もしスナックのマスターがドラッカーの『プロフェッショナルの条件』を読んだら 第1話 仕事の仕方と学び方(その3)
10年くらい前に流行った『もしドラ』を意識して書いた小説です。
自分がよく行くスナックで行われていることを脚色して書きました。
『もしドラ』と違って、テーマごとに違う話が展開する短編連作です。
※ 最初から読みたい方は、もしスナックのマスターがドラッカーの『プロフェッショナルの条件』を読んだら 第1話 仕事の仕方と学び方から読むことをおすすめします。
※ ひとつ前の話→もしスナックのマスターがドラッカーの『プロフェッショナルの条件』を読んだら 第1話 仕事の仕方と学び方(その2)
第1話 仕事の仕方と学び方(その3)
急いで準備したので、8時10分くらいには開店できた。
フッ君は8時半くらいに来た。「さっき何をしていた?」なんていうことは全然言わず、リナ相手に自分のことばかり話している。リナがお気に入りらしく、リナが近くにいるとにやけながらリナのことばかり見ている。こういうタイプの黒髪の美女が好きらしい。
さっき見たことについては全然気にしていない様子なので、ルカはほっとした。
だんだんお客さんが集まってきて、9時前後には、6人。今日も、この時間にしてはまあまあだ。
9時過ぎには、いつものように氷屋さんが来て、マスターからお金を受け取り、「まいどー」と言いながら帰っていった。
そしていよいよ、沢田さんが来そうな時間になってきた。
ドアが開いた。
「いらっしゃいませ」
みんなで声を合わせて唱和した。案の定、入ってきたのは沢田さんだった。
「大いに大登場」
これがいつものセリフである。そしていつものようにほっぺを膨らませて手をぶらぶらさせる変なポーズを始めた。
「どう、このポーズ。なかなかカッコいいでしょう」
「カッコいい――」
ルカの言い方はなかなか気持ちがこもっている。
「今日はなかなかいい言い方だった。頑張って練習したでしょう」
「もちろん」
(うまくいった)
ルカは、心の中だけでにやけたつもりだったが、表情にも出てしまったであろう。
でも、常ににやけているような顔なので、別に変に思われないだろうと思った。
「ルカちゃんは今日もにやけているねえ」
ルカの予想通りだ。沢田さんは、いつもと同じような反応である。
「笑顔、笑顔です。にやけているって言い方がよくありません」
「そうかなあ」
沢田さんは、クビをかしげていた。が、けっこう嬉しそうだった。
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