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ゼブラ企業と新しいファイナンス

2016年に始まったゼブラ企業のムーブメントには、Zebras Uniteの創始者たちが、既存のVCを中心としたエコシステムの中で、起業家として資金調達に苦労したという背景もありました。

社会課題解決型の事業の中では、短期的に時価総額を向上させるという既存のVCと相性が悪いものも多く、新たな資金調達のアプローチが今も世界中で模索されています。

今回は、そうした動きも踏まえつつ、まさに今、従来の金融スキームとは異なる新しい金融サービスを立ち上げようとしている株式会社Fivotと株式会社Siiiboの創業者の方々にお越しいただき、そうした事業を立ち上げようと思った背景、サービス概要、具体的な今後の展開などについてお聞きしました。

本記事では、イベントの中のハイライトを抜粋した形でお届けします。
イベント全体のアーカイブをご覧になりたい方は、ぜひこちらからご覧ください。
Podcastでも配信しています。

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新しいファイナンスを作る2つの企業

TZU:では、まず2社のご紹介をお願いします。

Fivot :安部・佐保
欧州から始まったチャレンジャーバンクという潮流があります。私達も、この潮流を踏まえ、ゼロからモバイルネイティブな銀行を作ろうとしています。
その第一歩として、他の金融機関が融資できない、ロットが小さいスタートアップに対する融資サービスの運営を始めています。
私たちは、もともと外資証券会社で銀行のM&Aに携わっていて、銀行の組織の深いところまで入って内部を見ることができました。しかし大きな組織として、積み重ねてきたものが多いゆえに、抱えているコストがとても大きく、本来であれば可能なはずの融資ができていないということを感じました。
現在は法人向け、特にスタートアップ企業への与信、それにともなった金融領域のコンサルティングを同時に行っています。また、現在、個人向けリテールバンクも開発中です。

Siiibo:小村
私は、ドイツ証券で企業の信用力を踏まえて債券のトレーディングを行う仕事をしていたり、また中小企業のオーナーの方にインカムゲイン型で一定の収入が入ってくる仕組債といわれる商品の提供をしていたりしました。しかし、一方で複雑な仕組み債を売ることで本当に社会のためになっているのかという疑問も感じていたりしました。
また、ブラックロックという米系の資産運用会社では、大手金融機関に関わるプロジェクトで、自社開発のオーダーマネジメントシステムを組織の中にいれることにより、旧態依然としていた金融機関が変わっていくのを仕事の中で感じました。
そこで、テクノロジーを利用しながら、インガムゲイン型のもっとシンプルな形の社債を提供することのできるサービスを開発できないかと考えたのです。
現在、公募債は上場企業上位数百社くらいしか使えないものとなっていますが、私募の仕組みとテクノロジーによって投資家の方にもわかりやすくてシンプルな金融商品が開発できると考えています。

自分たちもスタートアップながら、スタートアップ向けにどのようにリスクを取りながら融資をするか

TZU:Fivotさんはスタートアップ向け融資を行うということですが、リスク管理はどのようにしているのですか?

Fivot:安部
今現在、様々な形で、リスクのとり方を検証しているところです。
サービスの根幹にあるのは、銀行が本来とるべきリスクを取れていない部分があるという課題感です。
特に、融資規模が小さく(300万円程度)、会計状況がわからなかったり、組織状態を実際にヒアリングして調べないといけないようなスタートアップに融資することは、銀行にとって手間であるため融資が実行されにくいという実態があります。
私たちは、まだ創業間もなく、1期目の決算が締まっていないような企業に対しても相談を受けながら融資しています。
リスクのとり方としては、ABLと呼ばれる動産担保の貸付などを試しており、また利率を上げる代わりに経営者保証を外してあげる等を実践してみています。普通の銀行融資では、個人保証をとり、「もしも倒産したらサラリーマンになって個人で返済してね」というところが多いですが、いかに挑戦する人を応援しながらリスクを管理するのかということを試してきています。

TZU:そうは言っても、スタートアップへの融資ってめちゃくちゃリスクがありそうですが、大丈夫ですか?

Fivot:安部
もちろんスタートアップは倒産確率が高いです。そのため融資を行う前に、前提として、借り入れ、資本の調達、自己資金のどれにするのかが最適なのかということから話すことが多いです。
相談する中では、ユニットエコノミクスを無視して赤字を掘ろうとしている方もいます。そういうときには、今どういうリスクを取ろうとしていて、どういう性質の資金が必要なのか、というところから相談するようにしています。

TZU:Siiiboの小村さんは、リスク管理について、どのように考えていますか?

