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ぶらちんこ 川崎編 〜おピンクハロウィンランウェイ〜

ぼくは、九州出身だが、15年ほど、東京都民だったことがある。

上京して、武蔵野の緑豊かな三鷹市にやってきて、それから、杉並区、世田谷区と、だんだんと、東京の中心部に近づいていた。遊び場所は、吉祥寺、下北沢、渋谷、新宿だった。

あまり、神奈川に縁がなかったのである。

学生時代、サークルに神奈川出身という女の子がいて、馬鹿だから安直に「横浜なの?」と聞いたら、イラッとさせてしまったようで、「川崎だよ」と言い捨てられた。

ハマっ子(横浜育ち)、サキっ子(川崎育ち)みたいなのが、あるようであった。

サキッ子の彼女はサークルでランニングしたときにピンク色で横にキラキラしたラインのついたジャージを着ていた。これがぼくが川崎というところを意識した最初のことである。

それから川崎にはちょっと縁があってときどきアルバイトで行ったりしていた。

今朝、ワイドショーを見ていたが、痛ましい台風の被害とおめでたい天皇即位の話題とラグビー代表選手のインタビューを見たあたりで、体がむずむずしてきた。

なんとなく久しぶりに川崎でも散歩しようと思った。

川崎駅についた。ぼくがバイトできていたころよりもずいぶんきれいになった。一句よんでしまった。

改札を
ぬけたら 
おしゃれな
店がある

昭和な地下街のイメージしかなかったアゼリアもずいぶんオシャレになっていた。フォントがやたらに今っぽい。しかしいろんなところでよく見かける感じではある。昔あった仕掛け時計はまだあるのだろうか。

外から振り返ってみても激オシャである。

ぼくの目当てはここ、銀柳街アーケードである。一部界隈では川崎の流星街(某少年漫画参照)とも呼ばれている。

ぼくはかつて川崎で夜勤のバイトをしていたのだが、夜勤明けにこのアーケードのマクドナルドに入ったときに、喫煙席でおばあさま方が、生活保護に入るには役所へ申請する時にどんなテクニックを使えばいいのかといった話をしていたことを覚えている。

街はなかなか賑わっている。そういえばハロウィンだ。

アーケード内だがゆうゆうとチャリが走っていた。ヘアカラーがまぶしい。

なにかイベントのようだ。

ステージが組まれて、DJまでいた。TIKTOKがスポンサーなのだろうか。

なんとランウェイがあった。ステージ上でMCから一組ずつ紹介されて、ウォーキングしてゆく。まるでパリコレである。実にラグジュアリーだ。

ランウェイはずいぶん長く続いていた。パリコレ顔負けである。アーケードの天蓋が開かれて、秋の日差しが心地よい。

子供も大人も、みんなにぎやかに楽しんでいる。

ぼくの記憶にある銀柳街とはずいぶんちがっている。とても素敵だ。

ぼくはランウェイが終わったあたりでアーケードを左に折れた。

パリコレから2秒でこの有様になった。

コンビニ脇で人々がやたらと煙草を吸っている。服装がある種の風情を感じさせる。美しく磨かれた黒い車が走る。おピンクなエリアが近いことが、なんとなく察せられるようだ。

サンダル姿のおばさんが鳩にえさをやっていた。鳩も慣れているのか、たくさん集まっている。

そしてこの看板が目に飛び込んできた。パリコレ会場から10秒でパネマジ会場に到着である。

子供がこれを見たら、「おとうさんアロマエステってなに?アルバム見学無料ってなに?」とたずねること、うけあいである。銀柳街では、実に多様な学びを得ることができるのである。

川崎倶楽部。夜のスーパーモデルが、勢揃いだ。

ここはアフターパーティーの会場であろうか。愚直なまでに、エロスに素直な店名である。

パブ ニューぱいん。先の2πあ〜るといい、近隣の人々の下の好みが伺われるのではだろうか。

オシャレなのに、夜のパリコレ会場の宣伝だとひと目で分かる。たぶん、色のせいだろう。

なんでこの通りにこんな普通の建物が?と思ったら、こちらはお寺のようだ。ときには煩悩をしずめることも必要だろう。ぼくは、ここで角を曲がることにした。

ナイトイン宝塚。看板といい、そこにたたずんでいるたくさんの鳩といい、パーフェクトだ。

ナイトイン宝塚の先には大きなマンションが並んでいた。さきほどの2πあ〜るから徒歩1分くらいになると思う。まさに住欲近接である。おまけに、すぐにアーケードまで子供を遊びに連れていける。

この通りを30秒ほど進むとろうきんと野村證券のビルがあった。通りを抜けて道路を渡れば、市役所があるらしい。

川などで隔てられていることの多い昼の繁華街、夜のおピンクエリア、そして役所や金融機関が徒歩2分内にくっついているのはなかなか珍しいかもしれない。いま流行りのコンパクトシティだ。全国の自治体は川崎を手本に街づくりをするべきではないだろうか。

と、こんなことを考えていたら、たまたま昔のバイト先の友達と会ったので、せっかくなのでお茶することにした。相手はおしゃれな女子である。そこでいま流行りのパンケーキを食べることにした。

ぼくらはクリームがたっぷりかけられたパンケーキを食べながら、互いの過去、現在、そして未来について、熱く語り合った。

それから二人でカラオケに行って、大変盛り上がった。

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