第二話「レジ袋は強制でいい。」
悩んでいた。
マスクの男は悩んでいた。
おにぎり二個、おちゃのペットボトル、チョコモナカジャンボ。
「レジ袋お付けしますか?」
大手チェーンのコンビニのレジにて、割腹のいい東南アジア系の女性、(恐らく30前後)が流暢な日本語で言ってくる。
店員の名札には「小林」の二文字が、ご主人が日本人なのか、たまたま休みの小林さんの制服を今日は借りているのかは謎だが、それよりも問題は、咄嗟の判断力が求められる「レジ袋いる、いらない」だ。
ヒーローはいつも咄嗟なのだ。
おにぎり「持てる」
+おにぎり「持てる」
+お茶「ギリ持てる」
+チョコモナカジャンボ。
「ちょっと微妙」
「両手使えば持てる。」でもなるべく片手でスマートに持ちたい。でもちょっと前まで無料だった「レジ袋」に、3円を払う。
これがシャク。プチストレス。
男の顔を覆うマスクからは表情はわからないが、明らかにこれ以上の「間」は不自然だ。
「あ、くだ、さい…。」
慣れた手つきで小林さん(?)がレジ袋に商品を入れ、持ち易い様に持ち手をくるくると合わせてくれる。
男はヒョイ、とそれを取り、入口を出た。
その時である。
「ひゃあ!」
!!!
振り返るマスクマン!
自動ドア閉まる!
「………。」
何か悲鳴の様な声が一瞬聞こえた気がしたが、ドアが閉まって聞こえない。
が、先程まで自分がいた場所に、季節外れな黒い雨合羽の様な服を着た男(だと思う)が立っている。
(あれ?今悲鳴した?)
小林さん(?)の姿を見ようにも、入口のポスターやらレジ横のコーヒーマシーンのせいで小林さん(?)の姿がよく見えない。
またもや咄嗟の判断だ。
何も無ければ、買い物が終わったのにUターンするという謎行為。まぁこれはさしずめ「弁当に箸が付いてなかった。」の理由でクリア出来そうだが、いかんせん今回はご飯と呼べる物はおにぎり二個だ。
どうする? 戻るか?orスルーか?
マスクマンは、マスクの中で軽くほくそ笑んだ。
(おしぼりひとつ。これだ!)
うぃぃいーん。ティロティロティロ〜♫
「早く出せって言ってんだよ!!」
ガチだ!!
ガチのコンビニ強盗が目の前にいる。
ダボついた服装からはよくわからなかったが、手には確実に刃物の様な物、いや、もう包丁(断言)を握り締めている。
「へうっ!へうっ!」
小林さん(?)はわかりづらいが、青ざめている感じ。そして、「へうっ!」はHELPの意!つまり、彼女はやっぱり日本人じゃない。
「くそっ!」
そう言うと犯人はレジを乗り越えて小林さん(?)横に降り立った。
「おぉおお〜!」
小林さん(?)は悲鳴(?)をあげる。
「うるせぇ!畜生っ!どう開けんだこれ!」
自分は目立つと思う。
ドローンで仮に金曜日の渋谷のスクランブル交差点を撮影したとしても、そこそこの距離までは認識出来ると思う。それはわかってる。
だって、ヘルメットみたいなマスクをしているから。何故って…?
「何だおめぇはぁ!!」
「ヒーローだからじゃこらぁぁあああ!」
「!!」
咄嗟。
ヒーローはいつも咄嗟なのだ。
犯人を羽交い締めしている眼鏡の中年男性が「こら!こらぁ!」と怒号を発している。
暴れる犯人。
「こらぁ!」抑える眼鏡。
もつれて眼鏡が斜めになる。セットしていたであろう髪の毛は崩れる。それでも眼鏡は犯人を離さない。
「あ、あなた!警察!警察呼んで下さい!」
「あ、はい!」
パトカーに犯人は乗せられ、それを見送るマスクマンと眼鏡。警察官に概要を聞かれたが、ほとんど眼鏡が説明をしてくれた。
眼鏡はコンビニの店長で、レジ横にある事務所から一部始終様子を伺っていたらしく、いつ飛び出そうかという時に丁度自分が入って来た所で好機が生まれたらしい。
店にも被害がなかったとの事で、警察もあっさり引き上げて行った。
「いや、怖かったね。でも、妻も無事だし何も無くて良かったよ!君もありがとね。」
眼鏡の店長の名札には「小林」
騒ぎのお陰でコンビニ周りには人だかりが出来ていたが、店長が店に入ると散り散りと掃けて行った。
レジ袋に入れていたせいで、商品も無事だ。
続く
次回予告!
謎のマスクマンは謎のまま!少し扱いにも困ってる!一体どうなる第3話!もっと早く続き書くつもりが、ログイン上手く出来なかったらしいよ!色んな不安が交差する第3話を待てっ!!
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