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クール教信者先生インタビュー【旦那が何を言っているかわからない件/小森さんは断れない!etc……】

現在の漫画界では、2ちゃんねるのvip板から生まれた漫画投稿サイト「新都社」への注目度が日に日に高まっています。ONE先生の『ワンパンマン』に『アイシールド21』村田雄介先生が作画に付いたり、小学館のweb漫画サイト「裏サンデー」に、原作者として次々に抜擢されるなど近年話題には事欠きません。クール教信者先生はそんな新都社作家の1人です。飛ぶ鳥を落とす勢いのクール教信者先生にインタビューを敢行しました!

クール教信者の「源流」を探る

まずは新都社の存在を知ったきっかけを教えてください。

クール教信者先生(以下クール):元々私は2ちゃんねるで絵を描く人間だったのですが、当時の新都社の本スレが、たとえば「初音ミクアニメ化!!」といった釣りのようなスレタイを使っており、私がそのスレタイに二回ほど釣られてしまったのが知ったきっかけです。

それは、ファーストコンタクトとしてあまり良いものでは無かったと思うのですが(笑) 第一印象はどのようなものでしたか?

クール:当時ミクは出始めで旬だったので、それなりに期待してスレを開いたのですが……とはいえ、釣りは慣れっこでしたので。とりあえず新都社の中を見て「こんなものもあるのか」と思いました。当時は、リアルにもネットにも漫画を描く知り合いが一切いない感じでしたし、スレ内で絵描きの人と少しお話したりはしましたが、結局のところ一期一会という感じでした。ですので、この新都社という所は、2ちゃんで漫画を描く人間の溜まり場なのかな、それなら自分にも仲間ができるかなと思って参加してみました。当初は軽く投稿して去るつもりだったので、ここまで長く滞在したのはやっぱり楽しかったからなのでしょうね。

どちらかというと気軽な気持ちで始められたものだったようですが、最盛期には週1~2回更新という非常に早いペースで作品を上げられるなど、かなり精力的に活動をされていました。その原動力はなんだったのでしょうか?

クール:個人でやるときに私にとって一番重要だったのは、「描くことを習慣化させる」ことでした。コーヒー飲んだら1p、ゲームやったら1p……といった積み重ねですね。そんな感じで、暇な時間はだいたい描いていました。あとは何というか、それぐらい暇な時間が有り余っていたということ、とにかく自分が描きたいことを描いていたというのが大きいと思います。

更新ペースを守るために、何か自分の中で守ろうとした決まりごとがあったんでしょうか。

クール:決まりごとは特にないです。WEBの活動は気ままにやるのが大切だと考えています。

気ままさ・自由といえば、たとえば『ピーチボーイリバーサイド』では恋仲になった主人公とヒロインの「本番」シーンまである訳ですが……

クール:WEB漫画ならではの自由さですね。少年漫画的展開もエロ漫画的展開も自由に入れ放題なわけです。一般紙ならばしないといけない自主規制がない、というのも伸び伸びできて良いものです。正直エロいシーンを挟むときが、描いていて一番楽しいですね。

ちなみに、そうやってストーリーに挟んでエロいシーンを挟むのと、単体でエロいシーンを描くのはどちらが楽しいのでしょうか……?

クール:どっちも違った楽しさがありますね。エロ単体で描くのは素直に自分の欲求を満たせますし、ストーリーの合間にエロを入れるのは本来ならカットされるべき部分を描写できるという気分の良さがあります。

ちょっと脱線してしまいました。話を戻すと、Web漫画で人気を得るためには内容の面白さは大前提として、更新ペースを上げて人の目に触れ続けるというのはやはり大事なのでしょうか。

クール:人目に触れるというのはたしかに大事ですが、私の場合人気を得る為というより、自分の漫画をわかってくれる人を探す方が大事の比重が大きかったですね。

読者の反応がコメントという形でダイレクトに返ってくるのが、新都社をはじめとしたWeb漫画らしさだと思うのですが、コメントにはどれくらい目を通されているのでしょうか?また現在新都社のランキングで上位を維持している本作ですが、それだけたくさんの人が読んでいるということが描くときのプレッシャーになったりはしないのでしょうか。

クール:コメントには、全て目を通しています。反応を頂けたことを大事にしたいと感じています。たくさんの人に読まれていることを意識はしていましたが、とはいえプレッシャーはなかったですね。人に見られても問題ないからネットに晒すってことができると思うので。

自分もサークル内で作品の意見を聞いて回ったりすることはあるのですが、やはり人によって感じ方は千差万別のようで、たとえば同じシーンでも全く反対の意見が出たりします。そのようなとき、先生はどのように対応されているのでしょうか。

クール:漫画を描く上で、どんな感想が返ってくるのかを予想したりすることがあるのですが、その時はよい反応と悪い反応、両方の予想をあらかじめしておくというのが大事です。実際に描くときは、とりあえず都合のよいことを考えながら描きます。

悪い反応も想定するのはどのような意味があるのでしょうか?

