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2人の間を通り過ぎていった、フリースタイルダンジョン

色々あったんだろうけど、フリースタイルダンジョンが終わった。ラップバトルのTV番組だ。

夫は、くるりやミスチルなどをよく聴き(でもファンってほどでもないと思う)、HIPHOPはぜんぜん聴かないのに、この番組だけは毎週録画して観ていた。4年は観たと思う。

「みんな頭が良くてすごいなぁ」

彼は、漫才を見てもこれと同じ事を言う。あまり笑わないのに尊敬をする。楽しむというより感心してるに近い。

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私は、あいみょんも研ナオコもハンバートハンバートも聴くけど、Creepy Nutsも聴く。HIPHOPファンではないが、歌詞が好きならなんでも聴く。

フリースタイルダンジョンの事は、即興短歌を聞く感じで楽しんでいた。(あ、短歌も好きなんです)

だからなんだろう。熱くなって楽しんでいたわけじゃないけど、夫婦それぞれの理由で「カッコいいなぁ」と思って観ていた番組だったのだ。

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2人いっしょに観るテレビ番組なんて、これがなくなったらもう、ない。

夫が毎晩チェックしているスポーツニュースなんて私は1秒も頭に入ってないし、私はそもそもテレビを見ない。なんかいっつも生き急いでいるので、テレビの前に30分以上ジッとしていられない。

だからフリースタイルダンジョンの時間は、2人の好奇心がちょっとだけ合わさる時間だった。

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「フリースタイルダンジョン終わっちゃうんでしょ?」って私が先に言った。

「そうなんだよねぇ。いろいろあったんだろうねぇ」と夫に返された。

私達がだらだらと持ってた共通の楽しみが、またひとつ思い出の物になっていく。そうやって流れ去った、ぼんやりとしたお楽しみがいくつあったんだろう。

白い鯛焼き。1回だけ行ったミスチルのコンサート。三茶のはなまるうどん。一瞬だけ私も応援したワールドカップ。

思い出に変わっていった、ぼんやりとしたお楽しみ達の事、少ししか思い出せない。

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私、これからは、こういう物をたくさん集めて生きていきたいと思う。何をどれだけ頑張ったかとか、どれだけ努力したかとかじゃなくて。

こうやって家の中を通り過ぎていく、一瞬だけの共通点を、忘れながら覚えていたい。

「すごいねぇ」とか「美味しいねぇ」とか。

そういう物が、自分の最期の1日を、きちんと幸せにしてくれると思ってる。



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