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カヌーに乗って

昔、小沢健二の「カローラⅡに乗って〜♪」という歌が好きだった。カローラⅡに乗ることはなかったが、先日、友人に誘われてカヌーを初めて体験してみた。

賑やかな河口湖より穏やかな西湖が好きな僕の気持ちは昂った。なんて素敵な紅葉なのだ。カヌーのお店の人の車に乗って到着すると、準備するまで椅子を出してくれて、くつろいだ。写真を撮ってもらうとまるで自分の車のような充実したアウトドア気分を味わえた。

こういう時の我が物顔は得意な性分であった。ろくでもない性分であった。

富岳せのうみカヌー倶楽部のアンちゃんは、元々都内で働いていたが、景気に左右されない生き方を求めて今の生活を始めたらしい。カッコよかった。

端っこに写ってるのがインストラクターのアンちゃん

カヌーは思ったより大きくて、最初はなかなか上手くいかなかったが、アンちゃんの教え方が上手くてすぐに慣れた。基本はこの2つ。

①ストローク・・・パドルを垂直に水面に突き刺して後ろに引くと漕いで進む。しかし少し曲がるので、
②ラダー・・・パドルを後ろに引いたあと手首を返してブレードを縦向きにする。パドルが舵の役割を果たし軌道を修正してくれるので、行きたい方向に向いたらまたストローク。この繰り返しだ。

カヌーを漕ぎながら見渡す景色は最高だった。

「西湖、最高!」(さいこ、さいこう!)
という百万人が口にしたダジャレを惜しげもなく何度も口にした。それくらい気持ちがよかった。

途中、アンちゃんが船の上で珈琲を用意してくれた。おまけに自家製のはちみつも用意してくれて(養蜂家でもあるらしい)、ナビスコに蜂蜜をかけて食べると絶品だった。初めてナビスコの正解に出会った気がした。

カヌーに乗る前に撮ったアンちゃん自家製はちみつ
はちみつを塗ったナビスコ

それからまた再び漕ぎ出した。「カローラⅡに乗って〜♪」と歌いはしなかったが、そんな歌を口ずさみたくなるくらい穏やかな心地よい時間だった。

帰りにアンちゃんが駅まで送ってくれたのだが、帽子の上にカマキリがいることに気づいた。

危ないと思ってすぐに指摘したが、彼は動じなかった。
すぐに追い払って窓から出すのかと思いきや、全くその様子もない。何なら記念に写真を撮ってほしいと言われる始末w

「おそらくこの子は西湖のカマキリだから、また西湖に戻してあげようと思います」と。

駅まで送ってくれた後に、また車で20分もかけてカマキリのために戻るのかと思うとジンワリと心に響いた。嘘を言ったり、いいことを言おうとしてるような雰囲気でもなかった。本当に自然や生き物を愛してる人なんだなと。カマキリも途中から降りようとする行為をやめて、のんびり乗っかっているように見えた。僕がカマキリなら、あの歌のメロディを口ずさんだに違いない。

「アンちゃんの帽子に乗って〜♪ そのままドライブ〜♪」

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