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子どもの教育で今求められていること〜「学びの未来」イベントレポート〜

世の中が目まぐるしく変化し多様化していく中で、教育の分野はどのような変化が求められるのでしょうか。「学びの未来」にて新たな教育のアプローチに挑戦している方々に登壇いただき、子どもから大人まで40名ほどの方にご参加いただきました。

オープニングトーク

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オープニングトークでは、「受験も勉強も教えない、探求開発型の学び」について、探求学舎の宝槻さんにお話していただきます。

宝槻「非受験型の教育がこれからは重要になると考えていて、主に小学生を対象に探求学舎という塾を7〜8年やっています。探求学舎では、勉強を教えない代わりに、子どもの「やりたい」「知りたい」という探究心に火をつけることを約束しています。

塾業界はレッドオーシャンで価格競争も激しいですが、おかげさまで探求学舎は急成長しています。起業して15年くらい経ちますが、10年前20年前なら、この塾は成り立たなかったかもしれません。

国家が主体となる教育と個人が主体となる教育では、ゴールイメージが異なります。明治時代の教育は国家が主体となっていましたが、時代が進むにつれて個人のニーズが教育に取り込まれるようになっています。

ここであなたのお子さんの将来に期待することについて隣の方と話し合ってみてください」

次のような回答があがりました。

・自分の歩みたい道を歩んでほしい
・夢中になれるものを見つけてほしい
・幸せになる力を身につけてほしい
・わくわくドキドキを見つけてほしい
・他人を巻き込む力を身につけてほしい

「これまで講演会で1万人以上の方にこの質問をしてきました。好きなことを見つけてほしいということと、自立してほしいというのが多くの親御さんが思っていることです。

親が子どもに自立を望むのはどの時代でも不変ですが、「好きなことを見つけてほしい」という願いは現代特有のものです。昔は農民の子どもは農民になると決まっていましたから。

昭和の時代になってから会社に勤める人が過半数を超えるんですが、まだ安定や自立を達成するための仕事選びが主流でした。現代は自立や安定のためではなく、自分の喜びのために仕事をするという視点にシフトしつつあります。

国家はグローバルな世界で外国と戦い、自国に貢献してくれる人材を育てたいと考えています。そのため国家が提供する教育は、語学やコミュニケーション、ITスキルを高めるカリキュラムとなります。

しかし優秀な人材を育てる教育では、子どものやりたいことや好きなことを見つけるところまでカバーできません。どうすれば子どもたちが好きなことを見つけられるのか?そこをカバーする教育に挑戦しているのが、探求学舎です。

時代の変化に合わせて「能力開発」のカリキュラムを刷新していくことと合わせて、好きなことを見つける「興味開発」のための教育を学校や塾が提供できるようになればいいなと思っています。

それでは好きなことを見つけるにはどうすればいいのかブレストしてみてください」

次のような回答があがりました。

・知識を学ぶだけでなく体験を増やす
・興味を否定しないで寄り添う

「子どもの興味を否定しないで寄り添うことはとても大切ですが、難しくもあります。学校の先生は好きなことを好きなだけやっていればいいとは言えないし、親もなかなかできることではありません。

もちろん好きを極めて成功する人もいます。好きなことをさせてあげたいと思いながらも、受験や就職のことを考えるとそうもいかない。社会で生きていくための教育と好きなことを極める教育のバランスをとっていくのが今後の課題だと思います」

パネルトーク①

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パネルトークでは、「いま求められる学びの転換」というテーマで、ミライLABOの植村さん、Very50の中山さん、Libの荒川さん、宝槻さんにトークをしていただきました。

ミライLABOの植村さん
「ミライLABOキッズという保育園と、小学生起業家を育てるというコンセプトのコドモクリエイターズインクという小学生起業家を対象としたサードプレイスを運営しています」

Very50の中山さん
「Very50の大きな柱は、アジア新興国の問題解決と、問題解決を現地の社会起業家の支援を通じて行うために高校生の教育を行うことです。前職は社会科の教員をしていて今はVery50で働いているのですが、また教員に戻ろうと思っています。それは会社にも了承をえていて、元社会科の教員というのもあって、社会と学校をいかに繋ぐかをテーマに活動しています」

Lib荒川さん
「キャリアを通じて自己実現したいという方の支援を行っている株式会社Libで、人事やキャリアアドバイザーをしています。新卒でヘッドハンターとしてハイキャリアの方の転職支援をして、26歳から28歳まではフリーランスでいろいろな企業で人事として働いていました。Libに入ってからは新卒採用もしています」

奥澤「まずは、子どもたちに学生時代に学んで欲しいことについて。植村さん、ミライLABOにはどんな子どもたちがいるのでしょうか?」

植村「コドモクリエイターズインクは2019年の1月〜3月に、「キッズアントレタウンプロジェクト」を企画・運営しました。小学生向けの3ヶ月間の創業体験プロジェクトで、子どもたちが夢を語り創業を実現するというプロジェクトです。

