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聞き合うことで生まれる「開かれた内輪」

お寺の広報代行をする会社、株式会社唯の池谷です。

マスコミ出身の僧侶(浄土真宗本願寺派)でいまのお寺に必要な広報のお手伝いをしています。

電通のコピーライター・阿部広太郎さんが主催する「言葉の企画」という自分が伝えたい言葉や考え方から企画を立案する講義を受講してます。

100人ほどいる受講生の方々の企画を見させてもらったとき、「自分はなぜそれを選んだか」をという視点は市民がお寺を見る視点と同じだと感じました。

矢印を示すことで相手に伝えたいことをイメージしてもらうと同時に、相手もそこに入りたいかがわかる。

講義を通じて、自分が感じたことをお伝えします。

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誰かに自分のことを聞いてもらいたい

「企画とは幸福へ向かう意思」阿部さんが定義した企画の意義。自分にとっての幸福とは「AではなくB(A → B)」として矢印を示し向かわせるのが企画。

受講生の企画を見させてもらうことで、あらためて自分の幸福とは何かを考えさせられました。それは、相手の幸福とは何かを聞かせてもらえたからです。

私が立案したのは「お寺を自分を見つめ直す場所にしたい」という企画です。故人を弔うときに行う法事だけでなく、読経や坐禅を通じて自分のありたい姿を周り故人を弔うときに行う法事だけでなく、読経や坐禅を通じて自分のありたい姿を周りの人と確かめ合うための、開かれた内輪を作るもの。

いま、自分が進むべき確かな道と思えるものが少なくなり、何を選択すればいいかわからない時代。何を企て人から褒めれたいと発信をしても、反応がないだけでなく誹謗中傷を受けることもある。

本当に自分のやりたいことは何なのか、自分の素直な声を聞くにはどうすればいいか。その機会のひとつとしてお寺があると思い、企画を立てました。


私が昨年取材した、世田谷の龍雲寺住職・細川晋輔さんから「お寺に来る人にお寺から悩みを解決するのではなく、本人が答えを出すのに、そっと背中を押すような一言をかけてあげたい」と聞かせてもらいました。

揺らぎない自分のあるべき姿を見える化する。そのための手段として言語化があります。どんな人でもアクセスできる開かれた場所で人と自分の内なる声を聞き合い、いま自分がどんな状態にあるのかを確かめる場所を提供したいと思います。

見つかりに行く努力とは

自分の幸福を表現し、相手の共感を得ることで企画は成立します。しかし、企画を立てても待っていては誰も見つけてはくれません。
そのためには自分の特徴を示すことが重要で、「人をつなぎたい」だけでは誰のために企画をするのかわかりにくい。

そもそも自分はどんなことができる人なのか。

例えば「育児の悩みに抱える人のために」「故人にしてあげられることは何かを考えたい人のために」など、つまりはコレという場や機会を与えることが企画の基本になります。

自分は何をしたいのかを相手に伝えるためには、伝えたい相手がいる場所に行くことや相手に伝えたい言葉を送り続けることが大切です。自分がしたいことの共通点に関心がある人の内輪に自分から入っていくことで企画を知ってもらうことができます。

「放下着(ほうげじゃく)」抱えているものを手放してみる

「放下着(ほうげじゃく)」という言葉があります。一度、自分の持っているものを手放し、自分を見つめ直す。そうすれば見えてくるものがあるという仏教の教え。

お寺には様々な課題を抱えてくる人もいれば、何か不安を抱えてくる人もいます。それに解決策を提示するのでなく、話を聞いてあげること。シンプルですが、お寺がこれまでやってきたことです。

マンツーマンでお坊さんが人の悩みを聞くイメージがお寺にはありますが、意外にもお坊さん無しで人が集まっていることも少なくないです。お寺に集まり、仲間同士で話をしている人たちは総じて明るい顔をしていて、抱えていた荷物を手放してみた感想を聞き合っているような内輪話をするコミュニティができています。

スタンフォード大学の本屋に並ぶマインドフルネスの著書

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スタンフォード大学の客員講師を務める京都・退蔵院の松山大耕さんが大学の本屋さんに立ち寄ったとき、マインドフルネスの著書が立ち並ぶのを見て、その関心の大きさを感じたと同時に、何かに疲れている人が多いのではと感じたそうです。

SNSで発信し続け承認欲求を得ることができるプラットフォーマーがアメリカ発で世界中に拡大した反面、自分の声を聞くことができにくくなったのではと考えられます。


言葉の企画では受講生たちと企画について話し合うというより、聞き合うことを意識しています。
内省する方法や機会はそれぞれ個人で違いますが、自分の内なる声を素直に聞くためにまずは人の話を聞いてみる、そこから自分のしたいことをあらためて咀嚼するステップを講義で学びました。

特徴が見えるお寺に行こう

私が執筆しているお墓のユーザーレビュー「墓地ご契約者様の声」とは、寺院墓地を実際に使った人から「供養とは何か」「なぜお墓が必要なのか」を聞かせていただき、お墓を買う人だけでなく、檀家さんにもお墓を持つことでわかったお寺の価値を再認識してもらう意図があります。

お寺は供養だけではなく地域の人をつなぐ役割があり、最近では「寺ヨガ」や「カリー寺」のように特徴を示して地域の人に開かれたお寺が増えてきました。そのコンテンツは正直言うとお寺でやらなくてはいけない必要性はありませんが、企画コンテンツがきっかけとなり場に集まる人たちと内輪を作ることができます。

内輪を作って、話を聞き合う機会を提供し、誰でもアクセスできる開かれたイメージを言葉で届ける。
お坊さんがこれまでやってきたことを、代わりに市民が主役となって広めていくような企画をしたいと思います。


池谷正明 株式会社唯 yuiinc.com

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#お墓のユーザレビュー


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