【小説】朝
身体は重いし、頭ははっきりしない。水を飲もうと手にしたコップも地面に落としてしまった。手の感覚も鈍くなっている。
もう、あいつなしでは生きていけない身体になってしまったか。やはり朝からキメないと1日が始まらない。
最初のうちは、出て行く金が気になって制限していた錠剤も、慣れてしまえばもうなしには生きられない身体になる。きっとこんな奴らはそこら中にいるんだろう。
朝から一粒いくか。いつもの場所に手を伸ばした。
、、、、、、ないっ、、、、、
錠剤があるはずの場所には虚空が広がっていた。戦慄がはしる。焦るな、カバンの中にも予備を入れておいたはず。カバンをひっくり返すが、ここももぬけの殻であった。
やつのない中で今日をはじめなければならないのか。身体だけでなく、心も重力に負けそうだ。
仕方ない、ないなら入手するしかない。クスリもなしに外に出るのは恐怖しかないが、そのクスリを得るために歩くのだ。幸いにして、そう遠くない場所に入手するあてはある。行こう。
外に出て歩くたびに身体は重くなり、もはや頭痛を感じ始めていた。今日はいちだんと厳しいな。気のせいか、周りの人間もわたしを避けている様に感じる。そんなに深刻な顔をしているのか。
一歩一歩踏みしめながら目的地まで歩く。どうにか辿り着けたようだ。大声で叫ぶ。
「すいませーん!花粉症のクスリあります?」
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