最初に夢を発表して、社会や経済について学び、夢をブラッシュアップしていきます。そして最終日の3月31日に1日限りの夢の街というコンセプトで「キッズアントレタウン」という街を作ります。そしてその街に子どもたちが店舗を出店し売上をあげます。

何かを達成するでも、誰かを幸せにしたいという想いでもいいと思っています。子どもたちのために私たちができることは、環境を用意することです。

ミライLABOのミッションは「世界をもっとカラフルに」で、プロジェクトをサポートするメンターがいます。様々な価値観や個性を持った大人がいることで環境が醸成されます。大人には求められているのは、環境と寄り添う力ではないでしょうか。

それさえあれば子どもたちはやりたいことをやるんです。子どもたちはやりたいことをやるし、できなければ泣く。それって当たり前のことだと思うんです。そのあきらめ方を知ることが大人になることなんです。

やりたいという気持ちを持った子どもたちが大人になることで、世界をもっとカラフルにすることができると思っています。

AI時代に問われるのは、人生の豊かさとは何かということです。子どもがやりたいことをサポートする環境をつくることで、経済的な豊かさだけでなく自分の人生の豊かさを追求する大人が増えてくれれば嬉しいです

奥澤「実際にキッズアントレタウンプロジェクトに参加されたお子さんがいらっしゃるので、どんなことをしたのか教えてもらえますか?」

子ども(お姉さん)「私は美容院をやりました。ちょっと緊張したけどできました」

子ども(弟さん)「僕はパン屋さんをやりました。米粉パンをつくりました」

奥澤「実際に夢を叶えてどんな気持ちになった?」

子ども(弟さん)「楽しかった!」

植村「夢ピッチというのがあって、TEDみたいに100人くらいの前で子どもたちが発表をするんですよ」

奥澤「行政も起業家教育に力を入れてるけど、起業経験のない人が指導してるんです。対してキッズアントレタウンプロジェクトのメンターは実際に起業したことのある方ばかりだそうで、それも素晴らしいことだと思います。

ここからは中山さんに、学校と学校外での学びの違いについて伺いたいと思います」

中山「内容も違いますが、一番大きな違いは多様性を確保できるかどうかです。個別最適化ができるかどうかとも言えます。

私立の学校ではネットを導入して個別最適化ができる教育を実施しているところもありますが、公立の学校ではなかなか難しいというのが現状です。

教え子に起業したいと相談された時に、起業経験がない私ができるのは起業家の知り合いを紹介することぐらいでした。現場の先生にできることは限界があるので、生徒の多様な要望に対応するには学校外の人に頼る必要があります。

社会の教員でありながら社会のことをどれだけ知ってるんだろうか?という思いがあったので転職をしたんです」

奥澤「日本は学校を卒業したいきなり社会に出なければならないですよね。キャリア支援をしている荒川さんは学びと仕事の接続についてどうお考えですか?」

荒川「新卒採用を経験して感じたのは、越境を繋げる力が大事だということ。越境を知るに止まらずに繋ぐことができる人は、変化の激しい時代に活躍できるイメージが湧くんです。

技術が進歩し続ける社会では、何かと何かを掛け合わせたビジネスがどんどん生まれています。学生時代から自分とは異なる環境を体験しそれをつなげる体験をしている人もいます。

意思決定の深さと回数にも注目しています。自分で決めたと思っていても、実際は限られた選択肢から選んでいるにすぎないことも多いです。これからの社会では、越境を繋ぐ力と意思決定力が大切になると思います。学校で学べることは限られているので、学校外でそうした経験を積むことを意識するといいでしょうね」

宝槻「ファンクショナルなものとエモーショナルなものという切り分けがあります。機能的便益と情緒的便益です。これまでは便利なものが売れていたし価値があったけど、役に立たないけどエモーショナルなものもあります。映画や音楽など人の心を感動させるものです。

これからは便利なものはロボットが生み出して、エモーショナルなものは人間が生み出すという流れになっていくと思います。

人の心を動かしたり、わくわくさせるようなものをつくる人材を育てる教育が求められるでしょうね

ここで質問タイムです。

質問者「越境の具体例があれば聞かせてください」

荒川「学校のクラスでは同じ友達と一緒にいることが多いですが、普段話さない子を巻き込んで何かするのも越境です。アルバイトをすれば学校の友達とは全く違うバックグラウンドの人たちと関わることになるので、いろいろな友達を集めてお茶会をするのも越境ですね。

親の転勤で引っ越しをして越境を経験することになることもありますが、そこで違いをうまく乗りこなす能力が必要になってきます」

奥澤「中山さんはまさに越境ですよね」

中山「キャリア教育では『プランド・ハップンスタンス(計画された偶発性)』という理論があります。偶発的な越境や学びを計画的に行い、キャリアアップにつなげるという考え方です。

