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ブラオケ的名曲名盤紹介〜マニアックな世界へようこそ…〜 #2 夕焼けのメロディ(防災無線)

 マニアックな名盤紹介として、今回は『夕焼けのメロディ』をご紹介したい。『夕焼けのメロディ』と聞いて、何がマニアックなの?と思うだろうが、実はこのアルバムは、毎夕に流れる防災無線を録音したものなのだ。しかも、実際に防災無線で使われているホーンスピーカーをスタジオに持ち込んで録音したというから、このアルバムを製作した人は相当な何らかの執念に駆られていたのだろうと思う。

 ところで、防災無線と言うと、小学生だったら『もう帰らなきゃ…』って思いつつ友達にサヨナラを言わなければならない時間帯なので、それなりの印象が残っていると推察されるが、夜もまだ気合いが入ってる大人にとっては、大抵の場合、聴き流してしまうであろう。夕日に照らされながら友達と別れて一人で家路につく寂しさ、この忘れかけていた遠く懐かしい記憶を、今一度呼び起こしてくれるのが、まさに防災無線の醍醐味なのだ。いやいや…と思われる方も多いと思われるので、試しにYouTubeにある下記防災無線を聴いて頂きたい。

埼玉県さいたま市(ふるさと):

東京都立川市(夕焼け小焼け):

神奈川県海老名市(家路) :

 …泣ける。。。

 令和になってから、富士通製のデジタル防災無線を使用している自治体では、俗にいう『富士通音源』に切り替わっているケースが増え始めている。上記URLのうち、神奈川県海老名市の家路は、まさに富士通音源である。優しいタッチの音色なので、是非聴き比べて頂きたい。近年では、富士通ゼネラルが神戸大との共同開発で、より音がクリアに聞こえる防災無線の技術(SIAFOLS)を開発しており、一般的に聞き取りにくいとされている音に、聞き取りやすく変換する『強調アルゴリズム』を自動適用することで、豪雨などでも聞き取れるような放送を実現しようとしている。今後、このような技術が搭載されていけば、富士通音源もよりクリアに聞こえてくるに違いない。

 さて、本アルバムは2014年にSCMから出版されたものであり、下記楽曲が収録されている。

1. サイレン
2. 夕焼け小焼け
3. 春の小川
4. 故郷
5. 春よ来い
6. 遠き山に日は落ちて
7. 浜辺の歌
8. あの町この町
9. われは海の子
10. 七つの子
11. もみじ
12. 埴生の宿
13. 峠の我が家
14. メヌエット(アルルの女 第二組曲より)
15. アヴェ・マリア
16. 野ばら
17. 雪
18. グリーンスリーブス
19. 蛍の光
20. 夕焼け小焼け(アナウンス入りver.)

 こんな曲が防災無線に使われているのか!って思われることもあるであろう。深いのだ。故に、育ってきた地域によって、耳に染みついている防災無線の楽曲は異なっており、防災無線としての採用頻度が少ない楽曲が使われている地域で育った人は、大人になってから自慢することも出来る。防災無線の現地録音を公開している某YouTuberのチャンネル登録者数が2022年9月時点で約1.4万人いることを考えると、その自慢話は恐らく10000人に1人くらいは感動してくれるだろう。まだまだマニアックな範疇から脱却出来ていない防災無線ではあるが、国民の日常生活に必要不可欠な存在だということは言うまでもない。しかも、毎夕音楽が流れてきて多くの人に聴き流されることを考えると、みんなの気付かないところで実は国民の日常生活に色を添えている存在でもあり、社会環境に上手く調和することに成功した類稀な演出音楽とも言えるだろう。

 残念ながら、現地録音した臨場感ある防災無線のアルバムは未だ存在しない。是非とも現地録音している方々や、音源を作成している会社にはCD化をご検討頂きたい。また、これを機に是非防災無線に耳を傾けて頂けたら幸いである。

(文:マエストロ)

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