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築コレ〜オツな若ぇの生け捕ってきやした95 三遊亭伊織

 今回は歌武蔵門下の二ツ目・三遊亭伊織さんと二子新地のバー、potluck(ポットラック)に来ました。

 前座のころから、ごはんをよく食べに来ていました。何を食べても美味しいんです。今はラフロイグ(アイリッシュウイスキー)をよく飲みます。5月からここで落語会をはじめます。

 中学高校と腎臓の病気で入院することが多かったのですが、同じ部屋のおじいさんがイヤホンで何かを聴いては笑っていて、尋ねたら落語だというので、父親に「何でもいいから落語のCD買ってきて」とお願いし、買ってきてもらったのは志ん朝師匠の「酢豆腐」と「鰻の幇間」でした。そこから志ん朝師匠にはまってしまって。農学部に進んだのは生物学が好きだったので、その勉強を続けたかったから。両親も教員なので、高校の生物の教員免許も持っています。

 寄席に通ってたときいつも出ていて面白かったのが師匠・歌武蔵でした。師匠から聞いてはいましたが、こんなに体力勝負だとは思っていなかった。このまえ二ツ目昇進の披露目で、毎日高座を務めるってこんなに疲れるのかって思うくらいクタクタになりました。体が資本ということに改めて気づかされ、実際丈夫になったと思います。

 二ツ目になると寄席に行かなくなるんです。あの毎日浴びるように落語を聴けていた環境は幸せだったなって思い返しています。寄席って高度なことをやっているんです。職人芸だと思います。その端っこに仲間入りさせてもらえて光栄です。円歌師匠も小三治師匠も、みんな前座修業をやったんだなって思うと頑張ろうって思います。二ツ目になって、噺を教わりに行けるのが楽しいです。あの噺をあの師匠に教わりたいなと考える、落語家になって一番楽しい瞬間ですよね。

 見習いの間に一度だけ遅刻したことがあります。うちの師匠は遅刻や寝坊は絶対に許さないと常々言っていて「今日でおしまいだ、クビになるんだ…」と思っていたら、まったく怒らないんです。「お前が唯一、(一番弟子の)歌太郎より優れていたところは遅刻しないところだったのにな…」って、心底がっかりしたような声で、たった一言だけ。怒られなかったことが逆にこたえました。それから絶対寝坊はしなかったです。

 将来の目標は、誰かにとっての落語の入口になること。こういったお店で会をはじめることが、その一歩になると思っています。


三遊亭伊織(さんゆうてい・いおり)
1987年5月1日生まれ。神奈川県大和市出身。玉川大学農学部卒業。2012年7月、三遊亭歌武蔵に入門。13年11月に「歌むい」で前座。16年11月二ツ目昇進して「伊織」。出囃子=吉兆廻し。血液型AB型。

●「四季織々 〜 三遊亭伊織 勉強会」を二子新地のpotluck(ポットラック) で定期的に開催中


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