見出し画像

ゼブラと組織運営

第15回目のZebras Cafeでは、「ゼブラと組織運営」と題して、ゼブラ企業が今後どのように周囲と事業を進めていったらいいのかと考えるヒントになればという思いから株式会社ガイアックスのブランド推進室の木村さんにお越しいただきました。

新卒で2003年にガイアックスに入社し、採用、人事、IR、広報、事業立ち上げと幅広く活動される木村さん。現在はガイアックスの仕事以外にも教育子育て周りのコンテンツ作成やカナダの先生のプログラムの運営等、企業組織から移って幼児教育、小学校教育、環境問題含めてさらに多岐に渡って活動をされています。

今回は、ゼブラ経営としてはステークホルダー主義やパーパス経営がそういったテーマを持っている中で、実際どう実践するのか、生の声を聞かないと分からない個人の思いの変化の重要性などについてTokyo Zebras Uniteのメンバーとディスカッションさせていただきました。

10年でITベンチャーからスタートアップスタジオへ変化

阿座上:肌感として、ガイアックスはここ10年の間に何か経営が変わってきた気がしています。アドレス、シェアエコノミー、木村さん個人の動きも含め、仕組みをうまく組み合わせるのがすごく上手な会社だなと感じています。人事の方も色々なことを社内の方でやっていらっしゃる印象があるのですが、実際はいかがですか?

木村:おっしゃる通り、IITのベンチャー企業だったものが、スタートアップスタジオにかなり変化していっています。

ガイアックスのミッションは『人と人を繋げる』ことです。要は「他人のことが自分のことのように感じる社会を作れたら、かなりの世の中の社会問題解決できるんじゃないか」という思いがあって存在している会社です。なので今は連続的に起業家を輩出するスタートアップスタジオとしてやってます。

ガイアックスは起業家輩出企業である傾向をそのままビジネスチャンスにしようという割り切りを持ってる会社なんです。なので株式を彼らに持ってもらうし、出資もするしっていう。

我々がバックオフィスとして支援することで最初にスタートして、最終的に彼らは自分たちで資金調達も行い、ガイアックスよりもっともっと素晴らしい世の中の企業さんのご支援を得て、上場に至っていくシステムです。

(Gaiax 公式noteより)

スタートアップスタジオを支える仕組み「カーブアウト制度」

木村:ガイアックスにはカーブアウト制度といって、ストックオプションならぬカーブアウトのオプションをみんなが持ってる制度があります。やっている事業を自分たちで株式持ってやれるようになってます。

ガイアックスの連結決算から事業部が申請したらガイアックスの子会社になり、そこからさらに投資先になる。とだんだんと連結対象外になっていくということですね。

ガイアックスは順調に連結売上高を減らし続けています。事業会社とのVC的なスタートアップスタジオとして連続的に起業家を輩出するっていう形で、どんどん新事業の方がカーブアウトしていきます。

大体うまくいったら外へ出ていっていると思ってもらった方がわかりやすいと思います。社内でも、もちろんソーシャルメディア周りの事業っていうのはやっぱり安定成長してはいますが、それ以外の新しい事業が生まれることが多いです。

田淵:会社の中でいかに事業を膨らましていって順調に売り上げを伸ばしていくかっていう方が昔は主戦場だったと思うんですけど、だんだん色々なサイクルとかが早くなってきているんですね。会社としてもう完全に割り切ってカーブアウトしていこうってなっているんですか?

木村:はい、新規事業でロングでリターン取ろうっていう風に、そこはだいぶ振り切ってるんですよ。ここまで振り切ってしまったらもう元には戻れないですね。ガイアックスで今までやってきて社会にどんなリターンとして残せたのかっていうことにでは、アントレプレナーシップ、起業家人材であると思うんです。

ガイアックス出身かつ投資先の多拠点生活プラットフォームADDressの代表の佐別当さんを事業をひたすら作り、失敗も多くて、危険要注意人物という見方もできます。それでも社会から応援いただいているのを見てると、チャレンジし続けるってこと自体に大きな価値があるんだなと感じてます。チャレンジし続けるマインドがガイアックスは昔から社内で強いんですよ。そういう人材を排出することが一番のガイアックスの社会に提供する価値なんじゃないかとも薄々思っています。

サラリーマン的な報告が起業家マインドを邪魔する

 Canva

阿座上:もし急にゼロから面白い事業やり始めて売上取ってきて、独立されたらとても会社をやっている身からして悩むだろうなと思うんですけど、そう言われても驚かなかったカルチャーはどこからきているんですか?