クール:良い反応に対しても同じことがいえますが、自分が予想できた悪い反応というのは、それもまた同意できる意見です。ある種、自分の考えに共感してくれている人ともいえる訳です。 それに、感想には二面性が出ることが多いです。「面白かったけどここがこうだったらよかったのに」とか、逆に「つまらなかったけどここはこうしたら面白くはなったかな」といったものは少なからずあります。それぞれ比重はありますが、常に作品に対する感想を、自分の漫画にも自分自身でなんとなく持ちながら漫画を描いているところがあります。これは強く意識しているとかではなく、作品を描く際の前提条件として頭に置いておく、みたいな感じでしょうか。

新都社時代の代表作!『ピーチボーイリバーサイド』

ここからは、新都社での代表作『ピーチボーイリバーサイド』についてもお聞きしていきたいです。本作は、当初もっと短い話で終わらせる予定だったそうですが……

クール:短編を予定していたので最初の五話くらいで終わらせるつもりでした。描いている内に、「まぁ続けようかな」と気まぐれを起こしまして段々と長くなりました。

桃太郎やエノク書などがお話のベースになっていますが、日本の昔話と西欧の聖書を組み合わせようと思った理由は何でしょうか?

クール:桃太郎の桃の根源がどこにあるんだろうというのが気になっていたので、自分で創作してみたというのが一つ。それに加え、知恵の実はだいたいりんごに例えられますが、それならその反対の「●●の●(ネタバレにつき伏字!)」ってどんな形をしているんだろうと思ったんですよ。だったらその形は桃じゃないかなと。
桃は中国あたりでいろいろ生命的な意味に絡むことが多かったし、それでまぁごちゃごちゃと組み合わせたくなったわけですね。

ネタキャラと見せかけたホーソンや遊鬼達にも惚れ惚れするほどカッコ良いシーンがあったり、レジェディア編に登場したドメニカは、キャラの印象が話数ごとに次々とひっくり返るなど、いわゆる「どんでん返し」が作品で散見されるのですが、何か作劇上のこだわりはありますか?

クール:ここら辺はかなり適当な部分がありますね。計画性なくキャラを作っていった部分です。今後こういった展開にするには、このキャラがいるとかこのフラグを前もって作っておくとか、どんどん後付けで増やしていく感じです。全編に渡ってはきっちり描こうとしていないところが、私にはありますね。

逆にきっちり作りすぎていないことが、展開の柔軟性にもなっているのでしょうか。

クール:後からこっちの展開のほうが面白いと思いついたときに、あまりきっちりしすぎていると変えにくさを感じてしまうので、先の展開を深く練ったりはしませんでしたね。
とはいえホーソンやドメニカの話は、ある意味後付けサブシナリオみたいな部分がありますし、そこはカットしないといけない部分を描写してしまったということにより、かえって冗長になってしまったところだと感じますね。そこのあたりの調節は、今後していかねばなと思います。

きっちり一つ一つ展開を決めないという話でしたが、物語の大まかな構想はすでにまとまっているのでしょうか?

クール:まとまってはいますが、今は描く時間がないですね。最近はまるで更新できてなくて申し訳ない思いですが、いつか時間を作って一気に更新したいです。

先生にとって「新都社」とはどういう存在ですか?

