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SDSノート_22「クリエイションに伴走する言葉」

こんにちは。ソーシャルダイブ・スタディーズ(以下 SDS)、コーディネーターの工藤大貴です。今回は9/25最終回直前となる第22回レクチャーのレポートです。前回までのSDSについては下記をご覧ください▼
今回は本芸術祭の総合ディレクターでもある小池一子さんにお話しをいただきました。

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▲小池一子さん

それでは早速、参加したSDSメンバーにその様子をレポートしてもらいます。それではぜひご覧ください▼


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SDSメンバーの宮本明日香です。今回は小池一子さんによるレクチャーでした。私は広告業界で働いていることもあり、今後の生き方を考える上で“自らの可能性”を広げる有意義な時間となりました。

小池さんは広告業界からキャリアをスタートし、アート業界へ。佐賀町エキジビット・スペースの主宰を経て、現在の東京ビエンナーレ2020/2021までの話がありました。

ご自身の興味に合わせて方向転換する、ポジションを創造していくお話が印象的でした。「ない道をつくる上での苦労」もあったと思いますが、話すトーンは澄んでいて、素直にシンプルにモノゴトをとらえた結果・・という風に聞こえました。

また小池さんの歩んだ道そのものを自身でクリエイティブディレクションしているのでは?感じました。今回のレクチャーには印象的な言葉&ビジュアルがありました。

「イノベーティブ・革新的」

NYのイノベーティブクローズ展を京都で「現代衣服の源流」展として開催することに携わったことのお話がありました。そこには“面白い”を共有できる仲間がいたこと、それまで日本は海外のコピーばかりという評価にあった中でここを起点に変化したということでした。ここが日本のファッションやデザインの展覧会がはじまりであることも知りました。

今でこそ、ファッションやデザインはアートと並び、展覧会がたくさんあると思っていましたが、たった40年程度なのにこんなに充実していることに驚きました。その先も西武ミュージアムで小池さんは継続的にそれに尽力されていることも知りました。

「日常はそのまま・・ある」

その後、小池さんは本格的に美術の世界へ向かうため、サバティカルでハワイにいった時に美術館で出会ったキュレーターさんの過ごし方での気づきが印象的でした。どっぷりアートの世界に触れながらも自然や日常はそのままある・・・という、「どちらもある」という感覚は、その後の小池さんに影響を与えているということでした。

変わる・変わらないものもある、それもこれも事実、、という小池さんの俯瞰し、客観的で本質をとらえた視点が垣間見れ、それが豊かさとして様々な人達に影響をあたえているのだということも感じました。

こういう起点となるようなエピソードを本人からお聞きできることは印象に深く残り、その後、自らの考え方に新しい型が追加されていくような気がしています。この先に「無印良品」のはじまりへ話はつながっていきました。

上記のような感覚を頼りにモノの本質をシンプルにただ示していくことがうまくいっているのだなと思いました。

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「オルタナティブ・インディペンデント」

その後、話は佐賀町エキジビット・スペースへ移っていきました。あえてのエリア・東京の東側、ポテンシャルある場所・食糧ビル、、でスペースをつくることでギャラリーでもなく、美術館でもない、新しいポジションを目指したこと。その影響は“マグリット”(!)にもあることも知りました。

記憶のある古い場所の唯一性×作品のコラボレーションは新鮮で作家の創作意欲を刺激、さらに空間の自由度が高いこともあり、作品が進化(展覧会中に変化)していくことなどが実際に起きたそうです。

現在、ギャラリーはスケールダウンして3331に移り、小池さんが意図せず、作家が率先して当時の作品と新作を並べる展示が開催されているようです。

「見なれぬ景色へ」 

東京ビエンナーレ2020/2021のキャッチコピーの話に。キャッチコピーをつくる時はアピールしたいことをとっつきやすい言葉で書く、そこに“えっ”と思う驚きをつくるといい。そのために言葉の使い方、表現の詳細にこだわっている。また数をつくることで質につながっていくので、20ぐらいはつくってみたらいいという実践的なお話もありました。

佐賀町の時は内部空間への興味が高かったが、ビエンナーレの湯島聖堂と内藤さんの作品などは周辺環境、例えば光の変化などへも興味が広がっている。また東側エリアには寺社などの祭事場が多いこともあり、このコピーも含めたとお話がありました。その後、コロナによる1年延期、現在の状況も経てこのコピーは結果的にインパクトが増しているとのお話もでました。

最後に私たちが現在取り組んでいるプロジェクトをタイトルと概要を見ていただき、コメントを頂く時間がありました。今、選んでいる言葉と企画していることが解説されたような観点で魅力があるか?と即、実践的に見ていただける貴重な機会になりました。

今回の小池さんのレクチャーは、見なれぬ景色をつくるには“見なれた景色をよくみること、感じること、ありのままにとらえること“が、はじまりで大切なことなのだと言われているように感じました。そこから異なる点をみつけ、ジャンプできたら私たちの考えているマイプロジェクトもよくなっていくのかもしれません。

小池さん、ありがとうございました。

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SDSメンバーの佐藤久美です。細く長く国内外でモノを作ったり、自己理解・他者理解を深めるセッションをしたりしています。今回アートプロジェクトの鑑賞、企画に関心があってsdsに参加しています。

トークセッションには著書『美術/中間子 小池一子の現場』を読んでから参加しました。それでもなお、1970、80、90年代と活躍のストーリーについていくのが精一杯の、濃密なセッションでした。私の好きなジャン・コクトーのデザインを取り入れた衣服など、カラースライドも見ごたえがありました。

「1970年代、日本のデザインはコピーキャットといわれていた。それが嫌だった。」「既存の場所ではなく、オルタナティブ・スペースだからこそ、若い作家が全力を注ぐ作品が出てくる」。各時代のアグレッシブな取り組みについて、そうとは感じさせない穏やかな口調で語られます。

そんな小池さんによって東京ビエンナーレのテーマ「見なれぬ景色へ」は、2019年に作られました。「コロナを予言するつもりはなかったけど、ぞっとした。」日本より先にコロナ禍が広がったヨーロッパの映像をみて、先にやられてしまったと思ったそうです。

テーマについて、中村政人ディレクターの純粋・切実・逸脱の他にも、とっつきやすい言葉でアピールできないかな、とコピーに取り組みました。「コピーはえっ?!ていうのがミソなのよね。」

一つのコピーに最低20本は書くそうです。「慣れぬ」は漢字にするか、ひらがなにするか。「景色」にするか、「風景」にするか。風景だと自然、景色だとビルが林立していくイメージ。街中でアートが何事かをおこすというコンセプトから「景色」に決まりました。

こうして、東京ビエンナーレに、歴史の中で語られ続けるコピーが残されました。小池さんの次の伝説に、今からわくわくしています。

第22回レクチャーの記録はここまでとなります。次回は最終回。9月25日にSDSを開講いたします。またこちらのノートにてお会いしましょう。

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