見出し画像

39歳、妊娠する15 うつ病とバースプラン

バースプランとは……?

無事、9ヶ月を迎え足元が見えないほど膨らんだお腹と歩む日々。昼夜問わず、動き回るお腹の中の子。産休に入ったからなのか、一気に緊張感が抜けたのか、毎日とにかく眠さもやばかった。本来であれば、きっとお昼寝もたっぷりしてのんびり過ごす(それこそ編み物したり…とかね)のだろうけど、今の我が家ではそれをすると家の中が壊滅的に荒れる。そう家事をする人がいないから。
だから、眠さに負けている場合ではない。

ただ我が家は夫のせっかちな性格のおかげで、結婚前の同棲時代からすでに食洗機も導入されて、結婚後はすぐにルンバも稼働し始めたのでセットだけすれば何とかなる。ぶっちゃけこの2つがなければ、多分、もう立ち行かなくなってた。何とか家の中の治安が守られていたのは、この2つがあったおかげ。あまり食洗機ある家ってないのだけれど、絶対に入れるべき家電。1つ家事作業が減って時間できるからね。そんなわけで昼寝をする前にとにかく食洗機に食器を詰め込むとボタンを押してソファに寝転んだ。

が、家事を片付けたからって本当は寝転んでいる場合でもないのだ。名前と予定日だけが書かれた真っ白な「バースプラン」と書かれた用紙を明日、提出しなければいけないから。

妊婦健診も予定日まではあと3回しかない中で、次の健診ではバースプランの希望を伝えてください、と。そもそも5ヶ月の時点でもらっているバースプランの紙がいまだに真っ白っていうのも自分でもどうかしてると思う。どんなお産にしたいか、と聞かれて、うつ病の夫を前にもはやどうするのがベストなのか分からないから仕方がない。「絶対立ち会いしたほうがいいよ」職場の先輩ママさんたちは言っていたけど、いまいち立ち会ったほうが良い、というメリットがずーっとずっと子供を産む産まないの前から、思い描けないというのが正直なところ。映画やドラマではすごく感動的に描かれているけれど、お産って壮絶だし命がけ。そして色々丸出しになるし、映像では伝わらないリアルな状況も多々あるわけで……。そして、夫にとっての心配事は血、すごく出血すること。自分の血液検査の血を見て倒れるレベルの人なので、私から大量に出血している様子や誕生した子が血だらけなのとか絶対に耐えられない。あとは何というか、個人的にすごくいきんでいるところなどを見られたくないかなぁと思ってしまったため、立ち会いはいいかな、、、と。ただ、直前までは隣にいて欲しいから、そのことと、無痛分娩の希望を書いておいた。

健診は2回だけ。

▲実家に帰った時は高級中華に舌鼓!

夫が健診に一緒に行ってくれたのは2回だけ。最初の健診の時と安定期に入った時。と、書くと少なくて悪いように思えるけど、健診の回数をこなしてくるとそれに関しては普通なのかな??と思った。妊娠初期は健診ってこうエコーで子を見れるチャンスだから普通は二人でいくものなのかな、と漠然と思っていて、全くもって行くそぶりも見せない夫の様子を(それもどうかと思うけど……)病気だから仕方ないよね、と自分に言い聞かせていた。でも健診に来ている他の妊婦さんも一人で来ている人が大半。日々変化していく自分の体と中にいる子供の様子はある意味母にしか分からないし、と考えたら、夫がいようがいまいが、結局はみんな母は妊娠中、どこかで孤独な戦いをしているのかもしれない。あとは健診の時の会話が意外とストレス解消や自分だけの相談の時間という役割もあるのかも。

バースプランの相談をする日、天気が悪く低気圧のせいもあったのか朝から全く起きてこない夫のスマホに「健診行ってくる」とだけ書いた付箋を貼って家を出た。昨夜も今日が健診で病院に行くことを前もって伝えてはあるが、必ず寝起きはうまく頭が働かないのかその日の予定を一旦忘れているため、私がいないことで焦らないようメールではなく、あえて1番目に付くところに付箋の手書きメモを書く。本当は夫自身に忘れないようアウトプットして欲しいから、メモするように言うけれど全くもってやろうとしないため、仕方なく私が実践している。

バースプランの相談は案外サラッと終わり、私が懸念している血の話をしたところ、ちょっと大袈裟すぎませんか?と言われるかと思いきや、よくそれ言ってくれました、とお医者さんと助産師さんが分かります、とうなづいた。
「たまにいるんですよ、本当に卒倒しちゃうパパ。そういう方って無理してて、苦手だけど大丈夫、頑張ります、って言うんですけど、割と一定数倒れる方っていらっしゃって……。お産でそれどころじゃないタイミングでパパが倒れちゃって、分娩に支障をきたすこともあり。血が苦手、とご自身で自覚しているのであれば、立ち会いはしないほうがいいと思います」と。
と、いうわけで、意外とすんなり受け入れてもらい、バースプランの提出が無事済み、あとは本番を待つのみ。しかし、この日の健診でも子宮口は全然開いてないし、兆候は全くない、ということと羊水量もたくさんあるため、もう少し先になりそうとのこと。なるべく予定通り産みたいんだけどなぁ、なんてこのときは、のんびり思っていた。

いつ治る?

「……おかえり」
今にも消え入りそうな夫の声にめげそうになる気持ちをグッと自分で支えて、「ただいま〜、まだ生まれそうにないって」と明るい声を絞り出す。「そう、どうするのがいいって?」と、興味があって聞いているのか、反射なのか微妙なところ。とりあえず、動くのがいいみたい、と話しながら、どこか上の空の夫に立ち会いはナシだけど分娩に入るまでは一緒にいて欲しいから、そのバースプランを出してきたことを伝えた。
「いつ治るかな、もう治る?良くなってる?」
病院に行き始めてやっと2ヶ月ちょっとが経っただけなのに、治らない、治っているという自覚がないため明らかにイライラしているのがわかる。せっかちさと通院自体2ヶ月も続けたことがないために余計にストレスが溜まるんだろう。
うつ病についての本や資料もたくさん読んだけど(むしろ育児書より読んでる)そこに書いてあるのは、うつ病の治療はすごく長くかかる人もいればそうでない人もいること。そして、厄介なのは患者本人には少しでも良くなってきていても感じ辛く、良くなってきた!と思ったのに悪くなったりと、揺り返しがものすごくある病気だということだった。そのために焦りが出てくると、どの本にも書いてあった。あとは治療を途中で投げ出したくなる、とも。
「まぁまだ2ヶ月しか経ってないんだし、まだかかるんじゃないかな。でも、表情は少し良くなってきてるよ、2ヶ月前なんて正直本当に酷かったもん」なるべく普通のトーンで、思っていることをそのまま伝える。ここ数日はこの繰り返し。予定日も近づいてきているから余計に焦るのはわかる、わかるけど……。大きなため息をついてソファに寄りかかる夫を慰めながら、ルンバに掃除を頼んだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?