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マルチレベル淘汰

「利他学」より

 集団内への利己的な個体の侵入を防ぎ、利他的な集団の方が利己的な集団よりも全体としての適応度を上げることになれば、利他的行動が進化し得るとではないかという考え。進化生物学者デイヴィッド・スローン・ウィルソン提唱。

 閉鎖的な集団を考える。集団同士の交流はほぼなく、厳しい環境に置かれているとすると、お互いに助け合う集団では全体的に適応度が高いが、利己的な個体ばかりで、足を引っ張り合っている集団ではそれに比べて適応度が低くなる。

 このような場合には、集団のために何かするという行動が個体の生き残りの可能性を高める。個体間のばらつきよりも、集団間のばらつきの方が大きければ、集団が群淘汰の単位になるということである。

 ウィルソンはこのことを「善人のグループを一つの島に、悪人のグループをもう一つの島に残したらどうなるか」という思考実験によって表現した。善人たちは協力して島から脱出するか島を快適にするが、悪人たちは自滅するだろう、というのだ。

 いうまでもなく、互恵的利他行動を支える心の仕組みがあるはずである。「裏切り者を検出して排除する仕組み」「お返しを確実にする仕組み」「自らの評判を高める仕組み」などだ。お気づきの人も多いと思うが、この互恵的利他行動を支える心の仕組みは、経済活動・ビジネスにも通じているように思う。

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