「囀る鳥は羽ばたかない」について 2巻第5話

第5話


「上手くかわすこともできたし 別に認めたって良かった なのに俺は お前にそこ触られたくねぇ…」

 自分の影山への想いを百目鬼に気づかれて、矢代はこう思う。
「漂えど…」でもそうだったように、矢代は影山に好意を抱いていることを自覚している。では、百目鬼に対してはどうなのだろう。この問いは5巻に続く。

 廊下に座り込んで寝ている百目鬼の横顔に、矢代がそっとキスをする。
 この場面は2巻でははっきり描かれないが、読者には何が起こったかちゃんとわかる。詩情あふれる美しいコマ割り…。
 ここで、矢代は百目鬼が好きなんだともう間違いなく伝わる。表向きは、いや矢代自身にさえ、そうではない振りをしていても、これが矢代の本音なのだと。

「(警官のコスプレは)充分見飽きたから着替えろよ」と自分が昔他の組の幹部から貰い、一度も着ていない虎柄のトレーナーを百目鬼に与える。

 ヨネダ先生は「囀る問答」(2015年 note)の中で

「ここぞという時に着て現れると思います」

とおっしゃっているけれど、7巻以降の展開でそんなシーンが出てくるのだろうか。(いつか矢代と某夢の国等でデートする時が来たらちょうどいいような気もするけれど、それは本編ではなく特典ペーパーか)

 シャワーを浴びてバスローブ姿になった矢代が、百目鬼の携帯を手に取りメールをチェックしながら、ベッドに腰掛けた百目鬼の膝にさりげなく頭を乗せる。


 2回目の「膝枕」。このシーンが一番自然だと思う。
 「膝枕」は矢代の百目鬼への好意の表れで、純粋に「甘えたい、くっつきたい」という行為なのだと思っている。
 バスローブの裾がはだけるのも気にせず露わにして組んだ矢代の脚を見て、百目鬼は気まずそうに目を逸らす。

矢代「どんな女が好きなんだ?」
百目鬼「脚の綺麗な人が好きです」

 百目鬼の答えを聞いて、矢代は心なしかショックを受けたようにも見える。
 直前に矢代のすらりとした脚を見たからこう答えたのかと思っていたが、「20072017」の中でも百目鬼の好みのタイプに「これといってなし(脚の綺麗な人は好き)」と書かれているから本音のようだ。矢代のことは脚だけでなく、全部綺麗だと思っているのだろうけれど。

 初体験について語らせながら、百目鬼の目の前で矢代が自慰をする。
 その様子を見て、百目鬼はドキドキしている。百目鬼が「先生が…スカートを腰までめくり上げて 俺の…上に」とクライマックス直前まで口にしておきながら肝心な部分を言わず、「後はよく…憶えていません」と誤魔化すので、矢代は達することができない。

 欲求不満なまま事務所に出社した矢代の所に、竜崎がやってくる。言いがかりをつけて矢代に食って掛かる竜崎を制するために、百目鬼が左腕を矢代の胸の前に出して庇うシーンにぐっときた。

「ハハ、まるで妬いてるみたいだなぁ」

という矢代のセリフをこの時は冗談だと思っていた。
 松原組が裏でさばいているシャブのことを矢代は知っている。「組対と新宿署が嗅ぎつけているぞ」と竜崎に忠告する。「なぁ、それよりさ」と、矢代が竜崎を誘う。両手を縛られ、後ろから竜崎に犯されながら、矢代は百目鬼が保健医としたセックスを妄想して感じている。二人がしている最中に三角が事務所にやってきて、部屋の前から動かない百目鬼に「中で何やられてっかわかってんのか?」と言い、ドアを開けさせる。 

 矢代と竜崎が繋がったままのところに、三角と百目鬼と七原が入って来る。百目鬼は少し動揺しているが、三角は動じず「遠慮すんなよ。見ててやるから 最後までイケよ 竜崎」と宣う。
 三角さん、かっこいい。さすがに竜崎が可愛そうになった。



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