木村:どのタイミングで事業がうまくいったかというと、その人が退職した後というケースが多いからですね。

今は外で新規立ち上げをやっている人と話していたのですが、会社にいた当時に報告や経営会議報告などいろいろやりとりしていても、お互いミスマッチの印象があったんです。

ガイアックスではいろんな業界のビジネスが立ち上がりやすくて、特殊な業界のことは僕らもわからないし、常に専門家じゃない。社内での事業だと、サラリーマン的な報告のあり方なんです。自分の資金をいかに会社から引き出し続けるかみたいな考えに歪んでいくんですね。そして何度か失敗して会社でお互い気まずくなるんです。大体それは辞めた後みんな成功しちゃうんですよ。

やはり必要な失敗の数があるので、早く失敗し続けた人を、ガイアックスとしてはきっちり仲良くさせてもらいたい、一緒にやらせてもらいたい、投資のチャンスが欲しいと考えています。 なので起業家の卵に優しい会社になろうと。

阿座上:そういう概念は失敗からあったんですね。

自分達でルールメイキングする、自主性あるカルチャー

Canva

木村:社内では、元から独立採算の管理会計の方法をとっているんです。事業部間の取引も全部、管理会計で載せてやっています。なので、社内の仕事やるか社外の仕事やるかもこちらからしたらみんな同じなんです。

社内の制度は元々市場競争にさらされていて、経営に近いところをずっとやっています。なので人を新しく採用するにあたっても、方法はたくさんあるんですね。うちの部署は社外でお願いしたいみたいな。NagatachoGRiDという本社ビルにオフィス移転したときに、部署ごとに移転するかどうか悩んでますみたいな話がが出るくらいでした。

カーブアウト制度や独立採算の管理会計は、経営側の判断である一方、従業員が獲得してきた歴史なんです。元々の報酬自体、本人が報酬テーブルを作って交渉しています。世の中よくある野球の年俸制ならぬ四半期棒制で、四半期の交渉があってやっています。

自分で全部決めるっていうのが一定必要で、実際全ては決めれないんですけど、何か自分の意見を出していくっていうのがガイアックスの文化です。
報酬について、個人も会社も納得できるパッケージに仕上げることが上層部の役割です。

阿座上:一人一人が一元じゃない基準で評価するってとても難しいですよね。そこはどう考えていられるんですか?

木村:新規事業やってるときの報酬どうするっていうのが一番見ていて悩んだ部分です。やっぱりそれはどういうスケール、メトリックスがいいのかっていうのは、本人がやっぱ考えなきゃいけない。今、社内で事業をやるときは初期に別会社化してやることが多いんです。そのお金から自分の給料をもらうので、カップラーメンを食べてシェアハウスに住んで生活しながら生活している人もいます。

阿座上:すごく元からフラットな関係性なんですね。

木村:制度として一人一人多様だという大前提に立ち、フラットな関係性を持つことが、一番今回のゼブラってテーマにおいても重要な気がしてます。

組織や人事の立場から、型にはめて、いろんな進捗を管理できるようにしたいという思いがありますが、そうはいかないので、どう多様性に対応できるようにするのかが重要だと思っています。

阿座上:多様性に対応するというと、実際どうしているんですか。

木村:なるべくルールを作らないっていうのがガイアックスのコンセプトです。 ルール作ってもみんな守ってくれるか怪しい人たちなんで。

自分たちでルールメイキングするっていう感覚があり、ダイバーシティをやろうとかっていう掛け声とかじゃなくて、現場でそれぞれ自主的に判断できるっていうことって、とても健全な印象を持っています。

何をやるにしても、始める際の説明コストが高過ぎるんですよね。なので事業を3ヶ月やってみて、わかんなかったらまた変える、これは検証なんだという姿勢が大事だと思います。これは検証なんだっていうので大体進めると、うまくいってるなと。社内もその部署ごとにかなり自由な裁量があるおかげで、大体いい制度があったらみんなパクリに来るので。リモートワークの時もそうでした。

canva

カルチャー作り。採用がポイントか、運用がポイントか。

阿座上:ルールをなるべく作らないカルチャーの他に、職場の多様性を育てるのには何が大切だと思われますか?

