

遠浅の砂浜はホバークラフトが似合う

10. 撮影日がシェイクダウン航行 ”トホホ・・・・(汗)”

  SENSOR ACV 300 S & U の撮影は、同じ久米島イーフビーチで5月 (S) と翌2月 (U) で2回ロケした。いや~驚いたのは、2月でも海に入って泳げる。もともと好きだった沖縄が、もっと好きになった。

迫力あるシーンの空撮…ドローンの無い時代にどうやったんでしょうね^^ ほんと

 撮影は、陸上撮影はもとより海上は伴走船からと空撮、“どうやって空撮したか ?”って ? それは裏話中の裏話なのでここでは書けない、お会いして飲む機会でもあれば説明するね。

 007 ジェームス ボンドもびっくりの仕掛けがあったのだけど、“そんなモン無理だよ” なんて言ってないで、“どうしたら出来るか” というスタンスで多くの優秀な人が知恵を出し、かつ実践すれば、今まで不可能と思ってたことが実現するのだ。

撮影の一幕

 今だから言えるんだけど、実は、この撮影が SENSOR ACV 300 の本格的なシェイクダウン (初テスト走行) という無謀なことだった。 車などのいろいろな試作車を開発してきたが、シェイクダウンテストでは予期できないどんなトラブルが発生するかも知れないので、社員や第三者をを危険な目に遭わせられないから、いつも私が最初に乗り込む。

撮影の一幕

 私が創設した ESSO RACING TEAM のデビューレースでは (このときはプロドライバー)、あと半周で優勝というとき、シフトレバーのトラブルが出て3位に終わったこともあった。高速サルーンの試作車をシェイクダウンテストしたときは私が乗り込んだが、走行中にサスペンショントラブルがあって、箱根の崖下に落ちた可能性があった。さほど、シェイクダウンテストは重要な作業なのだ。

 空撮のカメラマン ・ パイロットとインスピレーション通信しながら、順調に撮影していて、もう終盤に差し掛かったころ、エンジンと推進ファンを連いで動力を伝達する太いコグドベルトが、 “ブチッ” と切れてしまった。やはり何かあるんだな~。遥か沖合で推進力を失い、泳いで曳航するしか術が無くなった。

 海中に浸かり、SENSOR ACV 300 S を泳いで押し始めた。 泳ぐ大変さより、水面でバタバタしていると、鮫の興味を引いて海中からガブッと襲われないかという恐怖心でバクバクだった。

 ジェットスキーがレスキューに来て牽引を始めたら、今度は、スカートが水で膨らんで船内に海水が逆流して沈没状態になった。もう背が立つところまで戻っていたので、また海中に入って船体を持ち上げセーフだったが、半没みたいになったら (浮力材が入っているので沈没はしない) ヤバイところだった。

 ただでさえ変わったことをすると、あちこちからウォッチされてるはずで (イーフビーチなら心配は少ないけど) プロジェクト中断の可能性だってあった。

試作機にトラブルはつきもの…

 コックドベルト切断と海水逆流による半沈没は、早期にトラブルが出たのでむしろありがたい。この出来事が、コッグドベルトの振動と発熱対策を促してエンジン倒立搭載に連がり、ユーザーマニュアルにも“牽引は後ろ向きに” と注釈を加た。これを日本語では 「怪我の功名」 という。

説明書に書かれた曳航方法…やってわかることもある

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今回は、一転沖縄のプロモ撮影のお話でした。バタバタしたものの、撮影は順調だったようですね…とはいえ、最後に壊れたのはご愛敬ということなのでしょうか。バブル時代ならではの、どこか明るい雰囲気を感じますね。

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