クール:居心地のいい場所ですね。その一つが、先ほど挙げた「感想の二面性」を直に感じられることです。それと、適当にだべる相手がいることや、自分の創作をある程度評価してくださっている方もいるというところでしょうか。

ここで少し小休止ということで、pixivなどにあげられているイラストについて。ファンの方なら先生のpixiv絵にある一定の偏りがあることをご存知かと思われます(笑) 個人的に、男の子にショタが多いのがグっときます。

クール:同志ですね!そもそも男が受けのジャンルが少ないのもあって、逆レイプ搾精系のエロ漫画がどんどん出てきてほしいなと個人的に思っております。

すごい量のイラストを投稿されていますが、「漫画を描く息抜きに絵を描く」といった感じなのでしょうか。

クール:そうですね。ラクガキをするとスカっとします。欲望消化というか、一発抜いて落ち着くみたいな感覚ですね。

twitterでも盛んに落書きをアップされていますが、どういった時に描かれるのですか。

クール:わけもなく勃起していたときです。描いて自分を高ぶらせてから他のエロ媒体に手がのびるので、普通の人に比べ手順が一つ増えたような感じですね。

いわゆる「自給自足」はできていますか?

クール:絵では無理でしたがテキストなら成功したことがあります。自分で描いたテキストを、時間が経って忘れた頃に読み返したらいけました。

ターニングポイントは突然に

ここからは、商業での活動についてお聞きしていきます。まずは初単行本となった『旦那が何を言っているかわからない件』について。この作品を描こうと思われたきっかけはなんだったのでしょうか。

クール:pixivでも漫画を描こうかなという気持ちがふっと湧いてきたときに、昔のノートを見返してみたら以前に描いた初期段階の漫画が載っていて、懐かしくなって描いてみたのがきっかけですね。

その「旦那が~」の元となった漫画は、2ちゃんねるの新ジャンルスレに投稿していたとか。そのときは友人をモデルに描いたそうですね。

クール:「回転寿司屋のバイトのVIPPER」ですね。友人がモデルだったのはオタク部分とビジュアル部分という初期だけで、ハイテンションなとことかは一般的なVIPPER属性から来ています。友人の反応は、「全然似てねー」とのことです。まぁそもそも結婚してませんしね、彼。

主人公の奥さんであるカオルさんのキャラクター像はどのようにして固まっていきましたか。オタクな旦那の相手として、話が通じるオタク同士ではなく、普通の一般人キャラにしたのはなぜでしょうか。

クール:サバサバした女性が結構好きなので適当に作りつつ……オタクと一般人のカプは、お互いに空気を読めば割りと成り立つかなと思いながら描きました。その時の「空気を読む」という意味は、相手に合わせるというより「相手の気質を理解した上で最善の行動が取れる」という意味です。

サブキャラである樹瀬夫妻と山田中夫妻との絡みも魅力の一つかと思います。旦那さんとカオルさんのキャラを考えているときには既にこの4人を出すことを想定していたのですか。

クール:これも適当です。友人キャラを誰か出そうとしたときに、適当に過去作から引っ張りました。

そのように、気楽な気持ちで描かれていた作品がきっかけで商業デビューに繋がったのは驚きです。ちなみに、ウェブで作品を投稿し続けることがデビューに繋がるというのは、少しでも頭にありましたか?

クール:いえ、自分は一生WEB漫画描いているんだろうなと思っていました。それまでペン入れをまったくしてなかったので、商業原稿の勝手もわからないし無理だろうみたいな気分でした。単行本化の話が来たときには、「そんなこともあるんだな」といった感じで、他人事みたいな気分でしたね。

既に三冊も単行本が発刊されていますが、最初から描いたものはすべて単行本にすると言われていたのでしょうか?

クール:特にそんな話はなかったですね。原稿がたまったら単行本にするという感じで。ペン入れしていないシャーペン線画だとどうしても、これ単行本にしちゃっていいのかな……と毎回気兼ねしながら描いています。

自分の周りの友達が描いたラブコメ作品を見ていると、「まだ照れが残っているな~」と感じるようなことが多いのですが、それこそ殴る壁が無くなるほどのラブコメシーンを描くためにはどうすれば良いのでしょうか?