木村:先輩がどれだけ失敗するかだと思います。上長が自由にやっている部署ほど、メンバーも自由にやっているんです。上長がずっとオフィスにいると、メンバーも空気を読んで、テレワークをせずにオフィスに来るじゃないですか。

阿座上:失敗をずっと見ていくと、上がそんなに失敗するなら自分はやらないみたいな人も出てくる気がするのですが、ガイアックスはそういうところをうまく乗り越えている気がします。採用の部分が違うのか、運用の部分が違うのか、どこがポイントだと思われますか?

木村:もちろん入ってくる人材は重要ですけど、中途で入られた方の変化を見ていても、採用だけの話ではないと思います。やはり自分がやりたいっていうことを見つけられるかどうかだけだと思うんですよ。失敗に対して僕はすごい抵抗感があるんですけど、挑戦者と失敗するのはイコールなんです。
挑戦せずに失敗しないなんてあり得ないわけで。

ガイアックスが今の状態で成功してるなんてまだ誰も社内で思っていないです。その代わり、自分がうまくいかなくても、先輩がもっと上手くいってなくて、それでもまだ飄々と頑張って生きている姿を見たときに、これはこれで悩んでる自分が情けないみたいな気持ちになるんです。

佐別当さん(ADDress代表)があんな普通に生きているのを見るだけで、僕は俺は生きてて許される気がするみたいな感覚があります。

そういう頑張っている人がガイアックスにたくさんいて社内とかで失敗を共有してくれるのを聞くと、それでもチャレンジするっていうその姿勢にパワーをもらうんです。

阿座上:そうですよね。僕も、身近で成功してる先輩も途中どこかで失敗するのを見てきたので同じように感じます。日本人は他人の失敗を学ぶ文化がまだなかなかないですよね。

陶山:会社全体で見ると、やはり多様性への対応という部分と効率性を求める部分がありますよね。デジタル庁は今、基本的に表面的なところは多様にしながら、共通基盤を作るみたいなことやってるわけですけど、そのにはまさに全体の設計の仕組みが大事で。全体である種色々と統一した方が効率的だったりとか全体にとってよくなることもある気がする中で、そこへの折り合いはどうつけているんですか?

木村:僕からしたら、副業何をやってるか上司が管理した方がいいって気持ちもわかるけども、それをいうなら、お子さんがいる家庭か、どれだけ家事育児やっているのか、親の介護をやっているのか、そういうのは把握してるのか管理するべきなのかという話なんです。僕からしたら副業も、その介護も育児もやっぱり同列なはず。ひとは色々な側面を持っていますからね。

陶山:やはり労働法制があってきてないですよね。社内で副業の業務委託って労務的には結構苦しい気がして。

木村:社内副業を業務委託で有償でできることに関しては労基署に確認をとっています。社外でやるよりも社内のほうが管理できるからいいよねっていう。なので労務管理はしている形です。

本当に、働き方の多様化を訴えながら一方で、有給の紙だとか細かいところがあって、いくらでもブラックにも転用できるし。今やってる働き方の自由度を上げ続けると、会社として本当にリスク取るだけになるんで、結局そこまで自由にしたい場合は会社を辞めてもらうことを推奨しているんですよ。

陶山:やっぱりそうなりますよね、そうせざるを得ないんですよね。

木村:僕も後輩の何人か社内で会社を作って、ガイアックスと取引するというので、気づいたら自分もガイアックスを辞めてました。なのでいま業務委託契約なんですよ。

陶山:今の労働法制上本当に一番いい形ってそうなるんじゃないかなと思っちゃいますね。

挑戦をある種強制的にやらせるのか、そこもほっとくのか。そこの後押しはどうなんでしょうか?教育とか育成ですか?本人が実際全てを決められるわけじゃないけど、自分っていうのが何かを出すという考え方の育成を、どれぐらいの時間軸とか考え方でやるかを詳しく伺いたいです。

ブレーキのかからない新人の急成長から学んだこと


木村:育成で最近感動したことがあります。新卒のメンバーばっかりとか、インターン生が事業を作ってやると、トラブルがたくさんあっても超アクセル踏みながら走るわけですよ。人間関係はやはりぎこちなくなって、経営判断も間違ってくる。こちらとしては、会社としてここで人を入れ替えたらいいじゃないかって思いながら悲惨な状態の事業が継続されたんです。こんなボロボロな状態で事業成功するのかみたいな。そう思っていたら、その本人がめちゃくちゃ劇的に成長していったんですよ。

