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【9月28日発売】実力派作家による、一人の男の再生を描く傑作ミステリ。『弟、去りし日に』(R・J・エロリー著、吉野弘人訳、創元推理文庫)

弟の死の真相を探ることは、
わたしたちの人生を知ることだった。

マイクル・コナリー、ジェイムズ・パタースンらが絶賛した実力派作家による、一人の男の再生を描く傑作ミステリ。

みなさんこんにちは。翻訳班HSです。今回は、9月28日刊行の創元推理文庫『弟、去りし日に』(R・J・エロリー著、吉野弘人訳)をご紹介いたします。

写真:Here it is/Getty Images/装幀:國枝達也

まずは著者R・J・エロリーについて。1965年イギリス、バーミンガム生まれで、代表作に2007年刊行の『静かなる天使の叫び』があります。
『静かなる天使の叫び』は本国だけで35万部を超えるベストセラーとなり、ケベック本屋賞を受賞、バリー賞最優秀英国ミステリ賞最終候補となりました。日本では、2009年の『IN★POCKET』の「文庫翻訳ミステリー・ベスト10」翻訳家&評論家部門で2位に輝いています!
その他の著作に、CWA(英国推理作家協会)のイアン・フレミング・スチール・ダガー賞の最終候補となったCity of Lies(2006)、シークストンズ・オールド・ペキュリアー最優秀犯罪小説賞を受賞したA Simple Act of Violence(2008)などがあります。
大御所作家のマイクル・コナリーやジェイムズ・パタースンらも絶賛している、まさに実力派です。

『静かなる天使の叫び』日本版刊行より15年後となる今年、新作『弟、去りし日に』(原題:The Last Highway)を読者のみなさんにお届けできることになりました。

あらすじは……。

弟の訃報が届いたのは朝食後すぐのことだった。車で何度もかれて殺されたのだという。保安官のヴィクターは、弟とは憎しみ合った末に疎遠になっており、悲しみは湧かなかった。だが弟の10歳の娘から、真相を調べてほしいと頼まれて……。めいとの交流と真実を追い求める旅路が、ヴィクターの灰色の人生を切なくも鮮やかに彩っていく。一人の男の再生を描く、心震えるミステリ。

弟、去りし日に-R・J・エロリー/吉野弘人訳|東京創元社

原書のあらすじを読んで、なんだかぴんときたのですよね。これは何か、ドシッと来そうな予感がするぞ……と。そこで、『彼女は水曜日に死んだ』(リチャード・ラング著、東京創元社)でお仕事をご一緒した翻訳者の吉野弘人先生に原書を読んでいただいたところ、もうこれはぜひ日本の読者にお届けしたい!!ということになりました。さまざまな場面、さまざまな文章が胸を打つ傑作なのです。

本書をひらいていただければわかるのですが、最初から文章がしみじみと良いのです。もちろん、翻訳された吉野弘人先生の訳文のちからも素晴らしくて、ぐっとくる文章が随所にあります。また、さまざまな謎や、真相に迫っていく手がかりが巧みに配置されているので、とにかく先が気になります。まさに、ベテラン作家のうまさを感じました。500ページ台後半という比較的長い作品ではありますが、長いと思わせない圧巻の読み応えです。
そして主人公ヴィクターはもちろん、可愛い姪のジェンナ、保安官事務所受付のバーバラなどなど、印象的なキャラクターばかり。血の通った人間同士のやりとりが、ものすごくいいのです。さらに……。

ネタバレになってしまうので詳しくはぜひ読んでください!!という気持ちでいっぱいですが、もう、ある場面は手に汗握る緊迫感でとんでもなかったです。あんなに緊張したの、記憶にないくらいですわ……。

三橋曉さんによる解説もお見逃しなく。小説の評価や魅力、著者の経歴について、丁寧に解説していただきました。インタビュー記事などから垣間見える、著者の創作の姿勢もたいへん興味深いです。
ミステリとしての評価の部分はもちろんですが、「人と人が信頼し合うことの尊さを改めて肯定してみせる作者の姿勢に、読者もまた安らぎと静かな感動を覚えずにはおれないだろう」という文章にも、深くうなずきました。

先へと続く道と青空の写真を使った素敵なカバーデザインは、デザイナーの國枝達也さんによるものです。作品のエモーショナルさを存分に表現してくださっています。初めて見たとき、シンプルで潔い、まさに本書にぴったりのカバーだと思いました。

最後に。この作品を編集中に、昨年亡くなられた北上次郎さんにぜひ読んでいただきたかったなあ、という思いが頭に浮かびました。きっと、好きだとおっしゃってくださったのではと思うのです。もう叶わない願いですが、ご感想をうかがってみたかったです。

『弟、去りし日に』(R・J・エロリー著、吉野弘人訳)は9月28日刊行です(発売日は地域・書店によって前後する場合がございます)。
心揺さぶるミステリを、ぜひご堪能ください。

(東京創元社HS)


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