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【実施レポート】ソーシャルファームセミナー「ソーシャルファームの経営者に聞く 多様な人材が集まり、活躍する企業の採用と育成術」<後編>

2024年2月27日(火)、都内で開催された「多様な人材が集まり、活躍する企業の採用と育成術」についてソーシャルファームの経営者らに聞くソーシャルファームセミナー。
講演の後、多様な人材が集まる企業での採用や定着支援、育成の在り方などについて、パネルディスカッションが行われました。

【登壇者】
 中村陽一さん(一般社団法人社会デザイン・ビジネスラボ 代表理事)<ファシリテーター>
 小関智宏さん(ディースタンダード株式会社 代表取締役)
 柿島拓也さん(株式会社拓実建設 代表取締役)

前半はこちら。


ソーシャルファームにおける採用活動

中村氏(ファシリテーター)

 まず、中村さんから採用活動の方法や経緯、背景について質問が投げかけられました。
 小関さんは「東京都認証ソーシャルファームとなったことで、就労支援機関の方と会う機会が増えました。採用の種になるインターンの候補者とたくさんお会いする流れができ、今一番多い事例になっています」と、認証ソーシャルファームとなってから採用活動が広がっている現状を紹介しながら回答。
 柿島さんは「当社の主な採用活動としては、私が全国の刑務所や少年院に出向いています。ここ2~3年は社内の理解を得るために職長や、出所者出院者も一緒に連れていきます」と答えました。同行する従業員が刑務所の職員に出所後も頑張っている姿を見せることにもなり、刑務所側から「きちんと定着している」という評価をもらえるようになったといいます。「それが『拓実建設にまた紹介しよう』という流れにつながっているのではないかと思います」と話しました。

採用活動における留意点

 続いて中村さんは「今回お話いただいた採用に関するエピソードは、一般的な受け止め方として『大変なのでは』と言われることも多いと思います。採用に関して、あるいは採用後を見越して留意している点はありますか」と問いかけました。
 小関さんはIT企業として「インターン=就職ではない。少なくともパソコンに触ることに抵抗がある方には向かないので、最低限、本人の働く意欲と適性は確認している」と話しました。
 柿島さんは「(受刑者に対しては)犯罪を起こした背景をしっかり聞くようにしている」と答えました。

定着してもらうために気をつけていること

 話題は、「採用後、働き始めてから定着してもらうために気をつけていること」というテーマに移りました。中村さんは「採用された後、会社の仕事になじんで、人材として定着してもらう必要があります。定着してもらうために特に気をつけていることやサポートしていることは何でしょうか」と尋ねました。
 これに対して、小関さんはまず「ITのエンジニアは、スキルをつけることによって給料が連動して上がっていきます。ですので、定着してもらわないと給料も上がっていかないのです」と業界の仕組みを解説。定着できた人々とは「5年10年と長くつながり続けることになり、本当の意味で長い付き合いになっている」として、そうした経過の中では「従業員同士がつながっていける場としてサークル活動や親睦会などさまざまなイベントを開催しています」と答えました。
 柿島さんは「プライベート面で、現場の人間関係がうまくいかないといった悩みを抱える人も多い」という課題を挙げました。その対応策として、仕事での現場作業を教える職長とは別に、2人の工務課長に担当制で従業員の悩みや愚痴を聞く態勢を整えていると説明しました。寮に帰ってきた後、工務課長が部屋で従業員の愚痴を聞いてあげるといいます。さらに「建設業にはよくあることですが、飲み会もストレスの発散や悩みを聞く場にもなっていますね」と柿島さん。そうした場で、柿島さん自身が従業員の抱える悩みを聞き出すこともあるといいます。また、現場で人間関係のもめごとが起きたときは、当事者2人だけでなく会社側も加わって話し合うことで、円滑に解決できるそうです。
こうした回答を聞きながら中村さんは「日ごろから丁寧に相手の方の様子を見ながらやりとりをしていくというのは、ソーシャルファームに限らず、大切なことですね」と共感を寄せていました。

小関氏

人材育成の好循環

 さらに、中村さんは「会社の中で人材として育っていってもらうために、人材育成に関して心掛けていることは何でしょうか」と問いかけました。
 小関さんは、インターンを通じてひきこもりの若者を採用する取り組みの中で、同じ経験をしてきた先輩と後輩という関係性に注目していると言います。「同じ枠組みから育った先輩が後輩の面倒を見るとき、自分が通ってきた道なのでフォローの仕方が我々よりも上手だったりします。時間はかかりましたが、先輩が後輩の面倒をきめ細かに見ていく態勢ができたことが、人材育成としても機能していると思います」と話しました。
 柿島さんは「現場作業に必要な技能資格を取得することに力を入れています」と答えました。このために会社負担でお金を出して資格取得を支援しているといいます。先輩が後輩に良い影響を与える傾向にあり、「先輩が国家資格に合格したりすると、若い子が『来年は自分も挑戦したい』と頑張る。プラスの方向へいっていると思います」と話しました。


柿島氏

取り組みの原動力とは

 質疑応答では、「社会活動は意義あるものだと思うが、志がある人が頑張らないとできないイメージがある。自分にもできることはあるのか。どこからスタートすればいいのか」という質問が出ました。
 柿島さんは、「私がやっていることは社会活動ではなくあくまでも採用活動の一環」と捉えた上で、「車で全国の刑務所を次々回っていると『何をやっているんだろう』という気持ちになることもあります」と話します。それでも、全国の刑務所を車で訪問する柿島さんに対して、中村さんは「その原動力は?」と問いかけました。
柿島さんは、再出発をサポートする従業員から「社長のおかげで、僕はまた真っ当な人間になることができました」と言われたエピソードを紹介。また、「職場に定着して一緒にお酒を飲んで笑っている姿を見ることが原動力になる」と話しました。
 小関さんは、「ソーシャルファームの取り組みではひきこもりの方たちが輝くのはもちろんですが、その方のお父さんお母さんがものすごく感謝してくださいます」と回答し、本人だけでなくご家族の反応も原動力になっていると言います。さらに最近の傾向として高学歴で大学を卒業して燃え尽きてしまう状態がよく見られるとのこと。「目的がなくなってしまっているんですね。そこを我々がソーシャルファームの取り組みでどうやってリーチをしていけるか。企業としてバトンを受けているような感じがして、頑張らなければと思っています」と今後の取り組みへの抱負を語りました。
中村さんは、「小関さんと柿島さんは、就労に困難を抱える方に対して、『支援の手を差し伸べる相手』ではなく、『一緒に仕事をする相手、会社を発展させてくれる一人の人材として見ていて、同じ目線の高さから接しておられる。そういうことが一番大切なのではないかと感じました」と話しました。


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