クール:自分とまったく関係ない世界だと突き放した先に見えるものがあります。

商業初連載作『小森さんは断れない!』

なにはともあれ、『旦那が何を言っているかわからない件』の単行本がきっかけとなり、『小森さんは断れない!』をはじめ様々な雑誌で連載を持つことになったのだと思われます。商業で初のオリジナルの依頼として声がかかったときの自分の気持ち、また周りの反応を教えてください。

クール:いけるならいってみようという好奇心みたいな気持ちでしたね。親は「まぁやるだけやってみろ」みたいな感じで、友人は「ジャンプ!?ジャンプなの!?」と、そんなんわかってるだろということを聞いてきたときの顔が忘れられません。

「頼まれたら断れない」という小森さんのキャラはどのようにして生まれたのですか。

クール:当日の打ち合わせに行く途中の電車の中で思いつきで練ったものですね。容姿は自分の性癖に合わせて作りました。健康的な可愛さとエロさの両立を目指しています。

小森さんの友達で、陰と陽な関係なのにばっちり気の合うめぐみちゃんとまさ子ちゃんの存在がこの作品の面白さを一層引き出しているように感じます。3人の掛け合いを考えるのに苦労したりはしませんか。

クール:二人だったらきつかったですが三人ですと組み合わせで回せますね。「小森さん~」は読者に気軽に読んでほしいので、自分も最初は気軽にお話を考えていきました。キャラは描きながら固めていけばいいかなと、軽く設定を決めてから、あとで段々と掘り下げていくような感じです。

めぐみもまさ子も、ただ明るく振舞っているだけでないという暗い過去が見え隠れするエピソードが時折挟まれます。

クール:そういった部分は、キャラの悩みやどういった過程で友達になったのかをふと考えたとき、二人は昔どんなだったかを決めていきました。

「旦那~」を含め、商業では4コマ作品を掲載することが多いですよね。ストーリーものと四コマものを描く時の違いを教えてください。

クール:ストーリーと四コマの違いは、自分が意識するところだと間です。間のコマの使い勝手がストーリーだとやりやすくなると感じます。
制作にかかる時間は四コマのほうが早いですかね。6pくらいとはいえ、最速でネームから清書まで一日で終わります。

心がじんわりするような4コマのとき、背中側を描いて表情を隠すという演出をよく使われているように思われます。その他、こだわっているポイントを教えてください。

クール:背中をむけるのは、読む人によって感じ方が違ってくると思った部分に使っています。そして、こだわっているのは乳です。

「小森さん~」の初期の頃は、大分デフォルメが強めにかかった絵柄でしたが、何か意識して変えていた部分はあるのでしょうか。

クール:単純にツール慣れしてなかったのと、絵柄を変えてみようかなと少し洒落っ毛が出ていたんですね。不評だったので戻しました。でも一気に戻さず、ゆっくりと戻していきました。今でも結構いろいろと試してたりはしてします。

具体的にはどのようなところを?

クール:主に技術面ですね。ペン入れした漫画を描く機会がまったくなかったので、ペンの太さやトーンの張り方、ハイライトの入れ方をいろいろ試してみました。
単行本一巻を読んでくださった方は何となくわかってもらえると思うのですが、絵が安定してない時期がわりとありましたね。どうやっても最初から上手く描ける状態ではなかったので、そこは甘えつつ向上していきたいと考えています。

商業誌で連載を持つということは担当がついたと思いますが、担当とお話を作ることはいつも作るときとは違いますか。

クール:表現を抑えたり強くしたりと、補正をしてくださっていると感じます。オチが弱いとか危ないところは湯気で隠せとか、そういった指摘に助けられています。言うべきことをしっかり言ってくれているので、どの担当の方も信頼感を感じています。

「小森さん~」以外にも、現在多数の商業誌で連載をお持ちです。一気に仕事量を増やしていくことに、ためらいや怖れはなかったのでしょうか?

クール:とにかく、やるだけやってみるかという考えでお受けしていきました。もちろん機会を逸してしまったり、スケジュール的にできなくて見送らせていただいた仕事もありまして、そこを残念に思ったりもしています。週刊誌の仕事は一度やってみたかったですね。

それでは最後に、漫画家を目指す学生の方にメッセージを!

クール:自分にあったやり方を見つけるのも描きたいもの―この場合欲望でしょうか、それは向上心や理想も指すと思います―を見つけるのも、とりあえず描きながらがいいと思います。そんなこといっても一日中ずっとは描いていられないよ、という人もいるかと思いますが、そういうときに大切なのは描くことに理由をもたせることですね。あくまで描くためのきっかけとか補強といった部分ですが、私は漠然と描いているときよりも随分楽になりました。
自分の場合、その理由は単純に性欲みたいな感じですかね。「この女の子が動くとこみたい」と思ったらそこから始まったりしますし。欲求の持ち方って人それぞれですし、そういった本能的な部分に描く欲求が結びつけるのは大事なのかなと感じます。