意図的に越境したり、異質なものに触れ続けること。そしてそれをやり抜く過程で学んでいくことが大切です。私が今日このイベントに参加したのもその一環です」

宝槻「越境と多様性は、これからの社会でキーワードになっていく言葉です。これまでとは違って、一つの組織で同じ仕事を続ける人は少なくなりますから。

社会で越境や多様性という考え方が求められるようになる。政治の中心にいる人たちがこうした価値観を受け入れることも大切だと思います」

パネルトーク②

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奥澤「政治が越境すべきだというのがTokyo Cross Pointの活動のベースにある考えですが、一番ハードルが高いのが教育問題なんです。ここからは、渋谷区議会議員の神薗さんと、東京都議会議員の斉藤さんに登壇いただきます」

神薗「区議会議員になる前は、ベネッセという教育の会社で働いていました。子どもたちが課題意識を持てる取り組みに興味を持っていたんですが、その取り組みがだいぶ社会に増えてきています。

これからチャレンジしたいと思っていることは、未就学児から小学校低学年の子どものための土台となる教育です。子どもたちの生活や教育で生じている問題を解決するには、地域の力がとても重要です。地域と行政をつなげる活動がしたいという思いで、区議会議員としてチャレンジしています」

斉藤「私は二人の子どもを保育園に預けることができなかったんです。全て自費だと本当にお金がかかるんですよ。待機児童をどうにかしたいという思いから、議員になりました。

教育に興味を持ったきっかけは、大学時代アメリカの大学に短期留学をした時でした。日本の大学生はとても優秀でペーパーテストではトップレベルの得点なんですが、話せないんですね。

英語が話せないし、自分の意見が言えない。他の外国の生徒は英語レベルは低くてもどんどん発言するんです。その経験もあって、日本の教育を変える必要があるんじゃないかと思うようになりました」

奥澤「行政にこそ、越境が必要だと思うことは多いです。例えば、外国語教育のためにネイティブスピーカーをよんで生きた英語の教育をしましょうと提案すると、教育委員会には断られてしまいます。

なぜかというと、仕事が増えてしまうからです。教員の方は必要だと思っても、「じゃあそのための手続きや業務を自分でやってくれ」と言われてしまう。先生は今の仕事で手一杯ですからできないです。

結果として、現場の先生はネイティブスピーカーの導入を求めていない、ということになってしまうんです」

神薗「渋谷区は現在コミュニティスクール(学校運営協議会制度)を推進しています。コミュニティスクールとは、学校と保護者や地域の皆さんがともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させる仕組みです。

地域の人が子どもにこんな教育を受けさせたいと発言することができる仕組みですが、まだ現状ではうまく機能していないので、今後どう機能させていくのかというのが課題です」

質問者「うまく機能しないのはなぜなんでしょう?」

神薗「運営委員が自分たちの役割を認識できていないことが大きな要因です。権限と予算がないので、やりたいことを実現できないというのもあります」

宝槻「政治と教育について言いたいことは2つ。ジョン・デューイという教育学者が、著書で『重力の中心を変える』と言ったんです。学校が中心になっているけど、本来は子どもが中心になるべきであるという意味です。

現状は学校を中心と考えている人が多くて、学校以外の活動を見下している人が多いんです。学校以外の活動の地位を上げていくのが大事だし、それは行政の役目です。

もう一つは、学校のパワーや権限を分散させることも大切です。何を強化してどの権限を分散させていくかを考えないといけません」

神薗「地域には魅力的な大人がたくさんいるので、もっと地域の人と連携することでいい教育ができるはずなんです。学校で教科学習をして、社会学習は地域に託すというやり方もありますよね」

宝槻「学校教育の予算10兆円はほぼ教員の給与に使われているんですが、その一部を民間企業に支払って学校以外の教育を導入するというアイデアもあります。教科学習は午前中のみで、午後は民間の教育プログラムを導入するのもいいんじゃないかと」

奥澤「今年、東京都の外郭団体で『東京学校支援機構』というのがつくられました。目的は外部人材を確保して教育の質を高めることと、教員の就業環境を改善することを両立させることとされています。

表向きの目的は支援なのですが、本来の目的は既存のシステムを壊すことなんです。外部の人材を投入して、先生がカバーできない部分を補っていこうと」

森澤「品川区では、学校の中にキッザニアのような施設があって、小学校5年生と中学2年生で職業体験ができるようになっています」

奥澤「企業がスポンサーとなって公立の学校にサービスを提供するのは、すごく画期的なことです。こうした取り組みが増えれば教育も変わるはずです」

宝槻「民と官の境なく、越境して意見交換したり、活動するのが今の時代に必要な活動です。議会室にこもっているのでなく活動して、さらに活動の輪を広げてこうした機会をどんどん増やすことが日本の未来をつくることにつながっていくんだと思います」

まとめ

学校になんでも入れ込むのではなく、子どもを中心において、必要な学びを学校内外で一緒につくっていくこと。
子どもに必要なことは、意思決定の回数や文化の越境経験であり、大人のすべきはその環境を整えること。そして政治は行政と民間を行き来することができる存在であるべきということ。Tokyo Cross Pointでは今後も政治と民間の間にある第三の選択肢を見つけていく取組を続けていきます。