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ジェイムズ・ボンド映画アクション進化論15『007/リビング・デイライツ』

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第15作『007/リビング・デイライツ』

 4代目ボンド、ティモシー・ダルトンが就任。ムーア=ボンドより遥かに若返ったが、すでに40歳代にはなっていて、ジョージ・レイゼンビーのような「肉弾」というよりは「エッジの効いたアクション」が向いているタイプだった。

 その1本目が『リビング・デイライツ』──残念ながら(彼自身の責任ではない理由から)2本しか登板できなかったダルトンだが、3作目も観たかったと思う反面、この作品と次回作『消されたライセンス』が見事にジェイムズ・ボンドの「A面」と「B面」を描いたことを考えると、シリーズ最大の“変革期”を跨いで活躍したのがダルトン=ボンドだったと断言できる。

 まずはプレタイトル。このシーンは輸送機からの「ジャンプ」ではじまり、崖からの二度目の「ジャンプ」で終わる。景気よく大ジャンプの「ダメ押し」をするのはブロスナン=ボンドの1作目でも繰り返された。さらには敵が乗ったトラックの「外」から「内」に入り、また「外」へと抜ける小気味よさにも注目したい。

輸送機から飛び出す:その1
落下する車から脱出

 中盤では「秘密兵器」満載のアストン・マーチンV8が登場。久々にボンドカーの「無双状態」を楽しませてくれる。もちろんそれが長く続かないのもお約束通り。ただし、そこから先はチェロケースを使った一捻りがある。残念ながら事前にQの「説明」はなく、コンバーチブルからハードトップへの改造シーンが見られるだけだが、“寒冷地”仕様のアストン・マーチンに仕込まれたアイディアはかなり手が込んでいた。

 クライマックスは生アヘンを満載した輸送機を巡る15分間。この作品もアクションの手数が多いが、ムーア=ボンド時代の終盤と決定的に違うのは、それらが有機的につながっていることだ。おそらくこれは過酷な撮影につきあう俳優自身の体力(若さ)とも無縁ではないだろう。そのためこの作品はアクションの「山場」が実にはっきりしている。

 そもそもプレタイトルは輸送機から飛び出すシーンにはじまり、敵が運転するトラックの外→内→外と展開した。そしてクライマックスの輸送機では、スケールをその十倍ぐらいに拡大した外→内→外のアクションが展開する。しかもその2つの中間に、ボンドカーの「無双状態」があるわけで、まるでストーリー以外にアクションシーンの“構成”を指示する専用シナリオが準備されているかのようだ。

輸送機から飛び出す:その2
落下する輸送機から脱出

 それ以外に注目したいアクションが、これまでありそうでなかった、ボンド自身による「狙撃」と「暗殺」だ。前者は『ロシアより愛をこめて』を彷彿ほうふつとさせながらもギリギリのところで本能的に射殺を回避し、後者はワルサーPPKの鮮やかな腕前でプーシキン将軍を撃つが、“裏”がある。いずれも物語を先に動かす重要なシーンになっている。

 ダルトン=ボンドのイメージを決定づけたのはこうした緊張感のあるシーンであり、そこで彼が見事に演じたのがジェイムズ・ボンドの「A面」だったのだ。

「B面」に関しては次項に譲る。ここまで少々ほめすぎている気もするので難点をいくつか挙げておこう。

 中盤でコスコフ将軍が奪還されるシーンで、“牛乳屋”に化けた殺し屋ネクロスと警備担当の情報部員が闘うシーンはちょっと長すぎたかもしれない。ネクロスの腕前を見せたかったのならもっと鮮やかに描くべきだった。

 またプーシキン暗殺の場から脱出する際のアクションの「未公開シーン」が結構あることが残念に感じる反面、結果的にカットした選択は正しかった(ちょっとコミカルなシーンすぎた)とも思う。

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