ブレーキのかからない車であってもそのまま外からブレーキ入れずに、本人にまだ走らせているっていうのがガイアックスの傾向なんです。やはり、そのギリギリまで行くから、失敗というかもうやばいレベルからのはい上がり方とか変化の仕方がやっぱすごいんです。社内で働きながら何回か死んでるっていう感じがあると思いますが、そういう意味での成人発達が起こりやすいんですかね。

田淵:その見極めが難しいですよね。下手したらはい上がれない人だって出てくるかもしれないし、本当に潰れちゃって、身体精神問題が起きちゃうっていう可能性もあるし。

その辺の見極めとかどういうふうにされてますか。まさに這い上がれる具合の多様性ってどうマネージするのかという。

木村:メンバーはガイアックスというコミュニティに話ができる人がいるということに価値を感じていると思います。ガイアックスの中にいる何人かがいるからガイアックスが好きだっていうのが実態で、そこもそういうカルチャーに依存しているっていう部分はありますね。

社員総会とかも出席自由で、みんな招集をかけたら来るって感じではないんです。知り合いが行くからどうという形でしか情報がやっぱ流れたり人が動かなくて。本当にフラットな人間関係でみんな動いていく。ガイアックスはそれぐらい、本当の自分を出していい会社なんです。

要は、本当の自分にどうやったら気づけるか、その上で人と交流できるかと考えた時に本当の自分を出せなくしているのは会社だと思うんです。

そういうのを全部とっぱらって、なるべくフラットに自由にしていけば、みんな嫌なイベントには来ないし、返答もしないし、空気も読まないから、どんどん自分が出てくる。そうしてやっと、まっとうなコミュニケーションができるようになると思います。

本当に自分自身であることが絆を作る上で重要

canva

阿座上:自分らしさって難しいですよね。働くときのモードと、リラックスするというモードっていうのも、その人によって違ったりもするし、出したい自分と出せてる自分が違ったりもするじゃないですか。わがままを言うこともまた違うし。「自分を出す」というのはどうされているんですか?

木村:まずは自分の本音を出せるかっていうのがやっぱ最初だと思いますね。わがままかもしれないんだけれども、こうなんだよねっていう話のやりとりがまずできると、次に進めることができるなと思います。

阿座上:本当の自分に出会うのは大変ですよね。
確かに自分を省みると1年ごとなのか1日ごとにわがままになってるというか、なんか人のこと気にしなくなってる気がしていて。、その方がコミュニケーションもとりやすい気もします。

田淵:わがままかどうかってかなり深い話だと思っていて。

人間は無意識のうちに、何かに反応したりとかアクションを取ったりしたことに、無意識のうちに感情的に相手がどう思うかとか思われるかとか何かいろんなことを考えたりしているて、それには教育とか環境とか、そういうものも影響するのかなと思ったり。またお話しできる時はそんな話も聞けるといいなと思います。

木村:自分を出すってことっていうのは、本当はわがままだし、でもそこを出すから、人との繋がりだって作れると思うんです。

研究であるのが、繋がり、絆とは何かっていう研究があって、研究による結果だと、絆の反対の言葉は何かわかっていて、それは"人に合わせること"なんですよ。絆の反対は、値踏みして順応すること、話せることを話さないで避けること、格好や趣味を合わせることなんだと。結局、本当に自分自身であるってことがまず人との絆を作る上で重要なんだっていう。

僕らの教育も社会もやっぱりもう一度そこのベースを作らなきゃいけないと思います。本当にゼロからルールなしでみんなでルールメイキングするスタンスを身につけていくってことが、本当に組織も教育も全部重要じゃないかと思っています。今回そういう話になって、楽しかったです。

阿座上
木村さん、今日は本当にありがとうございました。


本記事では、イベントを抜粋した形でお届けしています。
イベント全体のアーカイブをご覧になりたい方は、ぜひこちらからご覧ください。Podcastでも配信しています。

今後もTokyo Zebras Uniteは本noteやイベントを定期的に開催して様々な角度からゼブラ企業に関する情報を発信していきます。
ぜひ、noteとFacebookをフォローしてください。

FBでいいね を押して頂けると、最新情報が届きます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?