見出し画像

令和元年の台風19号で被災した日野橋の復旧

1.はじめに
 日野橋は、一般都道八王子国立線(第256号)甲州街道が多摩川を渡河する橋梁です。
 大正15年に竣工したこの橋は、橋の長さ(橋長)が367mで、鋼製の桁を20個横に並べた形状になっています(図-1)。2つの柱に桁が1つだけ乗っている橋を単純桁橋と呼びますが、日野橋の正式な橋梁形式は「鋼20径間単純鈑桁(ばんけた)橋」といいます。

画像11

 日野橋は建設されてから90年以上が経過し、数々の補修・補強工事を行っていましたが、老朽化が進行していること、歩道と車道の境に防護柵がなく歩道の幅も狭いことから、架け替えを計画しており、平成26年度より調査、設計を実施していました。
 そのようななか、令和元年10月12日に発生した台風19号では多摩川が増水し、川底が洗掘されて桁を支えている柱(図-1のP5橋脚※1)が70cm程度沈下してしまいました(写真-1、2、3)。

※1 桁を支える柱を橋脚といいます。起点側から番号を付けて管理しています。沈下したのは起点(立川市側)より5番目の橋脚なので、P5橋脚と呼びます。(Pはpier(橋脚)の頭文字)。橋の両端には橋台(abutment)と呼ばれる構造物を設置し、頭文字Aに番号をつけてA1橋台、A2橋台と呼びます。

画像14

画像15

 これに伴いP4-P6橋脚間の桁が沈み、路面に段差が生じたため、全面通行止めとしました。しかし、交通量の多い甲州街道を長期間通行止めにすると都民生活に大きな支障が生じること、第一次緊急輸送道路に指定されていることから、一日も早く交通を開放させる必要がありました。また、被災箇所が限定的であったことや、計画していた架け替え事業は、調査、設計段階であったことから、現橋を応急復旧することとしました。

画像12

2.現橋復旧計画
 河川内での作業は、非出水期間(11月から翌5月)に限定されています。よって、翌年の令和2年5月までの1非出水期間内で工事を完了し、早期に通行止めを解除することができる計画を立案する必要がありました。
 複数の案を比較検討した結果、P5橋脚を撤去し、P4-P6間を1径間にて新たに製作した応急復旧桁を架設する案を選定しました(図-2)。
 また、P5橋脚は川底に設置されているケーソン基礎※2を残置し、柱の部分のみを撤去することで施工期間の短縮を図ることとしました。

※2 ケーソン基礎とは、箱型の構造物を構造物自体の重さなどを利用して所定の深さまで沈めて、箱の中を掘ってくり抜いて、空っぽとなったところにコンクリートを流し込み基礎をつくる工法です。

画像13

 P4-P6間の既設橋の2つ分の単純桁橋を1つの単純桁に架け替え復旧する計画であるため、既設橋脚への影響を軽減するとともに、限られた期間の中で確実に工事完了させることのできる桁形式を採用しました。
 また、材料や資材の調達、工場での製作、施工の各期間を可能な限り短縮できるように以下の工夫をしました。
 ・桁も床も鋼製の鋼床版鈑桁と呼ばれる軽量な形式を採用して既設橋脚へ
  の影響軽減、現場作業の短縮
 ・鉄(鋼板)の材質を統一して材料調達期間を短縮
 ・即時手配可能な鋼板を採用
 ・現場作業を極力抑えるために、輸送可能な大きさの部材を工場で製作し
  て現場へと輸送
 ・大型クレーンを使用して一括架設する計画として施工日数を短縮

3.施工
 作業現場周辺は、出水により澪筋※3となり、近づくことができないため、澪筋を変更させる瀬替え工事を実施しました(写真-4)。
 瀬替え工事には、通常使用する重機よりも大きい重機(写真-5、6)を使用し施工能率を上げて工期短縮を図りました。

※3 川の深い部分で水が流れるところです。

画像13

画像14

画像11

 瀬替え工事以外でも、大型の重機を使用して、被災した桁の撤去、橋脚の撤去、新しい桁の一括架設を行い工期短縮を図りました(写真-7、8)。

画像16

画像17

4.交通開放
 応急復旧は、関係機関のご協力もあり、被災から約7ヵ月間で無事完了し、交通開放することができました(写真-9)。

画像16