「囀る鳥は羽ばたかない」について 2巻第6話
第6話
矢代と竜崎がしている部屋から、三角に追い出された百目鬼と七原。さっきまで険悪な雰囲気だった二人が、昔のようにセックスしていることに七原が呆れる。百目鬼は七原のセリフから、矢代と竜崎が「昔はさんざんヤリまくっていた」ことを知る。
そこに矢代が現れて
と七原を窘める。矢代のこういうヤクザらしい言動が物語を引き締める。
竜崎が部屋から出てくる。
「よお。いいところだったのになぁ。イケなくてお互いザンネンだったな」と矢代がからかうように声をかけると、竜崎が矢代の顎を中指に指輪をはめた右手で掴んで
「てめえ、親父が来るって知ってて続けてやがったな?」と凄むのだが、二人がじゃれ合っているようにも見える。
という素敵なやり取りを残して、竜崎は去って行く。
矢代が七原に竜崎を送らせた後、矢代と百目鬼は二人きりで見つめ合う。
「文句があるなら言ってみれば? 七原みたいに」と矢代が挑発する。
矢代のセリフにハッとして、「ムカついてません。俺には七原さんのように怒る理由はありません」と答える百目鬼。
「そうだな。俺の勘違いだわ」と言う矢代の横顔はどこか寂しそうに見える。竜崎とする自分にムカついて欲しかったのだろうか。
矢代が三角の待つ部屋に戻った後、百目鬼は窓に映った自分の顔を眺める。
ムカついている顔をしているかどうか確かめるために。
百目鬼は、矢代と竜崎の関係を気にしている。
百目鬼のこの考えは正しい。我々読者もそれを予想していたし、実際、6巻でその通りの展開になる。
素直にこう思う百目鬼がたまらなく愛おしく、可愛らしい。百目鬼はいわゆる「ワンコ攻め」の典型だが、こういうところが魅力なのだと思う。この時点で、かなり矢代に惹かれていることがわかる。
三角と矢代が向かい合って話している部屋に、百目鬼が酒を持って入る。
「お前基本どーでもいい奴としかヤれねぇからな」
このセリフを三角はわざと百目鬼に聞かせるように言う。三角はおそらく矢代と百目鬼がすでに体の関係になっていると考えていて、「だからお前は、矢代にとってどうでもいい奴なんだよ」と知らせることで百目鬼を牽制しようとしている。
三角の言葉を聞いて、酒を注いだグラスの氷をかき混ぜる手が止まってしまう百目鬼。
漫画ではアニメのように氷の音は聞こえないから、百目鬼がショックを受けたことを、三角の「おい、手ぇ止まってんぞ」というセリフで表現しているのが素晴らしい。
ここで矢代が「………そ」と何かを言いかけるのだが、原作ではこの先のセリフが予想できず、勝手に「そんなことないですよ」なのだろうかと思っていたが、映画では「そういう…」となっていた。
と三角が諭す。矢代は「あいつは無理です。インポだから」と百目鬼が不能であることをばらす。
それを聞いて三角は呆れている。
「俺は今釘刺したつもりだったんだぜ、あいつに」
矢代はなぜかこういうところは鈍感で「意味なかったですね」と答えるのだが、
≪バカヤロー。意味ねぇどころかお前…≫と三角が案じた通り、百目鬼は矢代の影山への気持ちが片思いだったことを知り、ますます矢代に惹かれていくように見える。
百目鬼は、影山医院から帰る時に矢代が後部座席で見せた、寂しげな表情を思い出す。
七原が影山医院で傷の手当てを受けている。百目鬼がその側で治療が終わるのを待っていると、影山と食事の約束をした久我がやって来る。
百目鬼が矢代の新しい部下だと知り、久我は百目鬼に絡む。
と矢代を悪し様に言う久我に、百目鬼はまじめな顔で
と返す。
それを聞いて久我は腹を抱えて笑うが、「俺は頭を尊敬しています。それはそんなにおかしいですか?」と真剣に続ける百目鬼を見て、「笑ったりして悪かった」と態度を改める。
三角に「そろそろ腹ぁ決めとけよ」と言われ、一人煙草を吸いながら悩んでいる様子の矢代。やはり、極道の世界にどっぷり浸かって生きていく気はないように見える。
矢代が百目鬼に車を回すよう電話をすると、久我が出る。百目鬼は久我に誘われて、影山と3人で飲みに行ったのだった。
久我に取られた携帯を取り返し、「頭、すみません。今すぐ戻ります」と焦る百目鬼を、矢代は「戻んなくていい」と突き放す。
と、拗ねて机に突っ伏す矢代が可愛くて仕方がない。
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