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摂食障害関連

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ドーパミンと過食行動

中枢性ドーパミン作動性機構は,食べることや食べ物を選択することの動機付けに関与している.本レビューでは,過食行動におけるドーパミンの重要性を検討したヒトおよび動物のデータに焦点を当てる.過食症患者の脳脊髄液や血漿中のドーパミン代謝物を調べた初期の研究では,過食症の活動期にドーパミンの代謝が低下することが示唆された.神経性過食症(BN)やむちゃ食い障害(BED)におけるドーパミンのメカニズムに関する神経画像学的研究は限られているが,ヒトを対象とした遺伝学的研究では,ドーパミント

摂食障害における脳内報酬系の調節障害

全文は下で読めます(※英文) 食物摂取は、動機付けと強化のための脳内経路を介して行われる。摂食障害の患者が示す行動の一部には、これらの経路の調節障害が関与している可能性がある。摂食障害の動物モデルを用いた研究は、異常な食行動の原因や結果の背景となる潜在的な脳のメカニズムの詳細な研究に大きく貢献している。このレビューでは、過食症、神経性過食症、神経性食欲不振症の動物モデルで得られた報酬関連の脳機能障害の神経化学的証拠に焦点を当てている。その結果、報酬関連の脳領域におけるドーパ

神経性過食症における線条体ドーパミン:PETイメージングによる研究

全文は下で読めます(※英文です) 日本語訳 神経性過食症(BN)は中毒に類似していると特徴づけられているが,この特徴づけの実証的な裏付けは限られている.本研究では,PETイメージングを用いて,物質使用障害に見られるような脳ドーパミン(DA)の異常がBNに発生するかどうかを調べた.メチルフェニデート投与前後の[(11) C]ラクロプライドを用いたPET画像で,ドーパミン2型(D(2))受容体結合(BP(ND))と線条体DA放出(ΔBP(ND))を評価した.対照群と比較して,

摂食障害の生理学的要因(ドーパミンの感受性)

上のサイト情報の一部を紹介します. 人間の食欲に関係する遺伝子は多様だが、食欲が強まるか弱まるかは『脳内のドーパミン量』と深い相関関係があることが、fMRI(機能的核磁気共鳴画像撮影)やPET(陽電子放出断層撮影)を用いた実験によって確認されている。ドーパミンのもたらす快感刺激が強ければ食欲は抑制されるが、ドーパミン量が減少してその快感刺激が弱くなれば食欲が増進されるのであり、脳内のドーパミン量は食欲の調整機構の一部を担っている。 人間の食欲のメカニズムとして良く知られて

日本における摂食障害治療の課題

この記事は,摂食障害全国基幹センター長 安藤哲也氏が書かれた「摂食障害の現状」の中から,摂食障害医療の課題と,接触障害について抑えておくべき点を抜粋したものです.このような現状を多くの人に知ってもらいたいです. イ)わが国おける ED(Eating disorder:ED)の医療の課題  わが国における、EDの医療体制の問題点として患者の相談・治療・支援につながる窓口が明確でないこと、専門的治療に至る経路が確立していないこと、専門的治療や支援の受け皿が少ないことがあげられ

摂食障害の成り立ち

 この記事は,なんばながたクリニックのホームページにある,永田俊彦先生の解説をそのまま紹介するものです.私は,摂食障害の当事者として,自分の物語を切り売りすることに意味を感じません.私は,摂食障害の当事者や関係のない人に,この病気について可能な限り正確なことを知ってもらうことの方が意味があると思います.専門的な内容は,当事者にも無関係者にもとっつきにくいのかもしれませんが,だからこそ,こういった場で情報を目につくようにしたいのです. 摂食障害の成り立ち 永田 利彦※ はじ

摂食障害の進化心理学的理解の可能性

連続して摂食障害に関する投稿をしていますが,今日は,ヒトの形質/性質が進化的に獲得されたものであり,何らかの機能性があって存在するものであれば,摂食障害にも何らかの機能性があったのではないか?と思い,「進化心理学」「摂食障害」で検索した結果ヒットしたものを紹介します. この後紹介する仮説①の「生殖抑制説」ですが,自分を理解するのにはとても魅力的な仮説です.これは理性(ロジック)の次元でも成立しそうですし,現に私は反出生主義的です.これは,進化的に獲得された仮説のようなシステ