ブラオケ的ジャズ名曲名盤紹介 ~これを聴け~ #4 GRP All-Star Big Band
0.はじめに
先日、来たる7/24(日)に行われる定期演奏会に向けて、当楽団の合宿が行われた。
音楽談義に花を咲かせているところに顔を出すと、どうやらジャズの話をしていた。(吹奏楽団でもジャズについて話があがる…嬉しい限りである!)
その中で話のネタにされていたのが、今回ご紹介するGRP All-Star Big Bandである。
最強のメンバーが集う夢のようなビックバンド、その魅力を少しでもお伝え出来れば幸いである。
1.GRP All-Star Big Bandについて
このバンドは1980〜90年代にGRPレコードの創立記念事業から生まれた。GRP レコードの「GRP」とは、オーナーの Dave Grusin(デイブ・グルーシン)、Larry Rosen(ラリー・ローゼン)の頭文字から "Grusin-Rosen Productions "の略である。
そしてこのレーベルの主力アーティストを集めてレコーディングした夢のようなアルバムが今回紹介するCDだ。ビッグバンドの標準的な構成は第1回の前半部分にも書いたが、Sax.×5、Trp.×4、Trp.×4、Rhythm×4(Ds, B, Pf, Gt)であるが、
このバンドのTrbはなんと George Bohanon(ジョー ジ・ボハノン)ただ一人。
一人でバンドの中心部分を担うのはすごい。
ビッグバンドにおけるトロンボーンもバンドサウンドの要となるポジションである。トロンボーンがしっかりしていないとハーモニーやパワーは生まれてこない。それを一人でやってのける、まさにスーパープレイヤーである。
さすがオールスターというだけあって、錚々たるメンバーが名を連ねている。
ビブラフォンの大御所 Gary Burton(ゲイリー・バートン)、
Chick Corea(チック・コリア)バンドでも活躍した John Patitucci(ジョン・パティトゥッチ B)、Dave Weckl (デイブ・ウェックル Ds)、
他にも Bob Mintzer(ボブ・ミンツァー Sax.)、Randy Brecker(ランディー・ブレッカー Trp.)、 などレジェンド級の有名どころが名を連ねる。
Chick CoreaやMicheal Brecker(Sax.)は次に紹介するアルバムには参加していない。
別日程で重ね撮りをするレコーディングという方法もあったのだろうが、あえてそのような編集手法をとらず「メンバーを一堂に集めて一発で録音する」というポリシーにこだわった結果なのだろう。
最近流行りの「THE FIRST TAKE」に近いのかもしれない。
2.名盤紹介①『GRP All-Star Big Band』
ジャズといえばSax. Trp. Trb. とリズムセクション(ds:ドラム、b:ベース、pf:ピアノ、gt:ギター)と思っている人も多いだろうし、実際これらの楽器がよく登場する。
しかしこのバンドでは、5人中4人のサ ックス奏者が、持ち替えでFl.を担当している。またその中の二人はさらに Picc.や Bass Cl.を持ち替えて いる。
加えて、ソリストとして Fl.の Dave Valentin(デイブ・バレンティン)[10][12]や、Cl.の Eddie Daniels (エディ・ダニエルズ)[3][4]が参加している。Sax.の Bob Mintzer も bass cl でソロを魅せている[4]
Herbie Hancock(Pf.)のモードな曲にBass Cl.のオシャレなソロは非常にかっこいい。Eddie DanielsのCl.ソロも併せて、クラリネット奏者としては憧れである。
中でも MANTECA(マンテカ)[10]のFl.ソロはすごい。
この曲は Dizzy Gillespie(ディジー・ガレスピー Trp.) が書いたアフロ・キューバン・ジャズだ。
ノリノリの Dave Valentin のFl.ソロを聴いて欲しい。音の合間に聞こえる甲高い「フォー!」という声は Dave 本人の声だろう。合宿の音楽談義でもここが話題になっていた。吹奏楽ではまず有り得ない表現方法かもしれない。テンションが上がった時の表現方法に「声」があるのも、フルートの面白さの一つだと感じた瞬間である。
この曲でFl.に続く Trp.ソロは Arturo Sandoval(アルトゥーロ・サンドーバル)。ライブ盤ではラッパがヒマなときは ティンバレスを楽しそうに叩いていた。
また Donna Lee(ドナ・リー)[3]の picc ソロは、サックスの Nelson Rangell (ネルソン・ランジェル)が持ち替えで吹いている。
もはや、持ち替えは当たり前...。
熱いFl.ソロは名曲 Spain(スペイン)[12]でも聴くことができるが、この曲を書いた Chick Corea 本人が参加していないのは重ね重ね残念でならない。
このアルバムで個人的に好きなナンバーは"Airegin"[1]。
Sonny Rollins(Sax.)の原曲もクールなのだが、アレンジでよりかっこよくなっているとても良い例である。Bebopなソロもかっこいいが、このアレンジだとオールスターメンツによるバンドプレイも目立っている。こんなクールにキメてみたいものである。
3.名盤紹介②『Dave Grusin Presents GRP All-Star Big Band Live!』
このCDは1993年の日本公演のライブ盤。巷の噂では、オールスターメンバーが故にスケジュールがつかず、本国アメリカではライブが出来なかったとか。まさに夢のようなライブが日本で行われたというのはラッキーなことである。
このライブ盤で一番好きなナンバーはオープナーの"Oleo"[1]
イントロ~Cl. Vib. Trp.のテーマ~Cl. Vib.ソロ~バンドプレーのブリッジ~Trp. A.Saxソロ~Pf.ソロ~Sax.ソリ~バンドプレイ~エンディング
この流れがとにかく完璧である。ソリストだけでなくバンドプレイでも魅せることの出来るビッグバンドは本当にかっこいい。
A.SaxのEric Marienthalもゴリゴリにソロとソリを吹きこなしている。
そして"Cherokee"も忘れてはならない。
「Trp.吹きの皆さん、お待たせしました。これが答えだ!」と言わんばかりの怒涛のセクション、ソロプレイである。
サイドも含めて全員スーパーレベルのプレイヤーだからこそ織りなせる究極のパワープレイである。
最後は吹奏楽ファンにも馴染みの深い"Sing Sing Sing"[3]
吹奏楽で聴くのと違うように聴こえるかもしれないが、これが「アレンジ」の力である。
Eddie Daniels節の光るソロもかっこいい。
高校生の頃、筆者が吹奏楽でこの曲をトライする時に、ソロの勉強用にと顧問から借りたCDの中にこのCDが含まれていて、口をポカンとしながらこのソロを聴いたことを鮮明に思い出す。高校生の時に出会って以来、彼は私の理想とするクラリネットプレイヤーの一人である。
4.名盤紹介③『All Blues』
文字通りほぼすべての曲をブルースで埋めるという、これまたすごいアルバムだが、こちらには Michael Breckerも Chick Coreaも参加している。
2曲目では「キング・オブ・ブルース」でお馴染みのB・B・Kingも参加している。ボーカルとバンドが掛け合わさると最高にシブくてかっこいい。
ブルージーなビッグバンドを楽しみたい貴方にピッタリな一枚である。
5.おわりに
今回は夢のようなオールスタービッグバンド、GRP All-Star Big Bandについてご紹介した。
バンドプレイ良し、ソリ良し、ソロ良しといいことづくしである。
本当はメンバー一人一人について解説したいくらいメンバーが豪華なのだが、それはまたいずれどこかの機会で。
次は楽団内でどんなプレイヤーの話題が出るのだろうか。今から楽しみである。
(文:もっちー)
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