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老舗からSHINISEへ 〜ゼブラと老舗の意外な関係〜

「41.3%」

みなさんは、これが何の数字かわかりますか?

実は、この数字は全世界の創業100年以上の会社のうち、日本企業が占める割合なのです。

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この数字を見てもわかるとおり、日本は、いわゆる「老舗企業」が断トツで最も多い国なのです。

私たちは、米国西海岸から始まったムーブメントに呼応して、2019年11月からゼブラ企業のエコシステム構築に取り組んでおり(ゼブラ企業について、詳しくはこちら)、私自身

ゼブラ企業と老舗企業は、多くの類似性を持つのではないか。ゼブラ企業という概念は海外から日本に入ってきたが、
逆に、老舗という切り口をきっかけとして、日本から世界に新しい企業・経営のあり方を発信していけるのではないか

という考えを持っていました。

本記事では、
・老舗企業の実例として、明治2年創業(創業152年..!)、あんぱんの生みの親である木村屋總本店の7代目社長、木村光伯さん
・ゼブラ企業の実例として、創業9年(売上約40億円)、国内最高性能の注文住宅メーカーWELLNEST HOMEの創業者、早田宏徳さん
をゲストに迎えて行われたTokyo Zebras Uniteのイベントでの議論を踏まえながら、日本から世界にどのような発信を行なっていけるか考えていきたいと思います。

ゼブラ企業と老舗企業の共通点

イベントを通じて、ゼブラ企業と老舗企業で以下のような共通点があるのではないかと感じました。

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1.量ではなく、質を追い求めた成長

短期間で時価総額を最大化するユニコーン企業や現在の上場企業では、量的な目標・規模感が非常に重要視されています。
企業の性質を表す際に、時価総額や売上規模が重視され、経営者の集まりで比較し合っている景色がよく見られます。(上場企業の投資家向け説明会などでも、定量的な話題が中心となっています)

ゼブラ企業も、長期的観点に立った健全な量的成長を追い求めます。ただし、それと同じかそれ以上に、質的な成長を求めるという性格があると考えています。事業を通じた社会的インパクトをより追求し、株主のみならず多様なステークホルダーへの貢献・価値提供を行い、結果として売上・利益が向上していくという考え方です。

今回のイベントの中では、木村さんが「売上規模や組織規模といった量的成長よりも、従業員の物心両面での成長と充実や、パンの品質の飽くなき向上こそが、木村屋總本店が追い求めるものである」と仰っており、

また、早田さんも、自社の売上・組織規模の拡大以上に、日本全体での住宅性能の向上、持続可能なまちづくりが実現できるかこそが重要であると強調しています。

こんな議論をしながら、ゼブラ企業/老舗企業が、企業規模・資金規模を優位性として勝負するユニコーンや他の企業と伍していくためには、

長い時間軸で事業を営んでいくことにより、価値が拡大していく経営

が重要なのではないかということを感じました。

木村さんのお話でも、

「子供の頃に、親にその商品を買ってもらって馴れ親しみ、自分が大人になった時に、子供・孫にも買ってあげるといった循環が実際に起きている。
 長く愛される商品を作り、そうした伝承が起きることによりお客様とのつながりが強くなる」

といった話がありました。

また、WELLNEST HOMEの早田さんも、

「住宅は、長く住んでみて本当の質の良し悪しがわかるもの。WELLNEST HOMEは、住宅業界では珍しく、実際に住まれた後に満足度がより上がっていく。
 また、私たちは、お客様のことを"ユーザー"と言わず"オーナー様”と呼んでいる。その心は、"消費"するのではなく、資産として"保有"していただきたいから」

と常々言っています。

資本集約的ではなく、長期間を通じたブランドの構築や技術・知見の獲得を強みとした企業経営のあり方があるのではないかと感じました。
(その他、様々な切り口がありそうなので、この点は、みなさんと一緒に、また掘り下げていきたいと思います)

長期的視点

今回のイベントでは、木村屋總本店とWELLNEST HOMEの共通点として、きわめて長い時間軸で社会を見通し、経営を行っていることを感じました。

急成長をしている企業の中では「100年先のことなんてわからない」と言って短期的な成長にフォーカスしている企業も多くあります。(「来年の事を言えば鬼が笑う」ということわざもありますね)

しかしながら、持続的な企業経営を行っていこうとし、また、持続可能な社会をつくろうとすればするほど、短期には売上が上がりづらい、儲かりづらいことにも取り組んでいく必要があります。

たとえば、社会課題の普及啓発は儲かりにくいですが(ビジネス用語で言うならば、CPA(顧客獲得コスト)が高く、儲かりづらい)、長期的視点で見ると取り組まなければいけないこともあります。
また、社会に必要な法整備の働きかけなど、一企業が担うには重荷になることもありますが(法整備がなされてしまえば、その効果は皆一律に及びます)、それが持続可能な社会には必要なこともあります。

