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世界観に没頭、村田沙耶香オススメ作品3選

この5年で、読んだときに衝撃を受けた小説といえば、真っ先に頭に浮かぶのが『コンビニ人間』です。第155回(2016年上半期)に芥川賞を受賞したこの作品は、かなり強いインパクトがありました。

以前書いたnote記事はこちら。

作者の村田沙耶香さんは、芥川賞受賞前にも名前は聞いたことがありましたが、作品を読むのは『コンビニ人間』が初めてでした。そこから筆者の中でヘビーローテーション作家に入って、新作を追うだけでなく、過去作品も読むようになりました。

村田沙耶香さんとは?

千葉県出身、2003年 『授乳』でデビュー。『ギンイロノウタ』で第31回野間文芸新人賞受賞、『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞、『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞と主要新人賞三冠を達成しています。

物語を描き出す目線が秀逸で、作家仲間からは「クレイジー沙耶香」と呼ばれる事もあるようです。『コンビニ人間』の芥川賞受賞時に村上龍さんは「この十年、現代をここまで描いた受賞作は無い」と話しており、現代社会を独特な目線でとらえる作風は唯一無二です。

それでは、オススメ作品3選です。

・『授乳』

村田沙耶香さんのデビュー作品です。『授乳』『コイビト』『授乳』の3作品を収録。デビュー作からこの作風が完成されている感じはすごい。特に表題作の『授乳』はかなりの問題作。

主人公は受験生の「私」。家庭教師に来た大人しい大学院生の「先生」に、「私」の加虐性が高められていき、、、

どういう感性で世の中を見て入ればこの作品が書けるのか、村田沙耶香さんの感性は本当に恐ろしい。壊れた人間の目線を内側から見ているような静かな恐怖がある作品です。

・『殺人出産』

タイトルからしてインパクトが十分の作品。村田沙耶香さんのファンの間で評価が高い作品という印象です。『殺人出産』『トリプル』『清潔な結婚』『余命』の4作品が収録されています。

10人の出産で、1人を殺す権利が与えられる「殺人出産システム」で人口を保つ未来の日本が舞台。この制度を利用した「産み人」は社会的にも高い評価が与えられている。「産み人」を姉に持つ、妹が主人公の物語。

『殺人出産』は現実離れした世界観なんですが、どこか「現実世界を曲がった目線でとらえた感覚」があるんですよね。4作品ともに現実世界を村田沙耶香さんの目線で再構築した感覚に陥ります。筆者的には表題作と同じくらい『清潔な結婚』がオススメです。

・『コンビニ人間』

芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの代表作。読んだことはなくても、作品名は聞いたコトがあるって方も多いんではないでしょうか。

主人公はコンビニバイト歴18年の古倉恵子。コンビニの定員である時しか世界とつながっている実感がない、「店員」でなくなっている時はどう過ごせばいいのかわからない。ある日、新人バイトが入ってきて、、、

この作品の主人公は決定的に「狂ってる」んですよね。どんな日常の景色も「狂ってる」目線で見ると、「狂って」見える。主人公自身も自覚があって、普通の人から見れば自分は『あちら側』の人間で『こちら側』の人間との間の溝は深いコトを理解してるんです。

村田沙耶香さん作品の真骨頂のような作品です。

村田沙耶香さんの作品は他にも推したい作品はたくさんあります。作品を読めば、作家仲間から呼ばれる「クレイジー沙耶香」のニュアンスもよくわかります。少し違った目線で世界を眺めたい方は、ぜひ村田沙耶香さんの作品を読んでみてください。

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