Siiibo:小村
他人資本と自己資本の境目の話という意味では、安部さんの仰るとおりだと思います。
ユニットエコノミクスを考えることが大切で、「資金を投下すれば事業が成長する」というのがわかった段階で、より大きく資金を集め、投下するべきです。ただ、たしかに、ユニットエコノミクスが達成していても、今の銀行は貸していないこともありますし、柔軟な資金提供のあり方が必要だと思います。

レベニュー・ベース・ファイナンスという新しい手法が、7年前くらいから、シリコンバレー等におけるベンチャーファイナンスの領域でも使われるようになりました。
また短期的に売上と連動しながら資金が戻ってくる形で貸すなど、貸付はエクイティ以上に柔軟に設計できる点があります。
だからこそ、業績連動、変動金利等を使った新しい融資のあり方を作っていくのは楽しみですね。

TZU:Facebookを通じて視聴者からのFivotさんに質問がありました。そのリスクをデッド(融資)でとるべきなのか、利率はどうしているのかという質問がありましたがいかがでしょうか。

Fivot:安部
融資でそのリスクをとるべきなのかという質問に対しては、「リスク・リターンが合うかどうか」という点に尽きると思います。
利息制限法もあり、100万円以上の融資に対して15%以上の利息はつけられません。しかし、融資だと株式と違って担保設定ができるので、相手の合意があれば、それよってリスクをコントロールすることはできます。

Fivot:佐保
企業側として、どういう風に使ってもらうのかが一番大切だと思います。今現在はスタートアップ企業をメインにヒアリングしているのですが、エクイティブリッジとして融資してほしいという声を多く聞きます。

TZU:資金調達するまでの資金のつなぎとしてということですね。でもそこが一番リスクが高いとも言えると思いますが、いかがでしょうか。

Fivot:佐保
そうですね。
自分たちが想定している一番合うケースは、D2Cのスタートアップのケースです。在庫を抱えるビジネスはキャッシュアウトとキャッシュインの時期にずれがあり、アクセルを踏みたいと思ったタイミングで、資金繰りの問題からアクセルを踏めないことが多々あります。そこをデッドで保証することができると考えています。
在庫が重いビジネスに対して融資を行い、その企業が成長へのアクセルを踏むことができたという事例ができました。同じような状況にある企業さんに対して、私達がソリューションを提供できるかと思います。
長期の資金繰りとして創業者融資等の資金を調達して、マーケティング費やブランド構築等のために使用し、それ以外の短期の資金繰りの際に自分たちの提供する資金を使ってもらうのがいいかなと考えています。

テクノロジーと「餅は餅屋」的な考えで審査を1-2週間まで短縮

TZU:ありがとうございます。Siiiboさんはテクノロジー等によって審査を最適化していると聞きましたが、詳細に教えていただけますか?

Siiibo:小村
ありがとうございます。
審査のフローとしては、第一線で営業部隊が見て、次に独立した観点で業務部門が審査、そして最終的にコンプライアンス部門を含む会議体が判断するといった形になっています。
普通は実在性確認だとか、現地訪問が必要ですが、それをウェブで確認できるようにするなど、中身の細かい審査方法を最適化しています。
また、餅は餅屋的な考え方で、外部ベンダーの活用なども副次的に行っています。
それによって、審査は1-2週間、遅くとも発行企業との契約から6週間以内に着金できるようなスピード感を実現しています。
赤字企業だとしても事業の成長性を考慮して審査できるフローを作れるように、当局とも、かなり議論しました。

TZU:1-2週間は早いですね。Facebookを通じて視聴者から別の質問がありました。既存の証券会社さんとは投資家の集め方が違うのでしょうか?

Siiibo:小村
100弱の会計事務所さんと投資家の紹介提携をしていますが、他はWebメディアやWebマーケティングを行うなど、一般的なチャネルです。一方で、商品が他と違うので、チャネルやマーケティングといよりも、商品力の違いといった方が良いかもしれません。
他の証券会社では取り扱えないマザーズに上場している企業の社債を提供するなど、商品として面白いものが揃えられると思います。

TZU:Siiiboさんから見て、投資家の方々は、どのような商品を買う傾向にあるのでしょうか?

Siiibo:小村
うちの場合は直接市場を仲介しているため、審査自体はSiiiboが行なっているものの、どの社債を買うかを決めるのは投資家になります。
投資家の方々のうち、利益のみを見て投資先を決めるのはごく少数です。自分も運営を始めてみて驚いたことですが、もちろん一定の成長性は見るものの、ビジネスそのものの面白さやサービスの社会性を見て決めている場合が多いですね。

TZU:なるほど。よく株主利益を最大化するのが証券会社、金融機関の使命だとおっしゃる方はいますが、投資家側にとって、金銭的価値の最大化以外のニーズが確実に存在していますよね。
今日はありがとうございました!

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当日は、
・Tokyo Zebras Uniteの田淵から、新たなファイナンスに関する海外事例の提供
・両者がサービス開発で苦労した点
・サービスの実現可能性に関する質問
・資金調達についての視聴者からの質疑応答
などについてもお話いただきました。

イベント全体をご覧になりたい方は、ぜひこちらからご覧ください。

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