【フィールドワーク】下水道の過去、そして自然とのつながりを知る
今年で3回目の開催となった”東京地下ラボ by 東京都下水道局”のテーマは「下水道の可能性を、想像力によって拡張する」というもの。
これまではZINEや動画とアウトプット方法が決まっていましたが、今年は参加している学生(地下ラボメンバー)が自由な手法で未来の下水道を表現します。
今回はワークショップに続き、フィールドワークの様子をお届けします!
『旧三河島汚水処分場喞筒場(ポンプじょう)施設』
最初に訪れたのは、荒川区にある『旧三河島汚水処分場喞筒場(ポンプじょう)施設』。
ここは大正11年に運用が開始された日本で初めての近代下水処理場で、平成11年に休止されるまで77年間稼働していました。重要文化財にも指定されており、歴史的価値はもちろん、建物の芸術的価値も高い場所なのです。
同じ敷地内には三河島水再生センターがあり、荒川区・台東区・文京区・豊島区などのたくさんの都民の生活を下水道を通じて支えています。
東京地下ラボメンバーは4チームに分かれて、見学ツアーをスタート!
案内スタッフの方が一緒に施設内をまわり、解説をしていただきました。
下水処理施設だったとは思えない美しい建物の数々に驚く地下ラボメンバー一同。
特に『旧三河島汚水処分場喞筒場(ポンプじょう)施設』のシンボル的存在でもあるポンプ室は、外観が赤いレンガ造り風の可愛らしい印象。中に入ってみると天井を支える鉄骨がアーチ状に連なった大きな空間が広がっていました。鉄骨の美しさに思わず見惚れてしまいます。
地下ラボメンバーの中には建築を学んでいる学生も何人かいるのですが、建物の構造に感動しまくりの様子!(ポンプ室の天井を支える鉄骨、階段の手すりに至るまでじっくりと観察&写真撮影をしていました。笑)
ちなみに、ポンプ室などの壁面に使われているレンガ風のタイルは、みなさんご存知の東京駅と同じものが使われているそうなんです!まさかこんな繋がりがあったとは驚きですよね。
地上での見学が終わると、いよいよ次はヘルメットをかぶって地下へ。
ここはかつて、下水が流れていた場所。今回のフィールドワークのお楽しみの一つでもありました。解説をしていただきながら、大人気作品『ハリー・ポッターと秘密の部屋』に登場するような空間にさらにテンションが上がります。
『旧三河島汚水処分場喞筒場(ポンプじょう)施設』はどなたでも見学可能!興味のある方はぜひ見学に行ってみてください。
施設の詳細は、下記URLをご覧ください。
https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/business/b4/guide/s-mikawa/index.html
『台場公園(第三台場)』
『旧三河島汚水処分場喞筒場(ポンプじょう)施設』を後にし、次の目的地である『台場公園(第三台場)』に到着。
お台場というと、お買い物やデートスポットのイメージがありますが、一体、下水道とどんな関係性があるのでしょうか…?
実は、お台場には東京湾を含め様々な生体が生息しています。
エイやサメ、時にはウミガメやイルカも見られるそう!様々な生体の住処になっているということは、東京湾の水質が綺麗であるということ、つまり下水道が機能している、ということなのです。
ここでは、プロ・ナチュラリストの佐々木洋さんに案内していただきながら、バードウォッチングと生態系を学ぶアクティビティ「サークル・オブ・ライフ」にチャレンジしました。
「サークル・オブ・ライフ」とは、その場に生息する植物や動物を探し出し、それらを用いて食物連鎖の図を書き出す、といったもの。
地下ラボメンバーは、3つのチームに分かれてアクティビティをスタート。
強い風が吹き付ける公園内を歩きながら、植物を観察したり、地面に何か落ちていないか見渡します。
少し歩いているだけで、上空ではハヤブサやユリカモメ、地上ではどんぐりやミミズのフン(初めて見ました)を発見!自然の豊かさを感じました。
第三台場はレインボーブリッジのすぐそばにあり、ここは江戸時代に外国船から国を守るために作られた海上砲台の跡地で、お台場という地名のルーツでもあります。
第三台場から、“鳥の島”と呼ばれている第六台場を観察!
第六台場はレインボーブリッジの近くにある無人島で、双眼鏡で眺めると、“鳥の島”と呼ばれているだけあり、たくさんの鳥たちが生息していました。鳥は種類によって、食べる魚の種類やサイズも異なります。鳥の種類が多いということは、捕食関係である魚の種類も多いということ。ここでも、生態系の豊かさから下水道が機能していることを再確認できるのです。
『東京都虹の下水道館』
佐々木さんと別れて、私たちが最後に向かったのは『東京都虹の下水道館』。
レインボーブリッジを通過する際にいつも見えていたこの近代的でかっこいい建物が、まさか下水道の施設だったとは…!ここは有明地区にある下水処理施設『有明水再生センター』に併設されている下水道がテーマの体験型施設なんです。
施設内にある、水の流れが見えるシースルーハウス「アースくんの家」では、リアルな家の水回りが再現されており、トイレや洗面台、お風呂から水がどのように下水道管へ流れているのか観察することができます。
ここでマンホールの蓋に関する豆知識を一つ。
地域限定の絵柄などが施されているデザインのマンホールの蓋をよく見かけることがありますが(マンホールカードが発行されていたりと話題ですよね)、マンホールの蓋はデザインだけじゃないんです!
実は、マンホールの下にある下水道管に何が流れているのかが分かります!雨水、汚水、はたまた合流なのかが分かるのです。
また、蓋をよく見ると、記号や数字が記載されているものがあります。これは下水道管の敷設年度、マンホールのエリアや識別番号で、記号と番号があればどこに設置されているマンホールなのかすぐに分かるそうです。
これは水中に存在する微生物を観察している様子。下水の汚れた水は、目では見えない小さな微生物たちの働きによって、綺麗な水へと生まれ変わっています。
他にも館内にあるレインボーシネマでは、水の大切さや下水道の役割が分かるショートムービーを上演。私たちは「水の国のウォルター」という作品を鑑賞しました。(内容が結構グッときます…!)大人でも楽しみながら下水道にまつわる知識がつく施設でした。入場無料の施設なので、機会があればぜひ行ってみてください!
施設の詳細は、下記URLをご覧ください。
https://www.nijinogesuidoukan.jp/
朝から充実のフィールドワークもこれにて終了。
下水道にまつわる施設をはじめ、自分たちで実際に訪れ、お話を聞いたことで、私たちの生活がいかに下水道によって支えられているのかを実感しました。地下ラボメンバーもフィールドワークを通して、下水道の歴史や仕組みなどの知識がさらに深まったようです。
ワークショップ、そして今回のフィールドワークで得た知識とインスピレーションを基に、いよいよそれぞれのアウトプットの作業がはじまります。
一体どんなアウトプットが出てくるのか、今からとても楽しみです!