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「囀る鳥は羽ばたかない」 矢代はなぜ引っ越したのか

7巻以降、矢代の部屋が変わった理由

  第40話で矢代は、自分を引き留める百目鬼の手を振り払って走り去り、振り返ると百目鬼はいなくなっていて、真っ暗な砂漠のような孤独の中で一人立ち尽くす、という夢を見る。

 夢から覚めた時、6巻までと矢代の部屋の間取りもインテリアも違うから、「あれ? 矢代の部屋こんなだっけ」と薄々違和感を持っていたけれど、第45話で矢代が引っ越していたことが判明した。

 現在の家は、タワーマンションの36階。私は矢代は職住近接派だと思っているから、渋谷区辺りだろうか。

 はじめは、前の西新宿の低層マンション(これは映画の設定で、原作では住所までははっきりしていない)の方が、部屋も広くてよかったのに、なんで引っ越したのだろうと純粋に物件を見る目で見ていた。

 しかし、第46話を何度も読み返すうちに、黒い格子のついた大きな窓と牢屋のようなベッド柵が気になって仕方がなく、この部屋は矢代の鳥籠なのかとようやく気づいた。

 普通、タワマンの窓はもっと解放感があるものなのに、太くて黒い格子が逆に閉塞感を感じさせる。
 ベッドの黒い柵も、スタイリッシュと言うより重く息苦しい。まるでこの中に矢代が閉じ込められているかのようだ。
 今の部屋は矢代の心の暗喩で、この閉塞感を表現するためにヨネダ先生は矢代の家を変えたのではないかと考えている。

 鳥籠のようなこの部屋で、矢代と百目鬼がセックスするなら、「モラトリアム」の歌詞の世界観そのものだなと思った。

 それはそれで、切なく、美しいけれど、矢代の救済と幸せが、この先にあってほしい。

 矢代の新しい部屋は、矢代の心が解放される時のための舞台装置なのかもしれない。

 次に矢代が引っ越す時は、もっと広くて開放感のある家にして、願わくば、百目鬼と一緒に暮らせるといいなと妄想している。

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