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曇り空に気分も憂鬱になってしまった

今日は昨日とは一転して、寒い一日だった。朝方、買い物に出かけただけで、今日は一日、引きこもることにした。

しかしその日の天気というのは本当に人間にとって大切だ。昨日は家にいても、窓から吹き込む風がすがすがしく、縮みがちな心の中にあたたかい空気をいっぱい吹き込んでくれるようだった。

本日は、寒く、曇りの一日だ。曇天が嫌いというわけでもないが、自由に出歩くべきではないというような条件のもとでは、窓から見えるこの灰色が文字通り陰鬱さの念押しをしてくる。

こんな日は、何かをしなければならないという気持ちも抑えて、ぼんやりするにこしたことはない。ラジオでも聞きながら、昼寝をすればいい。

もう10年近く、月に一度の読書会を続けてきた。大学の恩師が奥さんを失くされた。亡くなった奥さんにも世話になっていて、なんとなく、旦那は頼んだよと肩を押されたような気がした。その後、年度は異なるものの、同じゼミで、同じ恩師に習ったことのある社会人が数名集まって哲学、宗教、歴史のような、そんなことでもなければ、社会人になってから絶対読まないような厄介な本を選んで読み続けてきた。

数年前に、突然、先生が逝去された後も、何を相談したわけでもないのだが、全員一致で続けてきた。会社勤めをしている人、役人、大学の教員やら様々だ。学生の頃からの友人も多く、同じように、年を取ってきた。その意味でなかなか得難い集まりになっている。

ところが今回のコロナウィルス騒動のあと、それぞれ、一定の社会的責任を感じるせいか、いったん、中断という決定をした。

随分長くやってきたわけで、そもそもの趣旨も変わってきているので、いったんは辞めるというのも一つの判断である。今後の展開によっては、そういうことになるかもしれない。

でも一度、オンライン読書会というものをやってみたかった。


僕たちの世代は、インターネットや携帯電話の無かった時代に既に大人だった。その意味で、福沢諭吉の「一身にしてニ生を経る」というのが少々あてはまっている。デジタル化の速度が速かったせいでもある。この世代は、バブル前後を知っているという意味でも、二生を経ている。

https://1000ya.isis.ne.jp/0412.html

今回起こっていることは、そんなチマチマした二生をはるかに上回る規模の変化なのかもしれないと思っている。

仕事のことだけでてんてこ舞いしていていいのだろうか。

自分のプライベートの生活や、心の問題をもっと真剣に考えなければならないのじゃないだろうか。

Zoomのインヴィテーションに反応して、参加できる技術環境のある人で、その気になった人だけが参加してきた。

技術環境は整っていても、そこまでして読書会を維持しても仕方がないと思う人もいるはずだ。そういう人は面と向かってそんなことはいわず、ただ参加してこない。それはそれで一つの見識だ。

初めのうちは、画面の共有だとか、皆の顔を見るのにどうするかという、インフラの使い方特集だった。実際、こういうコミュニケーションツールは、マニュアルをじっくり読むというよりは、とにかく使ってみて、わからない時にマニュアルを読むに限る。

音が出ない、スクリーンが共有できないなどとワイワイやってるうちに、なんとなく、さまになってきた。

特に大学の教員をしている友人は、まさにZoomやWebexなどを使って、学生に対する授業を提供しなければならないという状態にあり、一番熱心に使い方を練習していた。

そのあとの会話の中で、気になったのは、新入生たちがPCや自宅のWiFi環境が整っていないため、オンライン講義を享受することができないものも多いのだという話だった。

大学がオンライン講義を提供するというのであれば、場合によっては授業料の中からそのPCの貸出料やWiFi代金を負担する必要があることになるのだ。それが個別大学の予算内で賄えるのかどうか。

しかしそれ以前に、親がかりではない学生たちが生計を立てるためにあてにしていた外食店などでのアルバイトが総崩れ状態なことがさらにそういった新入生たちを窮地に追い込んでいるという。

インターネットで、政府発表や国内マスコミのフィルターを経由せず、直接海外の施策との比較が可能になるこの時代、この国が税金を使って何をしなければならないかということが、初めて政治的問題となってきているのだろう。

コロナ問題が一定の収束を見せた後に、本当の意味での社会構造の変化に僕たちは直面しなければならない。そしてそれがどんな形になるのかは、まだ、誰にもはっきりとはわからない。

今日は、残念ながら、ほんわかとした気持ちにはなれなかった。曇り空のせいばかりではない。 

マデリン・ペルーの「哀しみのダンス」を聴きたくなった。  



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