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遊牧民のおもてなし

モンゴルへ行ってきた。
事前知識は、「チンギス・ハン」「遊牧民」「ゲル」くらい。
ただただ広い草原と馬や牛、羊しかいない国だが、見るもの、聞くもの、食べるもの全てが新鮮で、1日が1週間に感じるほど面白かった。


モンゴルのミルクティー 「スーテーツァイ」

ウランバートルから車で一時間半、Nalaikha(ナライハ)という町の近くにある遊牧民宅へ。
受け入れてくれたのは、ユウスケさん一家。
日本人ぽい名前だが普通にモンゴル人だ。

到着すると、奥さんのナガさんが出迎えてくれ、ゲルの中に招き入れてくれた。
隅の方から出してくれた小さな椅子に座り、少し緊張ながらゲルの中を眺めていると、奥さんのナガさんが、魔法瓶を持ってやってきた。
ぱかっと蓋を開け、お椀になみなみと注いでくれたのは、モンゴルのミルクティー「スーテーツァイ」

モンゴルのミルクティー「スーテーツァイ」


お椀を受け取り、飲んで驚く。
甘くない!
なんと、モンゴルでは、ミルクティーに砂糖ではなく塩をいれるのだ。
砂糖に慣れているので不思議な感じがするが、バターのようにまったりとした濃厚な風味がして、意外と悪くない。


スーテーツァイ作り


次の日、このスーテーツァイを作っている様子を見ることができた。

まず、一番初めにやるのは乳搾り
バケツを太腿の間に挟んで椅子に座り、ぎゅっと牛の乳を先端に向かって引っ張ると、ピューピューと勢いよくミルクが出てくる。
ナガさんが楽しそうなので、簡単そうに見えるが、これがなかなか難しい。頑張って頑張って、5ミリくらいしか取れなかった。
諦めてナガさんに手渡すと、ものの十数分で、5頭の牛の乳を搾り、あっという間にバケツをミルクでいっぱいにしてしまった。

手慣れた手つきで、乳を絞るナガさん。
たちまちバケツはミルクでいっぱいに。
奥にいるのは子牛。順番を待ってる。


乳搾りはナガさんが一日のなかで
一番好きな時間だそう。

ゲルに戻ると、大きな中華鍋に水を張り、茶葉を入れ、ストーブの上にセット。
ちなみにゲルにコンロはないので、すべての料理をこのストーブの上で行う。

しばらくすると茶葉が煮出されてくるので、さっき絞ったミルクを注ぎ、さらに煮込んでいく。

時々様子を見てかきまぜ、最後に塩をほんの少し加えれば完成。

大量のスーテーツァイが出来上がった!

出来上がったスーテーツァイは、黄色のミニバケツですくい、ざるで漉して、魔法瓶に詰めていく。
こうして、一日中誰がきても、スーテーツァイで、もてなせるようになった。

少し見にくいが、机の上には2本の魔法瓶とヤカンが置いてある。ここにたっぷりスーテーツァイが詰まっている。



ゲルには常に来客がいる

鍋いっぱいのスーテーツァイ、飲み切れるのか心配になるが、まったく問題ない。
ゲルには常に誰かしら来客がやってくるのだ。  鍵がないので、みんなナチュラルに入ってくる。
私が確認できただけで、合計12名が訪ねてきた。


お兄さん夫婦とその子供、
馬の先生2人
午前
酔っ払いおじさん
知り合いらしい家族3人
午後
女性2人
ゲル作りを手伝ってくれたおじさん 

再びお兄さんと馬の先生2人

ナガさんは、来客が来る度に椅子を出し、お椀にスーテーツァイを注いで渡す。
まったく嫌な顔をせず、当たり前のように行っているので、いつものことなのだろう。

客たちも特に何かをするわけではなく、会話をし、スーテーツァイを飲み干したら出かけていく。

友達であれ、人を家に呼ぶ前には掃除してお菓子などを用意して…と構えてしまう私にとって、あまりにナチュラルに他人が家を出入りする文化は、結構衝撃的だった。


山盛りのボルツク

スーテーツァイといつもセットで出されるのが、ボルツクと呼ばれるモンゴルの揚げパンだ。

短い棒状だったり、捻ってあったり形はさまざま。
味は甘さ控えめのオールドファッションのような風味で、結構素朴な感じ。
もちろん、揚げたてがしゅわしゅわで一番美味しいのだが、大量に食べるので、スーパーの大袋を常にストックしているようだ。

そして、このボルツクを山盛りに盛ったお皿が、常にテーブルの上に置いてある。
朝食にはジャムを添えて食べ、来客が来たらスーテーツァイと一緒に勧め、こどもたちは遊んでお腹が空いたら自由に食べるのだ。

蓋をぱかっと開けると山盛りのボルツク。
パイ状のもある。これは手作りかな?


日本人にとってのお米、とまで言うと言い過ぎかもしれないが、モンゴル人にとってソウルフードであることは間違い無いだろう。

いろんな形のボルツクがある。
こんなに大容量のボルツクも。




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