すでに150年続く木村屋の7代目である木村さんも、次世代にどのようにバトンを渡すかということを考えながら、経営されていると仰っていました。

WELLNEST HOMEのスローガンである「未来の子どもたちのため」という視点も、超長期の視点が必要だと考えているからこそ掲げられる理念だと思います。

イノベーション(革新)の捉え方

木村屋總本店が大切にしている考え方として、「温故知新」があると伺いました。自分自身を木村屋總本店の「7人目の走者」として捉え、その時代にあった形に合わせて企業経営を革新的に変えていくのが使命だと。

一方で、イノベーションというものは、肩に力を入れて起こすものではなく

「それぞれの時点で愚直に行ってきたことの積み重ねを振り返ってみたときに、ようやく、それがイノベーションであったとわかる」

とも仰っていました。

現在、「イノベーションの起こし方」は学術的にも研究対象となって、さかんに研究がなされていますが、ユニコーンが目指すイノベーション(狙いすました事業領域と事業手法で、短期的に資金を投入して革新を起こそうとするもの)と、ゼブラ企業/老舗企業が目指すイノベーションには違いがあるのかもしれないと感じました。

コミュニティへの貢献が第一

「銀座というまちのためならば、自社の利益にならなくとも活動・投資する企業が、銀座には多く集まっている」

イベントの議論の中で、木村さんから上記の言葉を聞き、私は「銀座」というまちに非常に興味をそそられました。

自社の存在理由が、"コミュニティ"のためであるというマインドセットは、ゼブラ企業/老舗企業の特徴の一つであると思います。

もちろん、木村屋總本店は銀座というまちのために存在しているわけではないと思いますが、長年木村屋總本店を愛してくれているお客様のため、木村屋總本店を支えてくれている従業員や銀座というまちに貢献するために経営しているのだという姿勢を、木村さんの言葉の端々から感じ取ることができました。

ゼブラ企業に関して言うと、現在、本国のZebras Uniteを中心に「Exit to Community」(IPOやM&Aを追求するのではなく、従業員や取引先、地域社会などのコミュニティへとExitするあり方)や、「Coop」(協働組合:株主と労働者が分かれるのではなく、労働者コミュニティが株主となる会社の所有・経営形態)といった、コミュニティとより密接につながった企業経営・形態のあり方の探求が進みつつあります。

今回は時間の都合で深く掘り下げられなかったですが、「銀座」というコミュニティにフォーカスして探求を行っていくのも面白そうだと感じました。

私たちが老舗企業へ貢献できることとは

ここまで、「老舗企業」と「ゼブラ企業」との類似点を見てきましたが、直近の潮流・ゼブラ企業側での探求を踏まえると、

・社会的インパクトの可視化(「三方良し」という言葉で留まってしまうのではなく、誰にとって、どのように”良い”のかを突き詰めて考え、できるところまでは定量化する(ただし、定量的な側面に縛られない))

・新しいオーナーシップ(所有)・ガバナンス(経営)・事業継承のあり方(上記で述べた「Exit to Community」や「Coop」など)

・老舗企業ならではの企業経営の仕方 / 革新の起こし方

などについて一緒に深めていくことが、老舗企業にも有用ではないかと感じています。

また、私たちTokyo Zebras Uniteとしては、自分たちの強みも踏まえ、

・Zebras Uniteをはじめとしたグローバルな人脈・発信力の活用
・クリエイティブへのこだわり+クリエイターたちとの繋がり
・官民連携(行政(国、地方自治体)との協働)、政策への働きかけ

といった側面でも、老舗企業の経営革新、次世代の経営手法/経営者づくり、事業継承をお手伝いしていければと思っています。
(自分たちもまだ探究フェーズです。一緒に探究したいと思っていただける老舗企業の方は、ぜひご連絡ください!)

「SHINISE(老舗)」の発信

私たちは、本気で、日本の老舗企業を企業類型・経営手法の一つとして「SHINISE」として発信し、英語の辞書にも、早くこの言葉を載せたいと思っています。

当日のイベントで英語の同時通訳をつけてグローバルに配信を行ったこともあり、「ぜひ日本の経営をもっと知りたい!」といった内容のコメントを海外の視聴者からいただきました。

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当日のイベントでは、
✓ 老舗でありながら変革を起こすには何が必要か
✓ ゼブラ企業はどれほど成長を追い求めるべきか
✓ 資本主義の中でともに繁栄することを目指す銀座のような場をどう作るか
といった点も含めて、ディスカッションを行いましたので、よろしければ、イベントの様子もぜひご覧ください。(https://www.facebook.com/724093027/videos/10159222896233028/

今後もTokyo Zebras Uniteは本noteやイベントを定期的に開催して様々な角度からゼブラ企業に関する情報を発信していきます。
ぜひ、noteとFacebookをフォローしてください。
(文責:陶山 祐司(Tokyo Zebras Unite Co-Leader))

Tokyo Zebras Unite Webページ・連絡先
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