最年少芥川賞受賞作家:綿矢りさオススメ作品3選
筆者は芥川賞受賞作家の作品を好きになる傾向がある。大衆文学とされるものよりも,純文学作品とされる分野がどうやら好みらしい。
以前書いたnoteはこちら。
以前のnoteでもふれたとおり、とくに綿矢りささんの作品はとても好きで、刊行された作品はすべてを読むようにしている。彼女の描く主人公達(たいていは女性だが)の心の機微に共感を感じるコトもあれば、理解できない他者として魅了されるコトもある、とにかく描かれる人間にとても惹かれるのだ。今回はそんな綿矢りささんのオススメ作品3選を紹介したいと思う。
綿矢りささんとは?
京都府生まれ。高校在学中に『インストール』で第38回文藝賞受賞、早稲田大学在学中に『蹴りたい背中』芥川賞受賞とはやくから作家として広く知られるようになる。「太宰治の作品に引き込まれ、作家になろうと決めた。」と話しており、大学の卒業旅行でも太宰治の生家の斜陽館に立ち寄るなど、大きな影響を受けている様子。『インストール』『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』は映画化もされている。
それでは、オススメ作品3選。
・『ひらいて』
まずは筆者が綿矢りささんを決定的に好きになったきっかけの作品『ひらいて』。
主人公は女子高生の愛、容姿に優れて頭もよく、華やかな学生生活を送っている。彼女が心惹かれていた同級生に、手紙のやりとりをする相手がいるコトに気づいたトコロからストーリーは急加速していく。
この作品の魅力は愛の持つ「むこうみずの狂気」(この表現は文庫版の後書きでタレントの光浦靖子さんが使っていた)。愛のとる行動はもうむちゃくちゃで、気持ちのいいものではないと思う。ただその内側のエネルギー量や自分にはない感情に、筆者は完全に愛に惹かれてしまったのを記憶している。
この「むこうみずの狂気」は一読の価値はある。
・『大地のゲーム』
『大地のゲーム』は綿矢りささんの作品の中でも、あまり有名な方では無いかも知れない。ただ筆者この作品に”綿矢りささんらしさ”みたいなものを感じている。
首都が巨大地震に見舞われ、第二の激震がくると政府が警告してる世界。二度目の地震に備えながら大学構内に暮らす学生たちとその“リーダー”を描く物語。
綿矢りささんの作品は、現実の中で暮らす女性の心の機微を描くコトが多いので、この作品は世界観自体は綿矢りささん作品の中では例外かもしれない。ただ物語の中で描かれる人間臭さや感情の動きに”綿矢りささんらしさ”を感じるのだ。
何作か綿矢りささんの作品を読んだ方におすすめしたい作品。
・『蹴りたい背中』
最後は芥川賞受賞作にして代表作の『蹴りたい背中』。おそらく『インストール』と並んで有名な作品ではないだろか、100万部を超えるヒット作は芥川賞作品のなかでもあまりないハズ。
クラスのあぶれもの2人の触れあいと成長のお話。いわゆる”オタク”のにな川と主人公、ふたりの奇妙な関係性を描く小説。
単純な恋愛物語でも青春物語でもなく、どこかひねくれていてその分リアルで、よっぽど光の中を歩いてきた人以外はどこかでこう言う感覚を持っていると思う。19歳で芥川賞受賞として当時はとても話題になったが、きっとその年齢でなければ『蹴りたい背中』は書けなかったんではないだろうか。
筆者は綿矢りささんと同世代で、芥川賞受賞の時のフィーバーは記憶に張り付いている。綿矢りささんの描く人間は、いつも『蹴りたい背中』のように「ひねくれていてリアル」。綿矢りささん自身の年齢とともに、だんだん大人が描かれていくようになっているが、それでもこの点は共通しているように思う。
これからもずっと「ひねくれていてリアル」で魅力的な人間を書き出してほしいと筆者は思っている。
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